facebook、日本進出!【雑感PART I】

*遅れてスミマセン、ようやく更新しました@20日 4.33AM/前半部分もUPDATEしています*

facebook press conference in tokyo

全米2位のソーシャルネットワークサービス(SNS)、
facebookが、日本向けのサービス開始を正式に発表した。
といっても、今日になって何かが突然変わったというわけではない。
実は設定次第で切り替え可能な、日本語メニューは先月頃から用意されていた。
それに(英語の文面のものも含め)日本の広告も先月(あるいはもっと前からかも)から見かけていた。

今日、行われた発表会は、むしろ創業者のMark Zuckerbergの初来日にあわせて行われたものと考えて良さそうだ。

 ただ、1つ、今回の来日で重要なことといえば、facebook用アプリケーションのローカライズは、どうなるのか、ということ。
 facebookの特徴は、例えばユーザーが自分のプロフィールページに自由にアプリケーションを追加してカスタマイズできること。例えばTwitterのアプリケーションを追加して、Twitterに書き込んだコメントを表示させたり、Flickrのアプリケーションを追加して、Flickrに投稿した写真を表示させたり。
 他にも私のお気に入りアプリケーションを挙げると、「Where I've Been」という自分が行ったことのある国のリストを表示するアプリケーション(そうしておくことで、友達と意外な国の話でもりあがったりできる)、シンプルなところでは、プロフィールに「I have an iPhone」というメッセージを表示するだけのアプリケーションもあったりする。
 実はTwitter用のアプリケーションは、最初の頃は日本語に対応しておらず、Twitterに日本語のメッセージを投稿しても「文字化け」するといった問題があったが、この問題はいつのまにかなくなっていた。
 私が行っている「facebook用アプリケーションのローカライズ」とは、そうした文字コードの扱いなどの話ではなく、もっと表層の部分、UIの日本語化などについてだ。
 アプリケーションの名前を(例えば)「私の行った国」に直すのがいいかどうかといった議論も含め、国を選択するメニューや国名なんかも、うまくローカライズしないと、もしかしたら、そのうち日本の誰かが英語版があることを知らないで(あるいは知っていて)、日本語版のほぼ同じ機能を持つアプリケーションをつくってしまう可能性がある。
 そうなると同じことをやりたいユーザーが言語ごとに、別々のアプリケーションに分散してしまい、「国際的SNS」のおもしろさが活かせない。

 これについて質問をしたかったが、チャンスが回ってこなかったので、記者会見後、日本の開発サポートを行うJavier Olivanに講演後に聞いた(残念。時間的に余裕がなかった)。

 Olivanさんによれば、これについてはfacebook本体のサービスと同様にローカライズできるとのことだが、詳しくは今後、開発者達と詰めていかなければならないという。今更、この記事を読んで間に合う人はいないだろうが、記事を書いた19日19時から原宿で開発者会議が行われるので、間に合う開発者はぜひ足を運んで欲しい。

 近々、日本でも発表されそうなiPhoneとの親和性も高いし、自分のWebアプリを世界進出をするための近道にもなるし、facebook開発の世界は、開発者なら、とりあえず覗いておいて損はないはずだ(私はちょうど予定がバッティングしていていけないのが悔しい。誰か行った人、状況を教えて!)。

ここで記者発表会に出ての雑感を書いてみよと思う:

facebook intro in tokyo

(最初に投稿した時点では、以下の内容は書きかけでしたが、20日4:33amに仕上げました*)

 発表会で、記者達から度々、質問されたのが「実名」重視というポイントだ。
 これはZuckerbergがサービスの説明の中で、度々、facebookが「Real People, Real Connection」のサービスだと強調したのを受けている。

 ご存知の通り、日本には「実名」アレルギーの人が大勢いる。
 私はこれは、日本ではインターネットの普及の初期段階で、実名コミュニケーションの楽しさ/便利さが広がるのよりも先に、匿名コミュニケーションの楽しさ/便利さが広がってしまったのが大きな原因だと思っている。
 SNSを振り返っても、mixi/Googleが流行る直前に、先駆的ユーザーの間で流行したGoogle社のOrkutも、最初に飛びついたのは実名+顔写真を使うユーザーだったが、その後、ユーザー層が拡大するにつれて、イラストとニックネームのみでの登録が増えてくる。
 名刺管理が苦手な、私は、最初にOrkutに登録したとき、信頼できる友達だけにプロフィールを通して電話番号や住所を公開できるのをみて、「これで名刺が不要になるかも、便利!」と喜んでいたが、やがて「この人は本当に知っている人だろうか」という友人が増えてしまい、プロフィールの情報の制限を厳しくせざるを得なくなった。
 mixiやGREEも、最初は喜んで実名+顔写真で登録するユーザーが多かったが、その後、ニックネームとイラストばかりの人が増え、コミュニティーの文化・雰囲気も大きく変わっていった。

