教えることは学ぶこと。与えないことは教えること。

Oohori Park

 今週は外村仁さんと一緒に九州大学で講演をして以降、今朝の3時くらいまで、非常に濃密な時間が続いた。1日できるメールチェックも3〜4回が限度で、帰るとホテルのベッドに倒れ込む日々。実は今もまだ目の焦点がなかなかあわないくらい疲れている。

 「iPhoneショック」や「スティーブ・ジョブズ〜偉大なるクリエイティブ・ディレクターの軌跡」といった本のおかげで、最近は講演や紙、音、映像媒体に執筆以外の形で露出することも増えた。

 おそれ多くも講演をする機会も増えた。
 これまでいくつか行ってきた講演を通して、つくづく思うのが教えることは、教わることでもある
ということ。それも非常に多層的に自分のためになるのだ。

 まず、教えるためには、ある程度、自分の考えをまとめ、資料を集め、構成を組み立てなければならないので、自分の手元に重要な情報の山ができあがる。これだけでも非常に重要な資産だ。

 もし、あなたに興味はあるけれど、苦手なトピックがあれば、社内勉強会などで、あえて講演者を買って出るのもいいかもしれない。

 先日、取材しCNet Japanに記事を書いたデブサミで、あまのりょー氏が、社内勉強会や社内ライトニングトークについて、話していたが、これは非常にいい試みだと思う。同氏の会社では、ちゃんと予算枠も用意しているということだが、予算だけでなく、社員が講演用の下調べをする時間なども認めてあげるといいかもしれない。
 
10人のエンジニアが見せた開発者コミュニケーションの最前線--「コミュニケーション 2.0」:ニュース - CNET Japan

Mt.Fuji?

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年02月22日 | Permalink

週明けは九州大学

Fukuoka Art Museum

(写真は福岡市美術館に置かれたパブリックアート作品ーー作品名と作者名調べてこないと...)



月から来月にかけて各種イベントや講演、セミナーの予定がいくつか入っています。
そのスタートを飾るのが、18日(月)の九州大学で外村さんと行う講演です。

九州大学の学生の方々が企画し、構想を練り、人を集めて行う講演で、それだけに責任重大。
「土日は休むぞ」宣言もこの週末は返上です(実は先週も少し...)。

以下、同学のQREPというプログラムに参加する学生の具島さん、池邉さん、江嵜さん、島松さん、藤川さんらが頑張ってつくってくれたイベントの案内から引用します:



「世界の風を感じて、ネットワークを広げよう !!」



経営コンサルタントである外村仁氏とITジャーナリストの林信行氏が九州大学で

・  世界マーケット vs 日本マーケット

・「日本はもはや凄くない」という世界認識の広がり

・「日本はやはり凄い」と言わせている日本人達

などのコンテンツで少し高い視点から眺める時代の変化、世界の変化から読み取れる現状、世界の中の日本についてお話します。


私もよく知らなかったのですが、QREP(九州大学・ロバートファン・アントレプナーシップ・プログラム)は、「学生に対する起業家精神(チャレンジ精神等)、国際性涵養等を目的とした教育プログラム」だそうで、検索をしてみると、これまでにもいろいろとおもしろい試みをしてきているようです。


学生向けのセッションに加え、社会人の部もあります。
段取りなど、私もちゃんと把握していない部分があるので、九州大学ビジネススクールの坂本さんのブログに振らせていただきます:

九大ビジネススクール生の大学発VB日記:緊急ITセミナー(ブログから始まった編)

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年02月16日 | Permalink

レビュー再考

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ここのところ、ブログをぜんぜん更新していないことからもわかるかもしれないが、仕事が遅れ睡眠不足の忙しい日々が続いている。
ただ、それは出版社や編集部も同じようで、先週書いたレビュー記事がようやくITmediaに掲載された。

賛否両論があるレビューになることはわかっていたので、
記事が掲載されたら即時、ブログでフォローしようと思っていたが、なかなか掲載されない。

なので、「今日も掲載されないだろう」と思っていた。
朝9時半のメールチェックが最後で、その後、夜中の12時過ぎまでインターネットに接続する機会がまったくなかった。夜中に帰宅して接続したら、いつのまにか記事が掲載されていて、案の定、話題になっていたので、本当は原稿を書かなければならないところ、ITmediaに迷惑をかけないように簡単にこちらでフォローをしておこうと思う。

MacBook Airから見える新しい風景


 このレビューを掲載したITmediaさんの勇気は賞賛したい。
 リード部分で「林信行氏がMacBook Airに対する思いを織り交ぜつつ、その思想的背景に迫る。」と書いた当たりに、編集者の間での「これをこのまま載せていいのか」というディスカッションがあったことが伺える。当たり前だろう。私も、載せられないなら載せられないで、かまわないとどこかで思っていた。

 この記事には、私自身の「レビュー不信」、「スペックシート(&ベンチマーク)文化不信」といった数年に及ぶいろいろな思いを反映したもので、レビューであってレビューではない。レビュー以外のメッセージもたくさん込めたつもりだ。

