Mac誕生から四半世紀
「iPhone 3G販売から半年」の記事につづいて、振り返りもの...
On January 24th,
Apple Computer will introduce
Macintosh.
And you'll see why 1984
won't be like "1984".
この伝説のCM通り、
スティーブ・ジョブズが初代Macを発表したのが、
今からちょうど四半世紀前の今日1月24日。
発表は上の写真の場所、アップル本社からほど近いDe Anza CollegeのFlint講堂で行われた。
(ちなみに写真はMac誕生15周年の1999年に、同じ講堂でiMac DVが発表されたときの写真)
四半世紀、1世紀の4分の1がもう過ぎたのかと思うと正直驚くところがある。
最初のMacが発表された当時、私はまだ高校生だった。
アップルはMac発表の前年にLisaというマウスを使ったコンピューターを発表していた。
誰でも20分で使えるようになる未来からやってきたビジネスコンピューター。
そんな印象のLisaがあっただけに、Macの印象は、その廉価版(しかも、ソフトの互換性無し)。
日本では伝説のCMが流れたわけでもなければ、Lisaも初代Macも
(いや、それどころか国内で売られていたApple IIシリーズでさえも)手が届かない存在だったし
そういう意味ではMacの最初の印象は、それほど衝撃的なものではなかった。
でも、初期のMacの販促に使われていたグラフィックやCMは、いずれも凝ったもので、
アップルが、この製品にかなり本気である様子だけは肌で感じていた。
その後、一部のパソコンショップにMacが置かれるようになり、
私も頻繁に触るようになった。
なんといっても衝撃を受けたのがStudio Sessionというソフト。
初代MacのOS開発にも関わったSteve Cappsのつくった音楽ソフトだが、
なんとも楽しいつくりに、そしてMacがグラフィックだけでなく音の扱いにも優れたパソコンである事実に圧倒された。
ちなみに、この「Studio Session」の後継ソフト、「Super Studio Session」は現在、ネット上で無料公開されている:
Super Studio Session
Macの進化の道筋は平坦ではなかった。
アップルがMacで広めようとしたことは、
結局、Windows 95によって広められることになった、という人もいる。
私も話す相手によっては、説明コストが低いので、そう話していることがある。
でも、Macを本質的に知っている人間であれば、
ただGUIを使っているからといって、両者が同等などとは思わないはずだ。
例えば、昨日もちょうど友人との話しにでてきたのだけれど、
文字と同じように、画面の左から右へ、上から下へと
視線の自然な流れにあわせたメニューなどの画面配置。
マウス操作でイジェクトしたフロッピーディスクが自動排出されるときのハードとソフトの一体感。
といった具合に、MacとWindowsでは、そもそも同じように見えるインターフェースの要素1つ1つについても、背後にある思想の深さが違う、ということに気がついているはずだ。
そして、そうした違いを生み出せるのは、アップルの製品が、単にエンジニアの思いつきだけではなく、背景に文化人類学者から言語学者、ソフトエンジニア、ハードエンジニアなど多くの知見を取り入れた上で、それを1人のマエストロが1つの、滑らかかつ、しなやかな作品に仕上げたからこそだろう。
直感型の天才と言われるスティーブ・ジョブズだが、彼が本当に凄いところは、
何か獲得したいこと、知りたいこと、得たいことがあれば、自分が、その分野のトップだと認める人に、直接、コンタクトを取り、会いに行って、深い話をし、相手の知識や考えを吸収し、咀嚼し、自分のモノにしてしまうことができることだろうーーこのために、ジョブズにアイディアを盗まれた、という人も大勢いるが、実はジョブズがアイディアを吸収した時点で、そのアイディアは、ジョブズの他の知見や、その知見に裏打ちされた直感によって新しい側面を持つようになっている。
初代Macから、iMac、iPod、iPhoneと時代を経るに連れて、ジョブズと知己を持つ人も増え、それにあわせてアップルの製品や戦略の奥深さは、他の会社の及ばない領域にまで達しようとしている。
冒頭で紹介したiMac DVが発表された10年前は、ソニーの盛田氏が亡くなられた直後で、
ジョブズも、ソニーへの敬意とあこがれを言葉にしていたが、
今ではソニーが大きな損失を発表する中、
コンピューター会社からデジタル時代のライフスタイルブランドに生まれ変わったアップル社は
Mac、iPod、iPhoneという3つの主軸製品を成功させた上で、4つ目の柱になる可能性を秘めたApple TVまで好調というオマケ付きで、大成功を収めている。
アップルをどん底から成功に返り咲かせたリーダーについては、その病状を懸念する声が止まないし、これは確かに大きな問題だ(実は同様に、アルマーニにとってもジョルジオ・アルマーニの後継者は悩みの種だろうと思って、最近、「アルマーニ」の本を読んでいる。ジョルジオも、ジョブズに近い直感型完璧主義のマエストロであるにも関わらず、生まれ育った家庭環境はまったく違っていることにちょっと驚いている)。だが、ジョブズが十余年にわたって見せてきた「アップル流」は、少なくとも今の世代のVPには浸透していると思う。
Palm社が「iPhone発のライバル」と呼ばれる「Pre」をつくれたのも、現Palm社CEOで、かつてはジョブズの右腕だったジョン・ルビンスタインに「アップル流」が伝授されていた影響が少なからずあるはずだ。
そう考えると、ジョブズが正式にCEOを辞任したとしても、少なくとも5〜6年は安泰なのではないかとは思う。
いずれにしても、今年はアップルにとっても、iPhoneにとっても勝負の年であり、何かパソコン業界と通信業界を巻き込んだ、大きなうねりを生み出しそうな年だと思う。
私もこれまでとはさらに活動範囲を変えて、新しいことに取り組んでいけたら、と思う。
On January 24th,
Apple Computer will introduce
Macintosh.
