危うきに遊ぶ

名人は危うきに遊ぶ」ではないけれど、今日は午後の打ち合わせの後、夜中の1時まで予定にしばられず、久々にのびのびとしてしまった。
 でも、おかげで、いい刺激をたくさん受けることができたし、直近の仕事に必要なアイディアや活力も得ることができた。
 改めて「休み」や「気分転換」は、重要な仕事の一部だと実感した。

denenchofu station

 「映像作家100人 2007」という本で、巻頭2番目に紹介されているWoWという映像プロダクションがある。超メジャーなCMのCGを手掛けている。なので、テレビのある家の人なら、必ず作品を目にしているはずだ(青山と仙台に、とっても素敵なオフィスがある)。

MOTION TEXTURE

 新しい試みにも果敢にチャレンジする、とてもクリエイティブかつポジティブな集団だが、日々の仕事のやり方にもちょっとしたおもしろい工夫をしている。
 例えば、追いつめられてから気分転換をするのではなくて、毎日の仕事に気分転換になりそうなことを組み込んでしまおうと「Book Relay」というのを実践している。勤務時間の5%、朝の15分間、デスクを離れてそれぞれ好きな本を読むというのだ。気になった文章をメモして、あとで社内のデータベースに登録するという。クリエイティブ・ディレクターの鹿野護さんは、「これが意外に頭がすっきりする」という(このあたりの話しは、1号古いMac People2007年 04月号のbossa macというコーナーで紹介させてもらった。あのデジタルステージの仕事スタイルも取材して、紹介させてもらったが、ここのやり方もおもしろい)。


これと比べると、今日の私の気分転換はずっと無計画。

打ち合わせの後、先月から行きたいと思っていて、なかなか行けなかったお店、「Winged Wheel」に足を運んだ。
 実は引っ越してから、あまりに忙しくて、まだ引っ越しの案内も作っていなければ、新しい住所の名刺もつくっていない。ただ、どこで名刺をつくるかだけは、だいぶ前から心に決めていた。このWinged Wheelだ。

Winged Wheel

 以前、EZナビウォークを使って、青山のNaDiffからワタリウムまで近道をする途中で遭遇した。

 結婚式の招待状から、席次表、レターヘッドから封筒まで、あらゆるステーショナリーやカード類をカスタムでつくれる。紙の種類も豊富で、デザインもどこかエレガントで美しい。。
 日本でも「通」の人は知っているようだが、何故かそれほど話題になっていない。
 この遭遇以来、「いずれ、ここのお店で何かをつくりたい」と思っていた。

 引っ越し後、しばらくして、イギリスの雑誌の「I.D.」(だったかな!?)を見ていたら、世界の主要都市「行くべきお店」という特集をやっていて、その中で、このWinged Wheelが紹介されていた。
 これを読んで、「そういえば、まだ名刺をつくっていなかった。ここでつくろう」と思い立った。


 ここ数週間は、仕事でくじけそうになると、Winged WheelのWebページを開いては「和紙もいいな」とか「やはり、エンボスを入れたい」、「名刺とあわせたレターヘッドもつくりたい」とか「同じパターンで数色用意して配るときに色を選んでもらおう」と、想像を膨らませては楽しんでいた。でも、欲しいデザインばかりで、どれにするか、ぜんぜん決まらない。

 これは店に行くしかないと思い、打ち合わせの帰りに途中下車をして2度ほど足を運んだが、お休みだった。今日、ようやく念願がかなった。

 もっとも、店に行ったのも失敗で、現物を目にしたら、ますます悩んでしまった。
 
 この店、楽しすぎる。


 結局、ちゃんとした名刺は、もっと時間をかけてステーショナリーとセットで発注することにして、とりあえず今日のところは、遊びっぽい名刺をつくることで落ち着かせた。今から仕上がりが楽しみでならない。


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 Winged Wheelを十分、満喫したことだし、本来は、ここで、すぐに帰宅して、仕事に向かうべきだが、この1週間に貯まったフラストレーションが、なかなかそうはさせてくれなかった。

 とりあえずはechikaSoup Stock Tokyoに、腰を落ち着け、メールをチェックしたり、インスタントメッセンジャーで2〜3件の打ち合わせをしていた。

 そこで友達とチャットをしたのがきっかけで、骨董通りの「Suite Zero」に、かつての仕事仲間を訪問しにいくことになった。

 まずはお互いの近況を話して、最近、考えていることへと話しが進んだ。

 「この歳だし次の世代への責任も感じるし、やっぱり、何か地球というか、未来のためにいいことがしたいよね。」

 彼は田舎にログハウスをつくって、星空の下でたき火をしながら、子供と一緒に宇宙について、地球について語れる素敵な人間だ。私は、それにあこがれつつ、きっと誘ってもらっても、傍観者モードで薪を集める手伝いしかできないタイプ。

