多様性が魅力のTHE NEW CONTEXT CONFERENCE開催
今日からTHE NEW CONTEXT CONFERENCE 2007がスタートした。
これは個人的に国内で開催するIT系イベントの中で、もっとも楽しみにしているイベントだ。イベントは26日(水)、いっぱいまでやっており、当日参加の枠も少しはあるようだ(Web業界のビジョナリーが講演する26日のセッションスケジュールはこちら)
Created with Admarket's flickrSLiDR.
NEW CONTEXT CONFERENCEというと、昨年、日本で大きな話題になる前にセカンドライフやLast.fmを紹介したイベントでもあるが、私がこのイベントを気に入っている最大の理由は、情報を先取りしたいからではない。他のIT系カンファレンスに違い多様なテーマを扱っているからだ。
例えば昨年のカンファレンスでは、パネルの1人としてブラジルの文化庁デジタルカルチャー部門コーディネーターのClaudio Prado氏が名前を連ねた。
今年のオープニング基調講演もソニーコンピュータサイエンス研究所取締役副所長の北野宏明氏が「ネットワーク・イノベーションのビジョン」というタイトルで、生物の免疫システムなどのしくみとネットワークルーター、人気Webサイトなどの相似性についての話をした。
いきなり途中から参加した人の中には、「なんでITのカンファレンスで生物の講義を受けなければならない」と疑問に思う人もいるかもしれない。
しかし、実はこれこそが重要なことなのだ。
一見関係のないようなテーマに類似性が潜んでいる事は意外に多い。そして、そうした他のパターンを学ぶ事が、いろいろな場面で、思わぬヒントを与えてくれる事がよくある。
世の中のあらゆるものごとは意外なつながりを持っている。
例えば最近、多くのWebデザイナーが注目する黄金比は、オウムガイの形とも類似性がある。
SNSでの人のつながりや脳内ネットワーク、航空網、河川の形状といったものにも類似性がある。
世の中、一見関係ないようでいて、実はものすごく関係が深いものが多い。
もしかしたらゴルフのゲームを通して人生論を語ったり、歴史物の戦国武将やアメリカンフットボール/プロ野球の監督の行動を見て企業のリーダーシップを語るのも、これと通じるところがある。
いくら話をしても、なかなか答えが出ないディスカッションが、まったく違うバックグラウンドを持つ人のひとことで、あっさり解決、ということだってある。
解決に至らないまでも、自分とまったく異なるバックグラウンドを持つ人が、その人なりのフィルタを通して意見を述べてくれる事で、それまで見慣れたものが、まったく別のものにみえてくることはよくあること。
おそらく、これまで関係ないと思っていた事が、頭の中で結びつき、新しい回路(ネットワーク)が生まれる事で、人間は少し賢くなるのではなかろうか。
今日のカンファレンスで伊藤穰一さんが紹介していた「The Difference: How the Power of Diversity Creates Better Groups, Firms, Schools, And Societies」という本がおもしろそうだ(実は彼は同じ本を「Mozilla24」のパネルでも紹介していた)。本の中では、問題の解決方法について1人の専門家に聞くよりも、素人の集団に聞いたほうがいい回答にたどり着ける事が数学的にも解説されているという。
大抵のIT系カンファレンスは、IT系の人々が中心だ。毎回2〜3社新しい参加者がいて、古株の大手が2〜3新発表をしてくれるので、IT系業界の中では根を張る議論ができるかもしれない。しかし、インターネットに精通していない一般消費者にも深く浸透させたい技術やサービスについて語るのであれば、もしかしたら、アーティストや百貨店の経営者など、ITと関係ない人の意見や視点ももらえたほうがいいのかもしれない。
ちなみに北野先生の話によれば、人間の腸の中には、脳の重さと同じくらいの腸内細菌がいて、人間の身体の中の細胞をバラバラにしてDNAを調べると、全DNAのうちの95%までは、種類豊富な腸内細菌のDNA、その人固有のDNAはほんの5%ほどしかないらしい(このあたり、もし、私の理解が間違っていたら、誰かコメントで訂正して欲しい)。こうした腸内細菌の多様性が、我々の身体を守っているのだろうか。腸内細菌を取り除いたラットは、すぐに死んでしまうとい話だった。
日本の社会で暮らしていると、プライベートの時間があまりにも軽視され、常に仕事に追われてしまいがち。そして、追われた生活を続ける事で、自分の将来の糧となる自分の中の多様性が制限されてしまう。
そう感じている人にとって、THE NEW CONTEXT CONFERENCE(コンカン)は、ちょっとしたバランス系サプリのような役割を果たしてくれるーーまったくITに関係のない話ばかりだと、参加者が自分の頭の中で、話をつなぎあわせなければならないので大変だが、「コンカン」では、例えば北野氏の話にしても、生物の話をしながら、それをWeb 2.0やLongtailといったIT系の話題に結びつけながら話してくれるのもいいところだろうーーちなみに多様性に富んだイベントといえば、先日、行われたMozilla24もなかなかよかった。
THE NEW CONTEXT CONFERENCE、今年はかなり参加者も増えていたようで、パーティーも大盛況だったが、万が一、今年逃した人は、ぜひとも来年こそは参加して欲しいと思う。
ちなみに、私は今回のイベントの様子を「All-in-One INTERNET magazine 2.0」でレポートする予定だ。記事の掲載は、もう少し先になるかも知れないが、ぜひとも読んでみて欲しい。
以下、この話にやや関係がある話題:
これは個人的に国内で開催するIT系イベントの中で、もっとも楽しみにしているイベントだ。イベントは26日(水)、いっぱいまでやっており、当日参加の枠も少しはあるようだ(Web業界のビジョナリーが講演する26日のセッションスケジュールはこちら)
Created with Admarket's flickrSLiDR.
