公式RTのススメ

2011/3/11は、日本にとって忘れられない日になりました。
私自身、かなり大きな揺れにビックリしつつも、どこかで「まあ、大丈夫だろう」と思っていましたが、その後、徐々にわかることの深刻さ。

もっとも、それについては落ち着いてから、また改めて書きます。

今回、被災している人達の多くが、いざという時には無線LAN経由でインターネットにつながるスマートフォン。また、通常の携帯電話よりも利用者が少なく、電波の奪い合いが少ないWiMAXやイーモバイルが、かなり便利だと実感されているかも知れません(私も、実際、iPhone+WiMAXで、ずっとインターネットにつながっていました)。

 さらに、そのつなぐ先として、電子メールのような個:個のメディアでなく、Twitter(やFacebook)などが有用だということも、実感されたんじゃないかと思います。

 今日、1日を通して、私自身も電車の運行情報や、避難場所、友人の安否など、実に多くの、これまでのメディアで得られない情報をTwitterで得てきました。

 この便利なTwitterが、震源地近くの方々にとっても、どれだけ重要な情報源かは、簡単に想像できるでしょう。

 ただし、この便利なTwitterも、使い方を間違えると、誤情報を流布したり、重要な情報を伝えにくくしたりすることになる可能性があります。

 平常時なら、好みの問題として残してもいいかな、と思っていた非公式RTというのが、ソレです。

 私もよくやるので、自分を例にあげると、こういうのが非公式RTです。
 1つのつぶやきに、まず自分のコメントが入っていて、その後に「RT」や「QT」の文字がつづき、その後に元のつぶやきがつづく形。場合によっては、途中にいくつも「@〜〜」というアカウント名が入る形になります。


上の図を見てもらうと、元のつぶやきの発信をしたのは @ebimayu さんなのに、彼女のアイコンでなく、私のアイコンが表示されているのがわかります。

この非公式RTをすると何が問題なのか?

1.情報の発信源が特定しづらくなる
 非公式RTでは、元の発言を手動でいじって編集することになります。人によっては、そもそもの発信元の方の名前を削ってRTしてしまう場合もあります。
 例えば、被害地の深刻な情報が流れてきたとします。
 ただ、残念ながら、こういう深刻な時でも、デマ情報などもあるので、慎重な人は、とりあえず、情報を発信した人が、本物かの確認をします。ここで、Tweetをした人のアイコンをクリックしたら、ぜんぜん被害が少ないところの人だった、となると、急にその情報の信憑性が疑わしくなってきます。
 例えば、「専門医」という方の医学情報のツイートがあっても、そのつぶやきが医者でもなんでもない、学生さんやプログラマーの方から伝わってきたら、それは本当の情報かどうか疑わしくなって、広めにくくなってきています。
 公式RTをして、情報の発信元のアイコンが表示されるようにすれば、情報に信頼性が生まれます。

2.情報の新鮮さがわかる
 例えば、「まもなく大きな余震が来る」というツイートをRTしようとしたとします。
 ここで非公式RTをしてしまうと、元情報が発信された情報がわからず、例えばとっくに1時間くらい前に終わった余震の予告を、3時間後くらいにRTで広めてしまう可能性があります。
 つぶやきの時制をはっきりさせるためにも公式RTをしましょう。

3.誤報を防ぐ
 例えば、重大な事件をつぶやいて、それがどんどんRTで広がっていったとします。
 ただ、ある程度、広がったところで、それは誤報で、訂正が必要になったとします。
 公式RTであれば、元の発言を削除すれば、一気にRTされた情報も消えますが、非公式だと、誤報だということが伝わらないまま、どんどん誤情報が拡散してしまいます。


4.情報のかさを減らして、大事な情報を見やすくする
画面に表示できる情報の量は限られています。
 公式RTは、あなたの目に既に触れている情報であれば、別の方がRTしても、その情報が重複表示されません(しばらく時間が経った後だと表示されることもあるようですが)。
 これが非公式RTで、「@自分のID」が入っていると、RTされた回だけ表示されてしまいます。

1画面に表示できる情報が5件までで、A、B、Cという3つの重要な情報が流れてきたとしましょう。
すると、皆が公式RTを使っていれば、
E
D
C
B
A
といった5つのつぶやきが見えるはずが、

非公式RTをする人が多いと:
&$# RT 〜〜 RT: A
〜〜 RT: A
B
RT: A

のようになってしまい、情報が見えにくくなってしまいます。

 これ以外にも公式RTにはいいことがたくさんあります。

 何か凄い情報を見つけたら、そこに、何かヒトコト、自分なりのコメントを加えてつぶやきたい、気持ちはわかりますが、情報を必要以上に増やしてしまうことは、情報が非常に重要な意味を持つ被害者の方々にとってもよくありません。
 ここはググっと我を抑えて、公式RTをしましょう!