 それでも、彼の話すところには共感するところがいろいろあり、学ぶこともいろいろあり、いいインスピレーションをたくさんもらった。

 会話がいっこうに尽きないので、話題には出さなかったが、実は彼との話を進めながら、ちょっとしたアートプロジェクトを考えていた。

 「地球に対して何かをするにしても、あまり押し付けがましいやり方はしたくないよね」という話しをしたのだが、そこから「Think the Earth」の話しに飛んだ。

 Think the Earthの上田壮一さんは、私が大好きな人物の1人だ。彼と、話しをすればするほど、彼の根本にある欲求は1つのところに回帰していくのを感じる。
 彼が小さい頃に衝撃をうけた「宇宙から見た地球」だ。

 宇宙から地球を客観的にみれば、押し付けがましいことを言わないでも、自然と地球に対して、何かしなければならないだろうという思いがわいてくる、これが私が理解するThink the Earthの原動力だ。

 私自身も非常に共感できる部分だが、実は「未来の地球」について考えさせる原動力はもう1つある気がしていたーーそれは「子供」だ。

 Suite Zero代表の友人も、地球についていろいろ考えるようになったのは「姪っ子(甥っ子?)」の成長を目にするようになってからだという。

 世の中、やたらとネガティブなことをいったり、街中でも身勝手に振る舞う人が多いけれど、自分が子供を持つ身になっても果たして本当にそう振る舞うのだろうか。
 

 ちょっと前、「子供をしかる大人がいなくなった」と話題になったが、実は今の世代の大人は自分も含めて「誰かにしかってもらわないと、ちゃんとできない人が多い」ような気がする。

 友人と話しをしながら、今の大人を、影でそっとたしなめることができるのは、案外、子供の方なんじゃないかと思った。

 そこで、ちょっと思いついたのが、「東京のそこかしこに、子供の気配を感じさせるパブリックアートを置いたら、おもしろいんじゃないか」というアイディアだ。自分では、どうにも実行できそうにないので、誰か同調して、実践してくれることを密かに期待している。

 今の世の中は、非道い事件が増え、荒んだ話しをよく耳にする。

 でも、これって利益ばかりを優先させて、クリスマスになっても子供と楽しめる場所よりも、大人のカップルが楽しめる場所の方が優先されるような社会づくりにも、少なからず関わっているんじゃないかと、ここ数年思っていた。

 もし、いつも身近に子供の気配を感じていたら、もう少し思いやりのある社会にしようという責任感が芽生えるんじゃなかろうか。もう少し、美しい街づくりをして、お金以外の大事なものに重きをおけるようになるんじゃないか。


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 Suite Zeroでの会話を楽しんだ後、drikin.comと、合流できないかと携帯メールを送ったが、どうやら会社の出産祝いに行ってしまったらしい。

 時間も時間で、お腹もすいたので1人食事をしようかと思っていたら、目の前から知り合いのYさんが...
 これまで表参道ヒルズの内覧会や、(この記事の冒頭で触れた)WoWのイベントで、バッタリ会ったり、アップル社のWWDCであったりと、やたらと縁があったが、あまりじっくり話す機会がなかった人物。

 しばらく立ち話をしていたけれど、そのまま「夕食に行きます?」ということになり、彼のお勧めの中華レストランへ...

 Macのサーバー・システムの構築経験が豊富で、めちゃくちゃ細かいノウハウをいろいろ持っている方で、話しを聞けば聞くほどおもしろい。
 しかも、Macだけでなく、他のサーバーでのシステムにも精通しているので、ちゃんとバランスの取れた視点で、考察を聞かせてくれた。

 彼の話しを聞いて、日本の教育機関や企業でも着々とMacのシステムの導入が進んでいる話を聞いて安心する気持ち半分、まだまだ課題も多いな、と改めて感じるところ半分。Yさん、大変、勉強になりました!