NEW CONTEXT CONFERENCEというと、昨年、日本で大きな話題になる前にセカンドライフやLast.fmを紹介したイベントでもあるが、私がこのイベントを気に入っている最大の理由は、情報を先取りしたいからではない。他のIT系カンファレンスに違い多様なテーマを扱っているからだ。
例えば昨年のカンファレンスでは、パネルの1人としてブラジルの文化庁デジタルカルチャー部門コーディネーターのClaudio Prado氏が名前を連ねた。
今年のオープニング基調講演もソニーコンピュータサイエンス研究所取締役副所長の北野宏明氏が「ネットワーク・イノベーションのビジョン」というタイトルで、生物の免疫システムなどのしくみとネットワークルーター、人気Webサイトなどの相似性についての話をした。
いきなり途中から参加した人の中には、「なんでITのカンファレンスで生物の講義を受けなければならない」と疑問に思う人もいるかもしれない。
しかし、実はこれこそが重要なことなのだ。
一見関係のないようなテーマに類似性が潜んでいる事は意外に多い。そして、そうした他のパターンを学ぶ事が、いろいろな場面で、思わぬヒントを与えてくれる事がよくある。
世の中のあらゆるものごとは意外なつながりを持っている。
例えば最近、多くのWebデザイナーが注目する黄金比は、オウムガイの形とも類似性がある。
SNSでの人のつながりや脳内ネットワーク、航空網、河川の形状といったものにも類似性がある。
世の中、一見関係ないようでいて、実はものすごく関係が深いものが多い。
もしかしたらゴルフのゲームを通して人生論を語ったり、歴史物の戦国武将やアメリカンフットボール/プロ野球の監督の行動を見て企業のリーダーシップを語るのも、これと通じるところがある。
いくら話をしても、なかなか答えが出ないディスカッションが、まったく違うバックグラウンドを持つ人のひとことで、あっさり解決、ということだってある。
解決に至らないまでも、自分とまったく異なるバックグラウンドを持つ人が、その人なりのフィルタを通して意見を述べてくれる事で、それまで見慣れたものが、まったく別のものにみえてくることはよくあること。
おそらく、これまで関係ないと思っていた事が、頭の中で結びつき、新しい回路(ネットワーク)が生まれる事で、人間は少し賢くなるのではなかろうか。
今日のカンファレンスで伊藤穰一さんが紹介していた「The Difference: How the Power of Diversity Creates Better Groups, Firms, Schools, And Societies」という本がおもしろそうだ(実は彼は同じ本を「Mozilla24」のパネルでも紹介していた)。本の中では、問題の解決方法について1人の専門家に聞くよりも、素人の集団に聞いたほうがいい回答にたどり着ける事が数学的にも解説されているという。
大抵のIT系カンファレンスは、IT系の人々が中心だ。毎回2〜3社新しい参加者がいて、古株の大手が2〜3新発表をしてくれるので、IT系業界の中では根を張る議論ができるかもしれない。しかし、インターネットに精通していない一般消費者にも深く浸透させたい技術やサービスについて語るのであれば、もしかしたら、アーティストや百貨店の経営者など、ITと関係ない人の意見や視点ももらえたほうがいいのかもしれない。
ちなみに北野先生の話によれば、人間の腸の中には、脳の重さと同じくらいの腸内細菌がいて、人間の身体の中の細胞をバラバラにしてDNAを調べると、全DNAのうちの95%までは、種類豊富な腸内細菌のDNA、その人固有のDNAはほんの5%ほどしかないらしい(このあたり、もし、私の理解が間違っていたら、誰かコメントで訂正して欲しい)。こうした腸内細菌の多様性が、我々の身体を守っているのだろうか。腸内細菌を取り除いたラットは、すぐに死んでしまうとい話だった。
日本の社会で暮らしていると、プライベートの時間があまりにも軽視され、常に仕事に追われてしまいがち。そして、追われた生活を続ける事で、自分の将来の糧となる自分の中の多様性が制限されてしまう。
そう感じている人にとって、THE NEW CONTEXT CONFERENCE(コンカン)は、ちょっとしたバランス系サプリのような役割を果たしてくれるーーまったくITに関係のない話ばかりだと、参加者が自分の頭の中で、話をつなぎあわせなければならないので大変だが、「コンカン」では、例えば北野氏の話にしても、生物の話をしながら、それをWeb 2.0やLongtailといったIT系の話題に結びつけながら話してくれるのもいいところだろうーーちなみに多様性に富んだイベントといえば、先日、行われたMozilla24もなかなかよかった。
THE NEW CONTEXT CONFERENCE、今年はかなり参加者も増えていたようで、パーティーも大盛況だったが、万が一、今年逃した人は、ぜひとも来年こそは参加して欲しいと思う。
