iPhoneで、いい汗を流そう

iPhone launch Softbank Omotesando

最近、私も忙しいが、周りの人達も、皆、いい意味で忙しい。

以前、紹介した気になったら、その場で調べられる「マイ注釈」挿入ソフト「popIn」も、
その後、頑張ってメニューにwikipediaの機能を加えたり、以前からさまざまなところで話しているiPhone対応に向けて頑張っている(と、同時にわかりにくかったホームページも大改築中だ)。

小川浩さんの会社、MODIPHIもiPhone対応版を発表し、結構、好評を博しているようだ。

CloseBox and OpenPod: iPhone版MODIPHIが「だら見」に最適な件

iPhone対応アプリケーションを総覧できる「日本製iPhoneアプリ開発者リスト」も、
皆、仕事の合間の息抜き時間をつくって片手間ながら少しずつ情報を追加してくれている。
このwikiを提供してくれたConfluence Japanも、
今日は新たにRSSフィードを用意してくれたほか、
現在、iPhoneに最適化した1カラム表示に向けての改築を進めてくれている
(通常業務をつづける傍らで)
この改築が完成したら、popInのiPhone版やMODIPHIのiPhone版などの優れたWebアプリケーションやブックマークレットなんかも、wiki形式で紹介できればと思う。


ライター仲間も、みんな大人しい。
おそらく今月末くらいから大量のiPhoneムックや書籍が登場することだろう。
(私もそのいくつかには関わっていく予定だ)。

なんだか、iPhoneの登場で、
大勢の人がこれまでつづいていた惰性の仕事の延長ではなく、
「どうせiPhone関連の仕事をするなら、ここをこうして... いや、もっと、こんなことまでできるかも...」と創造力とクリエイティビティを発揮していい仕事に汗を流しているのを感じる。

みんなやっていることは違っていて、
周りが何をやっているか見回す余裕もなく、打ち込んでいる雰囲気が伝わってくるが、
それでいて、どこかでライバル達とも一体感であるとか連携感みたいなものを感じている。

実にいい雰囲気だ。
iPhone launch Softbank Omotesando

マスコミがあまりにiPhoneの話題ばかり取り上げるので、面食らっている人も多いのはわかる。
私はiPhoneは好きだが、iPhoneだけが素晴らしいというつもりはなく、
日本の携帯電話メーカーも素晴らしいポテンシャルをもっていると思っている。
今日もKDDI Design Studioで行われるイベントで、
もし話しがそっちの方向に行ったら、
auの最新サービスは、もしかしたらアップルのデジタルハブを超えているかもしれない、
という話しをしてくるつもりだ。

ただし、その一方で、そうしたサービスの使いやすさにこだわったつくりこみが足りないとは思っている。
せっかく技術力はあっても、それを活かすものづくりができていないことは問題と思っている。
今の日本のメーカーの多くは、
とりあえず、どうしたらいいんだろうと議論を重ね、
「とりあえず、音符を間違えずに最後までひけました」というものづくりはしているが、
人々に感動を与え、楽しいインスピレーションを与えるものづくりはできていない。
(アップルは、多少、演奏は間違えても、そこはなんとかカバー、
 その代わり人々に伝わってくる感動とか、そういった部分で勝負するものづくりをしていると思っている)。

もし、日本のメーカーが、こうしたアップル流に近い、ものづくりの術を身につけることができたら、
鬼に金棒だと思う。
iTunesやApp Storeといった生態系づくりは、一朝一夕にはできないかもしれないが、
それでも、そうした生態系に関係なく生きている多くのユーザーにはかなり協力にアピールできるだろう。
それも日本市場だけでなく、世界というiPhoneやNokiaが戦っているのと同じ広い市場で。

私はそう思うからこそ、昨年から精力的に講演や執筆活動をつづけさせてもらっている。
iPhoneショック 」も、そもそもそういう思いから書いた日本メーカー向けの応援歌のつもりだ。

しかし、本当はそうなれるはずなのに、会社の組織構造的問題であったり、
コミュニケーションの足りなさであったり、そういったものが原因で、
日本のメーカーでは、エンジニアやデザイナーが、
いい汗をかきたくても、かけない状況に置かれていることが多い。
これは残念なことだ。
もし、あなたが日本のメーカーの人間で、このような問題を感じているのであれば、
全力をかけて上司の説得に当たってみた方がいいだろう。

それで耳を傾けてくれないような会社なら、
そこはあなたの人生をかける会社に値しない会社なのかもしれない。

アップルは確かにいい製品をつくっているが、
それにはもちろん、スティーブ・ジョブズの有能さ(特に社員から100%を超えた300%くらいの力を引き出す能力の凄さ)もあるが、それと同時に、やはり各社員が、開発中の製品に、半ば命をかけるくらいの覚悟でとりくんでいるというのもあると思う。
これからのものづくりは命がけだ(その代わり、だから終わった後には休暇を含めた報償も必要だ)。
そうでなければ世界で勝負はできない。

iPhoneが騒がれ過ぎだからといって、
今度はその反動で、iPhoneの欠点ばかりを、探してあげている人がいる。
確かにiPhoneには欠点と言えるところもたくさんある。
ブログで注目を集めたい一般のコンシューマーだけなら、そうした話題をとりあげるのもいいだろう。

しかし、ぜひメーカーでものづくりに携わっている人には、
そうした議論に関わって欲しくない。
ライバルの悪いところをみて「だから、俺たちはこれでいいんだ」という議論は何の足しにもならない。
むしろ、本心ではiPhoneがダメだと思っていても、
「いや、みんながiPhoneが凄いといっているのは、ここの部分かもしれない」と無理して
iPhoneのいいところを見つけて、それに負けないものづくりに励んで欲しい。

IT業界にとっても家電業界にとっても、
滅多にない機会なので、これまでのものづくりや仕事の姿勢を見直して、
みんなでいい汗をかけるように変化していければと思う。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月16日 | Permalink

  • Re: iPhoneで、いい汗を流そう


    確かに欠点をあげていくだけであれば、誰でもできる。しかし、その欠点をカバーできるほどの利点が大きな波として押し寄せていることをメーカーの人たちには感じてほしい。正直、今のままのキャリアでは後数年で息切れしてしまう。何のために、誰のために春、夏、冬モデルという季節ごとに端末を一斉にモデルチェンジして出す必要があるのか? 夏だから防水機能を強化したモデルをラインナップにあげるのか? だったら他の季節はそのような機種はいらないのか? キャリアの思いつきで作らされたトランシーバのような機能・・・。そんな機能今誰が使っているのか? 8年ほど前、あまり人気がなかったが、未来を感じさせたauから初めて携帯というのを使い、iPhoneが出るまで使い続けたが、昨年1年間何の進化もせず、形だけ料金体系を変化させ、ここ最近何の魅力も感じなくなったauに見切りをつけ、メインの携帯をiPhoneにかえた。既に息切れした端末メーカーの撤退や合併が相次ぐ中、良いタイミングでiPhoneは販売されたと思う。少々、メディアに踊らされて本来iPhoneのユーザになるべきでない人まで購入してしまった感はあるが、これからよい方向へ進んでくれることを望むだけだ。

    投稿者名 ゆきち