 Yさんとの話しで1つうれしかったのが、自分のルーターの選択が間違っていなかったこと。
 私も自宅にMac OS X "Tiger" Serverを導入して、いろいろ取引先とのやりとりをしている(関係者の方々、スミマセン。引っ越し後、まだ復旧していません)。ブロードバンドルーター+ダイナミックDNSの環境で、サーバーを運用しているが、実はここでブロードバンドルーター選びが、かなり大きなネックになった。私なりにいろいろ試行錯誤をして、ルーターはLinksysがベスト!という結論に達していた。このことを話すと、彼もニヤリと笑って、その選択が正しい理由を再確認させてくれた。
 
 楽しい話をするのは危険だ。気がつくと時計の針は23時を回っている。
 と、そのタイミングでdrikinからCメールが届いた。「今、表参道」。

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 急遽、表参道で合流することになって、Yさんをdrikinに紹介して、そのまま自宅の最寄り駅を通り過ぎて、終電後の洗足池へ。

 今週、1週間、drikinとぜんぜん、タイミングがあわず、インスタントメッセンジャー/Skypeでも、ぜんぜん話ができない。いろいろ決めなければならなかったことを、決めて...(決めようと思ったら、私のMacBookのバッテリーが切れて、決められなかった)。

 その後、お互いの近況の話しから、プログラミング環境の話しなど、いろいろ。
 やはり、drikinのアンテナと感性も、素晴らしいな。いい刺激になりました。

 というわけで、今日は書き物の仕事はぜんぜん、進まなかったけれど、非常に多くの刺激を受けました。明日、以降の仕事にも、目に見える形、目に見えない形で、成果が出せそう。

 私も、これから週の5%くらいは、仕事時間に気分転換を組み込むことにしようかな...


P.S.と、まあ、こんな感じで、大変、気持ちよく帰って来たのだけれど、帰宅してMacBookの電源をいれると、nobilog2に64件のコメントSPAM.... 普段だったら、ちょっと落ち込んじゃいそうだけれど、今日がいい日だったから、なんとか落ち込まずに1件1件チェックして、削除。スパマーの人達には、ぜひ1度、今、自分がやっている仕事が子供達や親に堂々と言える仕事なのかじっくり振り返ってみて欲しい。その素晴らしい頭脳を、もっと自慢できることに使って欲しいと思う。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2007年03月30日 | Permalink

  • Re: 危うきに遊ぶ


    Linksysが良い理由がとても気になります!

    投稿者名 kiyoshi

  • Re: 危うきに遊ぶ


    Mac OS X Server+DynamicDNSで、サーバーを立てた場合(大きな会社ならこんなことはしないでしょうが、私のところみたいなSOHOなら結構、あることだと思います)に限定した話しかもしれません。
    私の方では、たくさんある理由の1つしか説明できませんし、それによって起こる現象の側しか説明できませんが、こんな感じです。

    例えば、Mac OS X Serverを123.456.dyndns.orgというアドレスで運用していたとします。
    多くの日本製ルーターの場合、LANの外から、このアドレスを入力した場合は、すぐにサーバーにつながるのですが、LANの内側からこのアドレスを入力すると、エラーになってしまい、アクセスできません。

    LANの内側から、サーバーにアクセスする場合は、サーバーのアドレスをサーバーのローカルIPアドレス(例えば192.168.1.x)で指定しなければならないのです。

    最初はLAN内からアクセスする場合は、例えば「http://192.168.1.x」のようにローカルIPアドレスでアクセスすれば、それで済むと思っていたのですが、

    ここで、Mac OS X Serverを、標準の簡単な方法で設定した場合、ブログ機能やメーリングリストなど、さまざまな機能に用意されているURLが、(例えば1個上の階層といった形で)相対的なURLで指定されていればいいのですが、ドメインを含めた完全なURLで指定されていることが多いため、いろいろと破綻が起きてしまいます。

    GUIのツールに頼らず、細かく、自分で設定をいじれば、問題はなくなるのですが...

    もっとも、このあたりファームウェアで解決できる問題だと思うので、もしかしたら最近の日本製ルーターは大丈夫なのかもしれません。

    私は家庭内にサーバーを立てた当時はNTT-MEのルーターを使っていて、その後、数種類のルーターを試しても、どれもダメで、昔使っていたLinksysを試したら、すんなりうまくいったため、光ファイバー化にあわせて最新のLinksysに切り換え、それ以来、他のルーターは試していません。

    投稿者名 nobi

  • Re: 危うきに遊ぶ


    そういう事ですか。わかりやすい解説、ありがとうございます。
    参考になりました。

    /private/etc/hostsあたりの設定をいじればいけそうな気がしますが、Macが多くなってくると面倒ですね。

    投稿者名 kiyoshi