ちなみに、私は今回のイベントの様子を「All-in-One INTERNET magazine 2.0」でレポートする予定だ。記事の掲載は、もう少し先になるかも知れないが、ぜひとも読んでみて欲しい。
以下、この話にやや関係がある話題:
- アップル社のものづくり
'90年代中頃、アップル社の研究開発部門の副社長だった頃にドン・ノーマンをインタビューした。彼はアップルのものづくりでは、製品開発の最初の段階、コンセプトなどを練る段階から、エンジニアだけでなく、マーケティングの人、広報の人、文化人類学者、心理学者といったあらゆる視点、あらゆるバックグラウンドを持つ人がいることが重要だといっていた。
今のアップルでは、そうしたものづくりはしておらず、スティーブ・ジョブズが中心というイメージがあるが、そのスティーブ・ジョブズにしてもインド放浪やヒッピー生活をし、禅を学び、大学中退後に英習字を勉強と、さまざまな文化的ミックスを持っており、彼の周りにいるパソコンの父、アラン・ケイもプロミュージシャンとしても通用したり、ビル・アトキンソンもプロ写真家として活躍していたりと、人間としての幅がある。
関係ないが、最近、ITproで、アップル社のものづくりについての連載を開始した。興味のある人は、ぜひ読んでみて欲しい。
ITpro:iPhoneの衝撃
- Foo Camp
今年の夏に参加したFoo Camp '07。世界中の「超」がつく天才が集まってくるこのイベントだが、面白いのは参加者に配られるバッジに、自分とよく趣向が似た人の名前と一緒に、自分と正反対の人の名前が印刷されている。そうした正反対の人と知りあう事で、自分の人間としての深みを掘り下げることができる。
あと、おもしろかったのが、Foo Campで友達になった何人かは、自分のビジネスの分野に関係のあるセッションに出ずに、「視点を広げようと思って」と、あえて自分がまったく知らない分野のセッションに顔を出していたこと。こういうのも結構、重要だと思う。
- 会社経営
社外取締役っていう考えも、figure head(お飾り)の人以外は、基本的にこういう考えですよね?
- 今日の北野先生の話より
- 工学システムにおける多様性
飛行機の制御系システムでも、冗長性と多様性を持たせるために、エンジンだかなんだか(この部分、同じ講演を聞いていた人help please)を3種類、しかも、すべて異なるメーカーがつくったものを用意する、という。
- 漢方薬
すべてではないが、一部の漢方薬の効能も、多様な成分のネットワークによってなりたっているのかもしれない、という話だった。これからの薬学では、1つの化合物で、体内の特定の因子だけに働き掛けるような薬の作り方は、限界にきており、これからはロングテールの部分にも注目した薬の化合の仕方が重要になる、という。北野氏はそういう時代の薬剤づくりはオープンソース的なアプローチを取る必要があると説いており、現在、そうしたオープンソース的かつWeb 2.0的な知識共有システムを紹介していた。
- BitTorrent
ハリウッドからも敵対視されていたP2Pサービスの「BitTorrent」の創業者、Ashwin Navinがハリウッドのスタジオに乗り込み「(この勢いのあるしくみがあるのに)我々もこれで儲ける方法を見つけられていない。一緒に儲ける手だてを考えましょう」と説得。現在では大手を含む55社がBitTorrentでハイビジョンの動画コンテンツを配信している、という話はおもしろかった。
このあたりも、どうやっても音楽の違法コピーはなくならないから、それならばいっそ、手頃な価格で違法コピーよりも質がよく簡単な音楽配信のしくみを用意して、違法コピーに対抗しようとするiTunes (Music) Storeにも通じるところがある。
アップルにコンテンツの値上げ要求をするNBC(テレビネットワーク)やその他の音楽レーベルは、この基本理念がわかっていないのだと思う。値段が高いコンテンツがあったり、手に入らないコンテンツがある事は、結局、違法コピーを促す事にしかならない。厳しい罰則を用意しても、結局はイタチごっこになるだけだ。
それよりも日本の音楽コンテンツのデジタル化が進まない最大の原因は、中間マージンを搾取している、いろいろな団体がデジタル化を進めてしまうと、自分たちの存在意義がなくなってしまうからという理由の方が大きい気がして、社保庁を含む政府機関、公共機関との類似性が大きそう。どれか1つの問題を解決できたら、そこから他の分野の問題にも解決の糸口が見つかるかも。
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これは昨年のカンファレンスをまとめた本です。
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仕事の気分転換に書いたこの記事が30代、最後の執筆物になってしまった...(23:52)
- 工学システムにおける多様性