THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2006
今日と明日の2日間にまたがるイベントだ。
今日のテーマは「Culture of Web 2.0」。
日本でも有名なラリー・レッシグも含めて、ゲストもそうそうたるメンバーなので、
それなりの期待はしていたが、正直、日本でこれだけ質の高いディスカッションが聞けるとは思っていなかった。
N新聞のK編集委員「これはPC FORUMだね」と言っていたけれど、まさにそんな雰囲気。
今、IT業界から見た世界の流れを知る上で、
それも川の浅いところではなく、深いところで起きているsubstantialな変化、
5年あるいは10年あるいはもっと先の未来をも変えうる変化を知る上で、
ぜひ見ておくべきカンファレンスの1つだったと思う。
こういうカンファレンスが日本で、日本の聴衆向けに行われたのも素晴らしいと思う。
今日や明日のビジネスですぐに使える知識を求めている人には向かないかもしれないが、
もっと、長期の展望を持てるリーダーの人達はぜひ来るべきカンファレンスだったのでは?
なかなか、そんな長期のことを見ている余裕はない、という人もいるかもしれないけれど、
最近、日本でもよく話題になるCSR(Corporate Social Responsibility)とかも
こうした視点が備わった方が、ちゃんと議論ができるように思う。
そして、そういう意味でも今日のカンファレンスはよく構成されていた。
IT系の人には、まず、説明不要の伊藤穰一(Joi)さん
Mozillaプロジェクトの立ち上げから関与し、現在、Mozilla Corp CEOのミッチェル・ベーカーやTechnoratiのチーフテクノロジストでかつてはMicrosoft社Macintosh Business Unitにいたタンテック・セリックの名前が止まるだろうが、視野をそこだけに止めず、AT&T社のベル研究所で、ネットワークのあるべき姿の研究に取り組み続け余計な干渉をせず、ただTCP/IPのパケットを流すだけの「Stupid Network」が一番いいという結論に到達したプロサルタントのデビッド・アイゼンバーグ氏。さらに、ちょっと変わったところでは、ブラジル文化省デジタルカルチャー部門のクラウディオ・プラド氏といった色とりどりの人選だ。
冒頭の挨拶でJoiさんが言う。
「日本では通産省など経済関係の省庁が中心となってインターネットの発展を支えてきたが、ブラジルではこれを文化省がやっている。」ーーなるほど、確かに面白い。
プラド氏曰く、これまでインターネットに触れたこともなかったような人にも、
いきなり最初からマルチメディアのインターネットを与える。
こんなことで多くのブラジル人が、20世紀後半の必要以上に強大な著作権法を生み出す背景にもなった大量生産消費経済の時代を飛び越えて、19世紀から一気に21世紀を迎えようとしている、という。
ラリー・レッシグ氏による基調講演は文句なしでおもしろかったが、
それ以外にも、いろいろな立場、いろいろな視点で、繰り広げられた議論は、それぞれが示唆に富み、
聴講者に次々と新たな疑問を投げかけてくる。
ちょっと、わかりにくいような箇所にもJoiさんが、日本での実例などをあげてわかりやすく解説を加えてくれる。
今やインターネットは、電気や水道管と同じくらいに欠かせない我々の生活の一部になりつつなる。
今日のカンファレンスの内容は、そのまま我々の社会のこれからを考える上でも重要だったのでは?
明日は「Web 2.0 and Business」というタイトルで、Linden LabsのCTOやLast.fmのCEO、新生銀行のCIO(今日も紹介が会ったが同行では、OpenOfficeの全面採用に踏み切ったようだ)、Magnatune.comのCEO らがパネルに加わり、村井純氏が基調講演を行う。
(ラジオの生放送があるけど、これを逃すのはもったいない。お休みしちゃおうかな...)
「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2006」というくらいなのだから、
ぜひ毎年恒例にしてもらって、日本全国はもちろん、
海外からも聴講者が来るようなイベントに発展させてもらえればと思う。
ついでに、Student Discountなども用意して、学生にも参加しやすい環境をつくってほしい。
今年行ったいくつかのIT系カンファレンスの中でももっとも価値が高いものだったと思うし、
講演で得た知識や、視点は、今後、いろいろな媒体で少しづつ書いていければと思う。
もっとも、これから年末に向けて、ほぼ毎日毎週何かしらの大きなイベントが行われていて、
とてつもなく急がし日々が続いている。今日も朝8時には家を出て、
記者会見を1つあきらめ、夜の打ち合わせを来週に延期したおかげでなんとか18:30頃に帰宅。
でも、これから夜中までに書かなければならない原稿が片手に収まらない本数ある。
おまけに明日も朝早くからラジオと「THE NEW CONTEXT CONFERENCE 2006」、
そして夕方からの記者会見、夜のミーティングが入っているので、睡眠時間も確保しないと続かない。
金曜日も同様。
この状態が、しばらくつづくと思うと、心が沈む。
でも、そんなところでもいいカンファレンスは出ていて元気が出るもの。
そういえば、日曜日にNTTのICCで行われた「オープンソース」×「アート」のパネルディスカッションも、
後半はかなりおもしろくなってきた。
いずれNTTの映像アーカイブ「HIVE」やDivvy DualのWebサイトで公開されるはずなので、ぜひともチェックして欲しい。