And you'll see why 1984
won't be like "1984".
この伝説のCM通り、
スティーブ・ジョブズが初代Macを発表したのが、
今からちょうど四半世紀前の今日1月24日。
発表は上の写真の場所、アップル本社からほど近いDe Anza CollegeのFlint講堂で行われた。
(ちなみに写真はMac誕生15周年の1999年に、同じ講堂でiMac DVが発表されたときの写真)
四半世紀、1世紀の4分の1がもう過ぎたのかと思うと正直驚くところがある。
最初のMacが発表された当時、私はまだ高校生だった。
アップルはMac発表の前年にLisaというマウスを使ったコンピューターを発表していた。
誰でも20分で使えるようになる未来からやってきたビジネスコンピューター。
そんな印象のLisaがあっただけに、Macの印象は、その廉価版(しかも、ソフトの互換性無し)。
日本では伝説のCMが流れたわけでもなければ、Lisaも初代Macも
(いや、それどころか国内で売られていたApple IIシリーズでさえも)手が届かない存在だったし
そういう意味ではMacの最初の印象は、それほど衝撃的なものではなかった。
でも、初期のMacの販促に使われていたグラフィックやCMは、いずれも凝ったもので、
アップルが、この製品にかなり本気である様子だけは肌で感じていた。
その後、一部のパソコンショップにMacが置かれるようになり、
私も頻繁に触るようになった。
なんといっても衝撃を受けたのがStudio Sessionというソフト。
初代MacのOS開発にも関わったSteve Cappsのつくった音楽ソフトだが、
なんとも楽しいつくりに、そしてMacがグラフィックだけでなく音の扱いにも優れたパソコンである事実に圧倒された。
ちなみに、この「Studio Session」の後継ソフト、「Super Studio Session」は現在、ネット上で無料公開されている:
Super Studio Session
Macの進化の道筋は平坦ではなかった。
アップルがMacで広めようとしたことは、
結局、Windows 95によって広められることになった、という人もいる。
私も話す相手によっては、説明コストが低いので、そう話していることがある。
でも、Macを本質的に知っている人間であれば、
ただGUIを使っているからといって、両者が同等などとは思わないはずだ。
例えば、昨日もちょうど友人との話しにでてきたのだけれど、
文字と同じように、画面の左から右へ、上から下へと
視線の自然な流れにあわせたメニューなどの画面配置。
マウス操作でイジェクトしたフロッピーディスクが自動排出されるときのハードとソフトの一体感。
といった具合に、MacとWindowsでは、そもそも同じように見えるインターフェースの要素1つ1つについても、背後にある思想の深さが違う、ということに気がついているはずだ。
そして、そうした違いを生み出せるのは、アップルの製品が、単にエンジニアの思いつきだけではなく、背景に文化人類学者から言語学者、ソフトエンジニア、ハードエンジニアなど多くの知見を取り入れた上で、それを1人のマエストロが1つの、滑らかかつ、しなやかな作品に仕上げたからこそだろう。
直感型の天才と言われるスティーブ・ジョブズだが、彼が本当に凄いところは、
何か獲得したいこと、知りたいこと、得たいことがあれば、自分が、その分野のトップだと認める人に、直接、コンタクトを取り、会いに行って、深い話をし、相手の知識や考えを吸収し、咀嚼し、自分のモノにしてしまうことができることだろうーーこのために、ジョブズにアイディアを盗まれた、という人も大勢いるが、実はジョブズがアイディアを吸収した時点で、そのアイディアは、ジョブズの他の知見や、その知見に裏打ちされた直感によって新しい側面を持つようになっている。
初代Macから、iMac、iPod、iPhoneと時代を経るに連れて、ジョブズと知己を持つ人も増え、それにあわせてアップルの製品や戦略の奥深さは、他の会社の及ばない領域にまで達しようとしている。
冒頭で紹介したiMac DVが発表された10年前は、ソニーの盛田氏が亡くなられた直後で、
ジョブズも、ソニーへの敬意とあこがれを言葉にしていたが、
今ではソニーが大きな損失を発表する中、
コンピューター会社からデジタル時代のライフスタイルブランドに生まれ変わったアップル社は
Mac、iPod、iPhoneという3つの主軸製品を成功させた上で、4つ目の柱になる可能性を秘めたApple TVまで好調というオマケ付きで、大成功を収めている。
アップルをどん底から成功に返り咲かせたリーダーについては、その病状を懸念する声が止まないし、これは確かに大きな問題だ(実は同様に、アルマーニにとってもジョルジオ・アルマーニの後継者は悩みの種だろうと思って、最近、「アルマーニ」の本を読んでいる。ジョルジオも、ジョブズに近い直感型完璧主義のマエストロであるにも関わらず、生まれ育った家庭環境はまったく違っていることにちょっと驚いている)。だが、ジョブズが十余年にわたって見せてきた「アップル流」は、少なくとも今の世代のVPには浸透していると思う。
Palm社が「iPhone発のライバル」と呼ばれる「Pre」をつくれたのも、現Palm社CEOで、かつてはジョブズの右腕だったジョン・ルビンスタインに「アップル流」が伝授されていた影響が少なからずあるはずだ。
そう考えると、ジョブズが正式にCEOを辞任したとしても、少なくとも5〜6年は安泰なのではないかとは思う。
いずれにしても、今年はアップルにとっても、iPhoneにとっても勝負の年であり、何かパソコン業界と通信業界を巻き込んだ、大きなうねりを生み出しそうな年だと思う。
私もこれまでとはさらに活動範囲を変えて、新しいことに取り組んでいけたら、と思う。
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