 ちなみに、まだSNSという概念が浸透していない頃のmixiは、いわゆる出会い系サイトと混同されるのを嫌っていたこともあるが、実名登録やネット上でのリアルな人間関係の再現、つまり「Real People、 real connection」にこだわり、これを強く唱っていた。
 だが、日本のインターネットでは、そうしたサービスの多くが、「実名」アレルギーの人達の反論にあい趣旨替えをすることになる。「Oh My News」も、最初に「実名」報道を唱ってしまったために、ものすごい攻撃にあい苦労をすることになる(その当たりのことは、最近の編集長インタビューでも話題になっている)。

 日本人が手がけたサービスだって、そうなのだから、アメリカ主導でローカライズを進めているfacebookなんかが「実名重視のサービス」を唱ってもうまくいくわけがない、というのが多くのマスコミの見方だろうし、私の最大の懸念でもあった。
 それだけにZuckerbergには「ちゃんと、friendsterやOrkutといった前例は研究したのか?」と聞きたかったし、日本ではビジネスネットワークを広げるのが目的の「LinkedInにまで、ニックネームで登録する人がいるまでに実名アレルギーの強い人がいる」と教えたかった。

 また、多くのマスコミがZuckerbergの言葉をそのまま受けて「facebook=実名重視のサービス」を唱うと、facebookにとって大きなマイナス要因になるんじゃないかと心配だった。

 しかし、楽天的な私の考えは、説明会からの帰り道には、少し変わってきた。
 「このfacebookがきっかけで、日本でも『実名』のコミュニティーが広がればいいや」と楽観的に構える気持ちに変わってきたのだ。
 そうなった背景には「もしかしたらfacebookなら、それができるかもしれない」と思えたことがある。これには「FACEBOOK DEVELOPER GARAGE TOKYO」のページに書かれていたGen Kanaiの書き込みもヒントになった。Genさんは、ここで「The Facebook Platform is Biased Toward "Fun" Apps(facebookは遊びのアプリケーションに偏っている)」という記事を取り上げて、意見を求めていた。
 実際、私がfacebookで、一番、気に入っているアプリケーションも、友人に何かいいことがあった時に、(仮想の)ワインやシャンパンにメッセージを添えて贈ることができる「Happy Hour」というアプリケーションや友達をペットとして売買する(売買する度に価値があがり、仮想通貨の収入が得られる)「friends for sale」というジョーク・アプリケーションなど、遊びのアプリケーションが多い。

 mixiの日記のようなシリアスなアプリケーションがあると、そこに愚痴だとか、複雑な人間関係の話だとか、そういうものが入ってきて、情報公開範囲の取捨選択が難しくなるが、facebookは、あまりそういったwetなコミュニケーションに使われることはなく、むしろカラっとdryに楽しめる要素の方が大きい。そういう意味では、mixiなどと比べると大味で、つながりの強さを感じにくい部分もあるかもしれないが、逆に閉塞感などは感じにくい(少なくとも今のところは)。

 ちょっと長くなったが、そういうわけで、facebookは、「これなら失うものがない」と感じた人が、(抵抗感があるなら無理に実名を使う必要はなくニックネームでも十分だと思うが)少しずつ実世界の友達に発見してもらう(あるいは誰だか認識してもらう)ためのヒントを増やしていってくれるのに、ちょうどいい場所なのかもしれない、と思えてきたのだ。

facebook intro in tokyo

 ここで1つだけ補足しておこう。

 facebookには、遊びのアプリケーションしかないかというと、そんなことはない。
 今日の説明会でも、有益なアプリケーションの実例として「CAUSE」が紹介された。
 これはfacebook上で、さまざまな社会的アクションを起こし、参加するためのアプリケーションだ。
 例えば私はCreative Commonsを応援するCAUSEに入っている。
 このアプリケーションを通してCreative Commonsに、寄付をすることもできれば、友達をこの活動に誘うこともできる。
 日本人のメンタリティー的には、友達を誘うのは気が引けるところだろうし、私もCAUSEに参加する際に特に友達に招待状を送るようなことはしていないが、それでも私が何かのCAUSEに参加すると、そのことがNews Feedとして友達のところにも伝わる。
 友達が大勢参加しているCAUSEがあれば、それを見ている友達も、自然とその活動に関心が高まるはず(入るかどうかは別)。それだけでも、そうした運動のawareness向上に貢献できる。
 私も古川さんが「Blue Earth」というCAUSEに参加したのをみて、こちらの活動を知った。
 中国で起きた地震についても、いくつかのCAUSEがつくられており2000ドルを超える寄付を集めているCAUSEもある(ちなみにこのアプリケーションは、facebookのアプリケーションの中でも、特に実名性が重要なアプリケーションかもしれない。というか、CAUSEの作成者が実名でなければ、まず誰も参加しないだろう)。

雑感はまだまだ続くが、あまりにも長くなったので、別の記事にわけることにする。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年05月19日 | Permalink