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最近、本を数冊書いたことで、やたらと丁寧に接してくださる人が大勢いる。
それはそれでうれしいが、「先生」などと呼ばれると、違和感を感じてしまう(*1)。
そして、あまのじゃくな私は逆に、何か正反対なイメージのcontroversialなことをやりたいと思ってしまう。そんな中、ITmediaさんにMacBook Airのレビューを頼まれた。
「めちゃくちゃ仕事が溜まっていて、受けられそうにないけれど、もし好きなように書かせてくれるなら」と言ってみたところOKをもらったので好きなように書かせてもらった。

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 この記事の原点は、5年ほど前、私がMACPOWERという雑誌に出していた企画に端を発するのだと思う。
 当時、同誌のアドバイザーで、企画会議にも参加していた私は「レビュー再考」という企画を出していた。この頃からパソコン雑誌は、昔成功した記事の焼き直しばかりになってしまっていて、ちょっとつまらなくなっていると思っていた。
 なので、何かそうではないもの。新しい文化を生み出すものや、自分たちが築いてきた土壌を、もう1度振り返る記事がやりたかった。

 昔のMACPOWERはBROWSE REVIEWとPOWER REVIEWという2つのレビュー記事で定評があったが、「レビュー再考」は、その目玉記事すらを、もう1度、考え直してみようと問題提起したいと企画したものだった。

 なぜかと言えば、ほとんどのレビュー記事は嘘ばかりだからだ。

 雑誌にしてもWebにしても、ブログにしても、そもそもレビュー記事というのは嘘だらけだと私は思っている。実際、自分でいくつものレビュー記事を書いていても、嘘だらけだと感じている部分が多かった。
 質が悪いのは、ベンチマークテストの結果など、数値化できるものを載せていると、いかにもそれが客観的で公平なレビューだと思わせてしまうことだ。
 しかし、数字は、その後の解釈次第でいくらでも操作ができてしまう。
 自分でも多くのレビュー記事を書き、その度に悩んできたこともあり、私はだんだんと「客観的」を装うレビューが、悪いことに思えてきた。
 例えばあるベンチマークテストで、機種Aの方が機種Bよりも20%速いという結果が出たとしても、「機種Aは、機種Bと比べて20%も速いという結果が出た」というか「これだけ価格差があるにも関わらず20%しか差が出なかった」と言うかで、製品の印象がぜんぜん違ってくる。

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 私は「この世の中には客観的なレビューは存在しない」と思っている。
 それだけに、下手に「客観風」を装うよりも、「おれはめちゃくちゃエコヒイキな人間で今から偏ったレビューを書く。そのかわり、他の誰も書いていないような視点も盛り込んでいるので、共鳴してくれた人だけ勝手に共鳴してくれ」という属人的なレビューの方が正直に思えてしまう。

 もし、「レビュー再考」の記事が実現していたら、私がその中で、理想のレビューの1つとしてあげようとしていたのが、多視点的レビューだ。
 つまり1つの製品を、視点の異なる大勢の人に触ってもらい、それぞれの視点で一言言ってしまうことだ。
 実際に一部のパソコン雑誌が、これを行っているが、これが素直な多視点的レビューになればいいが、予定調和的になるとおもしろくない。
 ただ、編集者という人間は、「この製品のレビュー、他の3人の方がいいこと書いているんで、〜〜さんは、ちょっと悪い点も指摘してくださいよ」といった具合に「調整」をしがちなものだ。
 こうなってしまうと、とたんに「嘘」が入ってしまい、おもしろくなくなる。
 
 実はこちらもITmediaで書かせてもらった記事だが、これは多視点的レビューを、思いっきり稚拙な方法で実現したものだ:
トップブロガーたちによる「新MacBook Pro」速攻&即興レビュー

 多視点的レビューの最終的な目的は、読者のうちの5%か10%くらいにヒットするかもしれない「視点」を届けることだ。
 あとは、その視点をどのような形でパッケージ化するかが問題で、客観的レビューを装ってパッケージ化する方法が一般的だろうが、上の記事で意見を求めた人は、圧倒的にMacユーザーが多くて、およそ客観性を演出できる状況ではなかった。
 そのため、ならばいっそ「お馬鹿な読み物」風に仕立てた方が読みやすいかな、と思ってあのような形にした。




投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年02月14日 | Permalink

来週から「土日はしっかり休むぞ」宣言

Shipped

There is something 'on' the air.

