日本版人物検索は世界に根をはれるか!?

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「SPYSEE」という日本語の人物検索サービスが始まっていたようだ。

試しに自分の名前を入れて検索してみると、お馴染みの(そろそろ変更したい)プロフィール写真と過去に著書や過去に書いた記事、そして関連のある人物がグラフ形式で表示された。

SPYSEE: 林信行
ちょっと気になるのが人物を特定するURLの中に、人名を埋め込んでしまっている点だ。
同姓同名の人はどのようにハンドルするのだろう?

「Google Mapで広まった地図検索につづく、次なるビッグウェーブは人物検索ではないか?」
ちょうど1年くらい前、そんなことが話題に上った。
Tim O'Reillyも'07年4月のWeb 2.0 ExpoでデビューしたSpockをしきりに宣伝していた:

林信行のマイクロトレンド 第7回:地図の次は“人”──進化する検索

インターネット上のさまざまなサービスを、最終的にマネタイズしようとしたり、
実際にユーザーの間に定着させようとする時に、実は大事なのがいかに実生活/リアルの世界と関わりを持てるか、だと思っている。

Google Mapに代表される地図検索は、リアルの地理情報との対応があり、
それだけに利用者が表示される広告に抱く関心も高く、ビジネスとしての今後に期待ができる
(まだ地理検索向けの広告の出し方には工夫が必要だと思うが)。

それと同様に、まだ人物検索や時間検索もリアルとの関わりを築きやすい。
時間検索に関しては最近、ある大御所がビジネス化を考えていると話していると語っていた。実は私も以前から考えていた。
これはあれば非常に便利な技術であり、重要な技術でもあると思うが、マネタイズは難しそうだ。

一方、人物検索であれば、その人の著書やその人に関わる文献、あるいはその人が関わった作品やコンサートチケットなど広告的なものにも結びつけやすい。

また、今後、あとどれくらいかかるのかはわからないが、ジワジワと大きくなっていきそうなソーシャルグラフやオープン化時代のSNSといったものが広がる時代においても重要になってくるんじゃないかと思う。




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さて、SPYSEEの話しに戻そう。

自分を検索した結果を見てみると、
古川(享)さんを差し置いてビル・ゲイツと直接つながっているのは、
以前、CNetでビル・ゲイツ来日の記事を書いたことがあるからだろうか?
こちらは名前を知っているが、向こうは知らないんじゃないか?という有名人が他にも表示された(梅田望夫さんや佐々木俊尚さん)。中でも一番、わからないのがオラフ・トーンで、一体、私とどういう関わりがあるのかが、気になってならない。

もっとも、こうした情報は、今後、精度を向上させていけば解決する一時的な問題で、
これを理由にSPYSEEの将来性をどうこういうつもりはない。

一方で、日本語中心のサービスであることは、果たして本当にそれでいいことなのか疑問がつきまとう。

もちろん、日本の情報を充実させたいのであれば、日本語オンリーにした方が、初速はつきやすいが、ぜひその影で、国際展開もしっかり考えていて欲しい。

これまでになかった新しい製品、サービスを生み出す際には、
技術としての真新しさや革新性も大事だが、
いかに世の中に根を張れるかも重要な要素だと思っている。
その上で、国際展開は無視できない要素だ。

例えば伊藤穣一さんのような国際的に活躍している人の情報であれば、
その人の海外でのつながりが見えない部分で、情報としての価値が半減してしまう。
またそうでなくてもサービスとして、もしかしたら日本ではダメだけれど、海外で成功して、
その後、海外で話題になっていることが原因で、日本に逆輸入されるケースだってある。

iPhoneのApp Storeが、ソフト開発者にとって大きなビジネスチャンスなのは、
累計出荷台数ももちろん関係あるが、世界62カ国(現在はまだ世界22カ国、今日からフランスも加わったはずで、今、日本でiPhoneが欠乏しているのは、フランスの立ち上げに備えてのことだろう)で、展開することによって、日本では廃れてしまったソフトでも、海外で根を張れる可能性があるからだ。

よくソニーのコンピューターサイエンス研究所の北野宏明氏が生物のrobustnessについて講演をしている。なんとかという無視は、フリーズドライ状態になっても、一滴ほどの水があれば生き返れるであるとか、人間の身体の中の細胞をバラバラにしてDNAを調べると、全DNAのうちの95%までは、種類豊富な腸内細菌のDNA、その人固有のDNAはほんの5%ほどしかなく、この腸内細菌の多様性が、我々の体を守ってくれている、といった話しだ。
 何かが失敗しても、他の何かがとっかかりになって、生き残る術をつくってくれる。

nobilog2: 多様性が魅力のTHE NEW CONTEXT CONFERENCE開催

 ベンチャー企業の戦略においても、アイディアの用途やビジネスモデルは、1通りに限定せず、常に最大限の可能性に道を開いておき、製品の便利さを語るストーリーも何通りも用意しておくことが大事だろう。

 国際対応は、この多様性のメリットを、もっとも手軽かつ効率的に取り入れる手法の1つだと思っている。

 最近、SPOCKがパッとしない当たりを見ると、人物検索の時代は、もしかしたら、まだまだもう少し先なのかな?という気もしないでもないが、ぜひSPYSEEを開発している方々には、視線を世界に向け、世界で根を張れるように頑張って欲しいと思う。

 宣伝になるが、私が現在、アドバイザーとして関わっているあの会社も、まもなく新たにアドバイザーに就任する別の会社も、日本のベンチャーではあるけれど視線は世界に向いている。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月17日 | Permalink