ドコモとかろうじてつながる
年明け早々、風邪をひいて寝込んでしまい、2日半を無駄にした。さすがに60時間寝通しはできないので、療養中は携帯電話が友達だった。初めて携帯電話の電子本というのも読んでみた。先日、飲み会で話題になった「博士の愛した数式」を1日で読破。
「字のジャギーが目立つ」、「この当たりボイジャーならもう少しこだわりそうなのに」、そんな不平を頭の中でつぶやきつつも親指だけで読める本という新しい体験は決して悪いことばかりではない、何よりも今、何%読んだかが下に表示されるのが、達成感をあおって、読書がどんどん進んでいく。
病み上がり、Expoへの出発があまりにも直前に迫っていて焦った。
まず最初に行ったのはiChatを使った同行編集者との打ち合わせ、そして気分転換の外出も兼ねた成田エクスプレスチケットの購入だ。
今、成田エクスプレスなどの特急券はJRの駅の券売機で、クレジットカードを使って購入できるのをご存知だろうか。あれは非常に便利だ。ただし、ユーザーインターフェースには、かなり改善の余地がある。
2つの異なる電車を比較したりする手順が非常に面倒で、結局、最初からキャンセルしてやり直すことも多い。
もっとも、Undoのしづらい一直線なインターフェースは、機械が苦手な人にはかえってやさしいのかも、とも少し感じる。操作がわからず、係員が世話をするコストも考えると、機械が得意な人の贅沢な要求につきあうよりは、あれで正解なのかもしれない。
さて、成田エクスプレスのチケットを買いに行くだけでは、もったいないと、もう1つ用事をつくることにした。
長年、放り出していたNTTドコモの携帯電話の解約だ。
仕事柄、携帯電話は全キャリアを制覇していた。QuickTimeのMPEG-4対応にあわせ、悪友に勧められるがままにFOMA携帯を買ったのがすべての始まりだった。
それから海外でも同じ端末で使えるVodafoneのサンヨーW-CDMA+GSM端末を購入(ロンドンでVodafone携帯を使うことが多かったので、日本のVodafoneがどんなものか試してみたいのもあった)。
auは欲しい、欲しいと思いながら2種類の携帯電話を持ち歩くことはできないと、自制してきたがFOMAを勧めた悪友がauを買わざるを得ない仕事に誘ってくれたおかげで、念願のカシオ携帯を初めて手にする。「W21CAII」、かなり遅れてのカシオデビューだったが、数カ月後からは日本で持ち歩く携帯電話は1本だけになった(海外ではVodafone、この頃にはiSyncに対応したNokiaに機種変更していた)。
FOMAはたまに検証で使い、たまに機種変更も検討したが、心を動かされる機種とタイミングよくであうことができなかった。ただ、かなり大量の名刺に、この電話番号を刷っていたため、番号を捨てることができない。そこで最低1年半近くは充電もしないまま電話の転送だけを続けてきた。
何度か「解約」も考え、DoCoMoショップに足を運んだが、「解約」といったとたんに突然、怪訝な顔になり、「あっち」と指差す先には、長い行列。とても、「買い物のついで」にできる作業ではなく、飛び込みの歯医者と同じくらいの待ち時間は覚悟しなければなさそうな雰囲気。
だが、昨年、ナンバーポータビリティーが始まったとき、FOMAの番号で他社の携帯電話を1本増やす(例えばスマートフォン)ことも考えたが、新しい携帯電話を買うなら新規購入の方が安いし、「解約した方が得かも」と決心が固まっており、昨日がいよいよその日となった。
しかし、昨日の訪問したDoCoMoショップはどこか雰囲気が違った、「解約」といっても「あら、そうですか」といった感じで意に介す雰囲気も無かった(MNPでマインドセットが変わった?)。待ち時間は予想通り長かったが、担当の女性は嫌な顔1つせず、FOMAとまだ持ち続けていたPHSの解約作業を進めてくれた。