仕事に追われ、雪化粧の街並を散策する余裕すらなかった。
何か大きなものを失った気がした。
そんな中、ちょっとだけうれしかったのは、MacBook AirAirでこちらに向かっているというApple Storeからのお便り。

どうやら今週後半からの取材は、荷物を大幅に減量できそうだ。

ich gehe zuruck nach japan

今年からは生活にメリハリをつけて、いい仕事をするためにも土日は仕事をしない。

そう、言い聞かせるもむなしく、目標の開始は2月からに延期され、
その2月の最初の土日もとてつもなく遅れている仕事にあけくれてしまった。
もっとも、ここで「3月から」なんて言い出したら、いつまで経っても実行できそうにないので、
次の土日こそは、堂々と「仕事をしない」を決め込みたいところ。

「月曜日の朝一」を〆切りにしてもらっていた仕事は
「火曜日の朝一」か「月曜日の夕方」に変えてもらい。

万が一、土日に仕事をすることになったら、
相手にも土日に仕事をさせてしまって申し訳ない気持ちを言葉にしようと思う。

実はそうでもしていかないと、ただただダラダラと大事な時間が消耗され、
結局、いいものも生み出せなくなる気がする。

多くの日本人が、ただただ勤勉に働き、人によっては財政的には豊かになっても、
生活の質、そのものはあまり豊かでない印象がある。

それよりも発展途上国の決してそれほど豊かではない家庭の人達の方が、
自分の時間も、友達との時間もしっかりと確保して、
充実した日々を過ごしているように見えるのは決して錯覚ではないだろう。

そもそも日本では、食べに行く、飲みにいく、デートする、遊園地といった
ややパッケージ化、マニュアル化されたものが中心で、娯楽が少ないというのも一因かもしれないが、
自分の時間をしっかり確保せず、会社のため、同僚のためにと仕事に追われているのも、
こうした事態を引き起こす諸悪の根源の一つのような気がする。

「仕事が終わったからといって、なんだか俺一人だけ先に帰るのも申し訳ないな」
という雰囲気が空気に漂っていて、その空気を読めてしまうがために、
仕事が終わってもダラダラと会社に居続ける。
いろいろな会社で、そんな光景をよく見かける。



投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年02月04日 | Permalink

近況報告+AMNに加えていただきました

Tokyo Kokusai Forum
追われる側に回ってはダメだ。自分で仕掛ける側に回らなければ。

と、十分に分かっていながら、一度、追われる側に回ると、
次から次へと余計な仕事、用事が増えていって本当にやりたいことができない。
昨年末からずっとそんな状況が続いていた。
1月は特にひどかった。

仕事で扱うテーマにしても、仕事のやり方にしても、
同じ足取りをなぞるばかりでは、道筋が収束し
自分がダメになってしまうような気がしていた。

なので、新しい仕事を積極的に受け入れるようにしてきた。
ただ、その管理があまりにお粗末だったのだ。

そうやっていろいろな皆さんにご迷惑をかけてしまうと、
なかなかブログも更新しにくい。

そんなブログを更新していない中で、ちょっと発表しづらいことだが、
アジャイル・メディア・ネットワークに加えていただいた。

日本を代表する有名ブロガー達が参加しているネットワークだ。
最初にお声がけをいただいたときは、「私なんかのブログで大丈夫?」と心配もした。
それでも話しは進んだ。
最後はこちらが手一杯で何もできず、「すべてお任せ」状態で
手続きやら、設定やらを丸投げしてもらった(ありがとうございました!)。

AMNがどんなものかは、こちらのページで紹介されている:
アジャイルメディア・ネットワーク(AMN)
サービスの開始前、毎月恒例のブログディナーで、
「日本のブログが、もっと発展するように積極的にしかけていきたい」とサービスの紹介があったのを思い出す。

来月からはnobilog2も頑張らなければ、と心を引き締める思いだ。
もっとも、だからといって[N]ネタフルさんのように息をするようにブログを書く能力はない。
nobilog2は自分のペースを守って、更新するつもりだ。
つまり、仕事を追われている状態を減らし、もっと日々の生活に余裕をつくれば、
もっとブログを更新する余裕もでてくるだろう、というわけだ。
いうなれば、work-life-blog balanceといったところか。

Gehrkin
(Penの最新号に触発されて、古いGehrkinの写真を掘り出してみた。なんの変哲もない、ロンドンの普通のオフィス街からニョキっと姿を現すGehrkinには心躍らされる)


今やいわゆる「商業メディア」と比べても、無視できない影響力を持つメディアとなったブログ。
しかし、中にはブログの効果を正当に評価できず、チャンスを失っている企業も多い。

アジャイルの試みが、ブログを発展させる上で本当に正解かどうかはわからない。
そんなことがわかる人はいないだろう。やってみなければ。
だが、とりあえず、やってみて問題が見つかったら、そこから直せばいいわけだし、
そうやって軌道修正することで見えてくる答えもあるはずだ。

ただただ周囲の状況に追われて、目の前1cmの世界観だけで突き進んでいると、
小人のものだと思って見ていた足が、後から見上げてみると実は巨人の足の指だったり、
自分が一生懸命に走ってたどり着いた先が実は崖っぷち、ということだってありえる。
(年始と秋頃に、各社一斉に新製品発表、という意味のないスケジュールに追われている家電業界、携帯電話業界は、そういう意味でも危ないと思う)。

それよりは常に一歩離れた視点で世界を見渡し、細かく軌道修正しながら歩を進めていきたい。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年01月31日 | Permalink