 やりかたは簡単です。

 公式RTについての、オフィシャル情報は


広げたい情報の下にある「Retweet」という文字をクリックすれば、それで終了です。
自分なりのヒトコトは付け加えられませんが、140文字から1文字も削ることなく、元のつぶやき、そのままの内容を伝播できます。

パソコンのWebブラウザを使っている場合、下の図のように、左上に緑の三角マーク、上段にグレーに矢印2つで by @あなたのアカウント 
と表示されれば、公式RT成功です!


公式RTについての、Twitter社オフィシャル情報はこちらにあります:
Twitter社による公式RTの説明


なお、Webブラウザ以外でTwitterをしている人、つまり、パソコンやスマートフォンのアプリ(アプリケーション)を使っている場合や、従来型携帯電話からTwitterを使っている場合は、設定によって自分では公式RTをしているつもりでも、非公式RTになっていることがあります。

使用しているTwitterクライアント(Twitterアプリ、Twitterソフト)ごとの公式RTの方法は、大勢の方の協力を得て、ITメディアさんのこちらの記事にまとめましたので、ぜひ、そちらを参考に、自分の使っているソフトの設定やRTのやり方を、もう1度、再点検してください。

特にHootsuiteを使っている場合は、非公式RTになりやすいですので注意が必要です!

ITmedia: [News]公式RTのやり方 Twitterクライアント別まとめ

Twitter for iPhone、Twitter for Android、Twitter for Macなどは標準で公式RTを使う仕様になっています。

ちなみに、Twitterクライアントによっては、古い情報までさかのぼって情報を表示してしまうモノがありますが、それも注意です。

元のつぶやきが発された時間を確認せずにRTをしてしまうと、
例えば、既に重大局面が解決済みの場所に、人を送ってしまったりすることにもなりません。

例えば
1時に、〜〜で困っている人がいて
A:「〜〜に困っている人がいます。助けてあげましょう」
というつぶやきがあったとします。
2時に、その人は救済されました。
しかし、4時に、元情報の時間に気がつかずに、
つぶやきをRTしてしまうと、誰もいない場所に救いの手を向かわせてしまうことになります。

最後になりますが、まだしばらく余震もつづきそうですし大変そうです
(3月11日の夜のニュースでは1週間くらいは、かなり大きな余震がつづくだろうし、もうちょっと早い段階のニュースでも、今後1ヶ月くらいは余震がつづくだろうと聞きました)。

ネット上だけでなく、リアルでも情報を共有して、希望を持って、思いやって、この大変な事態を乗り切りましょう!

3/12の正午頃:公式RTが大事な理由の4番目他、いくつか情報を追加/更新しました。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2011年03月12日 | Permalink

地獄からの6枚

血の池地獄


山地獄

気がつけば2月28日。

このまま行くと、今月はブログの更新がないまま1ヶ月が終わってしまう。

書きたいことは山ほどあるし、下書きのまま眠っている記事もいくつかあるが、貯まっている仕事を優先させると、上の懸念が現実になってしまうので、せめてそうならないように写真中心の短めな記事を投稿したい。

私が大事にしていることの1つに「人とは違った視点」がある。


世の中の見飽きたこと、聞き飽きたこと、いいつくされたことも、ちょっと違った視点を向けるだけでぜんぜん違ったものに変わってくる。

今回、別府の地獄巡りで、自分自身で、それをどれだけカタチに出来るものなのか、iPhoneを使って自分自身を試してみた。

お馴染みの地獄で、どれだけ地獄らしからぬ写真が撮れるか。
「そんなの、蒸気が上がっていないところを撮れば簡単!」なので、
ついでに、どれだけ目が当てられる写真に仕上がっているかも課題とした、皆さんの厳しい採点はいかがだろう。
実際には、これ以外にももう少し撮っているが、ここではそこから6点だけピックアップしてとりあげる。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2011年02月28日 | Permalink

ソーシャルメディアの「磁場」を考える

Broken Window

朝4時頃に書いていたため、前の記事で割愛してしまった部分を改めて別記事で書くことにした。

前の記事を書いた後、 .@otoko_ebiharaからもらった意見を聞いているウチに、むしろ、そっちを書くことが重要だったかも知れないと思えてきたからだ(あのMacPeople誌の連載「漢・エビハラ」の人です)。

前の記事は、もの凄くかいつまんで言うと、

ミュージシャンの方々がUstreamでは配信しても、ニコニコ動画で配信しないことを受けて、「場」の持つ雰囲気というモノがあり、そこの水が合うクラスター(人々の集合)もあれば合わないクラスターもある。

