ソーシャルメディアの「磁場」を考える
朝4時頃に書いていたため、前の記事で割愛してしまった部分を改めて別記事で書くことにした。
前の記事を書いた後、 .@otoko_ebiharaからもらった意見を聞いているウチに、むしろ、そっちを書くことが重要だったかも知れないと思えてきたからだ(あのMacPeople誌の連載「漢・エビハラ」の人です)。
前の記事は、もの凄くかいつまんで言うと、
ミュージシャンの方々がUstreamでは配信しても、ニコニコ動画で配信しないことを受けて、「場」の持つ雰囲気というモノがあり、そこの水が合うクラスター(人々の集合)もあれば合わないクラスターもある。
人によって趣味趣向や価値観は違うのだ、という話だ。
nobi.com: 無視できない、「場」の持つ力
ものすごくおおざっぱな例をあげれば、ヨーロピアン家具のイベントのスポンサーにシャンパンやワインのメーカーは合うし、奇をてらえば厳選した日本酒もありだけれど、焼酎だと(少なくとも今は)なんかちょっと違うといった感じか。
もっとも、最終的にどのメディアを選択するかは、情報の発信者が選べばいいわけで、ニコニコ動画が好きなミュージシャンもいるだろうから、そういう人はUstreamでなくニコニコ動画で発信してもそれはそのアーティストの自由だし、両方で発信して視聴者数を稼ぐという手もあるだろう。
さて、こうした「場」(あるいは @bleupasta の言うようにブランドの問題なのかも知れません。)の力をつくる要素はいくつかあります。
見た目も重要な要素なら、機能や使い勝手も重要な要素だ。
実はつくった人が持つカルチャーや交友関係も重要な要素だ。
これらによって初期ユーザーによる空気感(文化あるいはオーラ)が生まれる。
この初期ユーザー(種ユーザー)によってつくられる「磁場」は、
あるクラスターに対しては「引力」を持ちユーザーを増やすことに貢献してくれるが、
別のクラスターに対しては「斥力」を持ち、そのクラスターのユーザーを遠ざけることもある。
ここで「磁場」の話を掘り下げて、いよいよ、明日から公開の映画「ソーシャルネットワーク」の題材になっているFacebookの話をしよう。
(ちなみに映画の方は先月、試写で観させてもらった。賛否両論はわかれるが、今の世界を知るために観ておいて損はない映画だと思う。音楽も素晴らしい!観ている人のバックグラウンドによって反応がまったく異なるのがある意味、面白かった)。
さて、facebookといえば最初、ハーバード大学の学生しか入れない、アイビーリーグの大学の学生しか入れない、といったプレミアム感、プレステージ感が強力な「磁場」をつくり、世界から6億人を集めるサービスに育っていった。
今や失敗と言われるGoogle社のソーシャルネットワーク、Orkutも、最初の頃、Tim O'ReillyやMitch KaporといったIT業界のスーパーヒーローらが愛用しているサービスということで強力な磁場を放ち、その後、日本でも外資系企業の人達や、海外も視野に入れたアントレプレナー、帰国子女といったインターナショナル系コミュニティーを引き寄せていった。ただ、その後、ブラジル人のコミュニティーが急拡大し、そちらの磁場が急速に強まると、以前の利用者の磁場は急速に薄まっていった。
ちょうど、そんな頃に間口を大きく広げたfacebookのプレステージな磁場が、そっくりそのままOrkutの初期ユーザー層を吸い込んでいった、というのが私の印象だ(ただし、今、facebookは慣性の法則で利用者は増え続けていても、磁場はかなり弱まっているのでリフレッシュの必要がある印象もある)。
さて、前の記事のUstream対ニコニコ動画の話から始まって、人によって「場」の好き嫌いは分かれるから、嫌がる人に無理に自分の好きな「場」を押しつけるのは無理、と言うだけで終わってしまった。
しかし、私はニコニコ動画にクリエイティブ系クラスターをあきらめろ、というつもりはない。
今、つくられている「磁場」が「引力」、「斥力」ともに強いものなのだと言いたいのだ。じゃあ、そのコミュニティーの人数を超えてサービスを成長させるには、どうすればいいか?
ニコニコ動画だ、2ちゃんねるだ、はてなブックマークだといったWeb系のサービスの主体はプログラムとデータベースだ。そしてプログラムやデータベースはいくらでも複製ができる。
だから、まるまるサービスの複製をつくって、別の入り口をつくればいいんじゃないか、と思っている。
プログラムのコードとしてはほぼ同じだ。
ただし、サービス名も違えば、コメントの表示方法も変える。フォントなども、もう少しトーンを変えて、マスコットキャラクターの雰囲気も変える(あるいは使わない)、製品を彩るユーモアのセンスもちょっと変えてみる(あるいは、もう少し無着色にする)。
最初は同じ会社のサービスだとわからないくらいの形で展開して、そこに吸い付くユーザー層を根気よく大事に育てる。
時間が経って、十分な「磁場」を持つコミュニティーになったら、両サービスのシナジーを考えてみてもいいかもしれない。
もちろん、今のサービスが持つ文化や空気感に誇りを持っていて、サービスと文化は切り離せない、という考えなら、それも1つの選択肢で、他社がとやかく言うことではない。
これはあくまでも、より幅広い層にリーチして、ユーザー数の天井を高めることに重点を置いているならばの提案に過ぎない。
ちなみに、これは楽天などに出展している店舗についても言えると思う。実際に売っているのは同じ商品でも、店頭のデザインを変えることで、異なる顧客層にリーチができるんじゃないかと私は思っている。
(そして、もう1つのアプローチは、Twitterのように「斥力」を持つクラスターの存在を感じさせにくいデザインを取り入れることだ)。
皆さんはどうお考えだろう。
コメントする方法は下のコメント欄以外にも、ツイッター(パソコンから見ている人は、右上のTOPSYというボタンを押せば表示で)や「はてなブックマーク」もあります(がメールは勘弁願います <- たまにいらっしゃるので念のため)
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フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた) | |
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