もちろん、今、「〜〜ポイント残っていますよ、新規種購入に使えます」という説明はあったし、「今、PHSを持っていると新機種が2万円引きで買えて、これはかなり得だ」という説得はあったが、断ると嫌な顔一つせず作業に戻る。
優柔不断な私は、解約の作業を進めてもらいながらも、相手が話しかけやすい人だったので「hTc Z」などのビジネス携帯/スマートフォンなら興味があることなどを話した。「ビジネス携帯の場合は2万円の割引はできないですが1万円なら」(女性)。手際よく作業しながらの答えが返ってきて、丁寧に資料も見せてくれる。
そのうち、FOMAを解約して、たまったFOMAポイントでアクセサリーを購入し、PHSを月額1000円位の最低プランで維持すれば、hTc Zやそれ以外のFOMA携帯が欲しくなったとき1〜2万円引きで購入できる。
今からだと10回も支払わないうちにドコモのPHSは自然消滅する、という結論に達して、FOMAは解約、PHSは最低料金で維持という結論に達した。
こうしてドコモと完全決別の思いでドコモショップに足を運んだ私だが、実際にはドコモとの細いつながりを保つことができた。
「仕方がなく」とか「押され負けて」とか、そういう雰囲気じゃない。
やっぱり、大事なのは人なんだなぁ、というのが正直な感想。
あの女性が担当でなければ、あるいは以前にいった別のドコモショップに行っていたら、勢い余ってPHSも解約していたと思う。
ドコモとの細いつながりの、使う予定の無いPHSが、いずれHSDPAの新端末に代わり、そこからドコモとの縁が再び濃くなる日に発展するかもしれない。とりあえずはhTc Zに期待かな。
今回の話で、実は「人」 以外でもう1つ重要なのが「思い出」かもしれない。プラスチックとシリコンからできた無機質な機械だが、携帯電話やPHSは、既にそれだけの思い出を抱く存在として我々の生活に染み付いている。
シャープも携帯電話はあまり好きになれなかったが、PHSの端末は1台1台すごく深い思い入れと思い出がある。
一体、何世代乗り継いできたのか思い出すのが大変だが、一時期、モバイルユーザーにとってシャープ製PHSを使っていることは「通」の証しだったように思う。
最初の頃は余計なアダプターを持ち歩かずに、PCカードスロットにそのままさして使える利便性で、モバイラーを魅了した。
その後は、まっさきにBluetoothに対応し、電話機を鞄の中にいれたままインターネット接続する快感を教えてくれた。
drikinが月に1回、開催するブログディナーでも、レストラン側にADSLが惹かれるまでは、ドコモのPHSがインターネット回線だった。
さらに「通」なのがパナソニック製の家庭用電話機を併用していること。
パナソニックの一部の電話機は、PHSを子機登録できるのだ。
これが便利なのだ。
何が便利かというと1台の端末で、家庭用電話宛の着信も、PHS宛の着信、どちらも受けることができる。
最初は不格好な電話が多くて、大きな妥協を迫られたが、やがてちょっとは見栄えのする電話機も登場し始めた。
NTTパーソナルがNTTドコモに統合された時には、他のPHSユーザー同様にショックを受け、ドコモのPHSサービス終了の発表には打ちのめされた。
もしかしたら、私がドコモと聞くと身構えてしまうのは、この当たりにも原因があるのかもしれない。
DoCoMoショップに置かれていたカタログには、古い端末やサービスも乗っていて懐かしくなってしまった「@FreeD」ーーそういえばそんなサービス/端末もあったな、とか...
いずれにせよ、こうしてFOMAは解約したが、PHSはいま暫く形だけ手元に残ることになった。
家族もこのPHSには愛着があるようで(auの子ども携帯を買うまでは、子どもに私のPHSを持たせていた)、解約しなかったことを責められはしなかった。
auのカシオ携帯は大好きだが、思い出の点ではドコモのPHS(というよりはNTTパーソナルのPHS)は、それを上回るのかもしれない。
NTTドコモは今年第3四半期をメドにPHSサービスを終了する。