 人によって趣味趣向や価値観は違うのだ、という話だ。

nobi.com: 無視できない、「場」の持つ力

 ものすごくおおざっぱな例をあげれば、ヨーロピアン家具のイベントのスポンサーにシャンパンやワインのメーカーは合うし、奇をてらえば厳選した日本酒もありだけれど、焼酎だと(少なくとも今は)なんかちょっと違うといった感じか。

 もっとも、最終的にどのメディアを選択するかは、情報の発信者が選べばいいわけで、ニコニコ動画が好きなミュージシャンもいるだろうから、そういう人はUstreamでなくニコニコ動画で発信してもそれはそのアーティストの自由だし、両方で発信して視聴者数を稼ぐという手もあるだろう。

 さて、こうした「場」(あるいは @bleupasta の言うようにブランドの問題なのかも知れません。)の力をつくる要素はいくつかあります。

 見た目も重要な要素なら、機能や使い勝手も重要な要素だ。

 実はつくった人が持つカルチャーや交友関係も重要な要素だ。

 これらによって初期ユーザーによる空気感(文化あるいはオーラ)が生まれる。

 

 この初期ユーザー(種ユーザー)によってつくられる「磁場」は、

 あるクラスターに対しては「引力」を持ちユーザーを増やすことに貢献してくれるが、

 別のクラスターに対しては「斥力」を持ち、そのクラスターのユーザーを遠ざけることもある。

 

 ここで「磁場」の話を掘り下げて、いよいよ、明日から公開の映画「ソーシャルネットワーク」の題材になっているFacebookの話をしよう。

(ちなみに映画の方は先月、試写で観させてもらった。賛否両論はわかれるが、今の世界を知るために観ておいて損はない映画だと思う。音楽も素晴らしい!観ている人のバックグラウンドによって反応がまったく異なるのがある意味、面白かった)。

 

 さて、facebookといえば最初、ハーバード大学の学生しか入れない、アイビーリーグの大学の学生しか入れない、といったプレミアム感、プレステージ感が強力な「磁場」をつくり、世界から6億人を集めるサービスに育っていった。

 今や失敗と言われるGoogle社のソーシャルネットワーク、Orkutも、最初の頃、Tim O'ReillyやMitch KaporといったIT業界のスーパーヒーローらが愛用しているサービスということで強力な磁場を放ち、その後、日本でも外資系企業の人達や、海外も視野に入れたアントレプレナー、帰国子女といったインターナショナル系コミュニティーを引き寄せていった。ただ、その後、ブラジル人のコミュニティーが急拡大し、そちらの磁場が急速に強まると、以前の利用者の磁場は急速に薄まっていった。

 ちょうど、そんな頃に間口を大きく広げたfacebookのプレステージな磁場が、そっくりそのままOrkutの初期ユーザー層を吸い込んでいった、というのが私の印象だ(ただし、今、facebookは慣性の法則で利用者は増え続けていても、磁場はかなり弱まっているのでリフレッシュの必要がある印象もある)。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2011年01月14日 | Permalink

シンプルを突き詰めることの強さ

アップル社が「App Store」を商標登録しようとしていることを受け、マイクロソフト社が「アプリケーションを扱う小売店のサービスを表す総称であり、商標登録できない」意義を申し立てている。

ITmedia: Appleが「app store」の商標申請 Microsoftが異議

Applicationを売るサービスということでApplication Store、ただ、これだと長すぎていいづらいので「App Store」ーー本質に一切、余計なモノを混ぜず、人々が口にしやすくそぎ落としたその名前にアップルの工業デザインに通じる何かを感じた。

余計なものをそぎ落とし、モノの本質に迫った究極にシンプルな形には、
競合他社を「追従者」という立場に追いやってしまう「力」がある。

例えばiPhoneのデザインを例に取ろう。
アップルが、本質をつきつめ、余計なモノをそぎ落としiPhoneをデザインしてしまったことで、
それに追従する現行Android製品の大半は「余計なボタンが付け加わったiPhone 3G/3GS」にしか見えなくなってしまっている。

キーボードを加えた製品でこそ、なんとか独自性を保てているが、他の端末の多くは、そもそも自分たちのカタチを追求する努力すら放棄してしまっているのではないか、と感じさせる製品も多い(それを通り越して、iPhoneと誤解して買ってくれるのを期待しているのだとすれば、ある意味、それは凄い)。
 なお、見た目のカタチだけの点で言えばソニーはさすがで、自分たちのカタチを確立しようとしている印象がある(本体の上に電源アダプターを指す仕様で妥協してしまった点や性能バランスで見ると、個人的に受け入れがたいが)。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2011年01月13日 | Permalink