デジタル音楽業界、これからは連携が鍵!?
デジタル音楽業界が一気に動き始めた。
今日、auは待望のウォークマン携帯電話を発表:
- ascii24: KDDI、au携帯電話機7機種を発表——“ウォークマンケータイ”など音楽機能が充実
- CNet Japan: KDDI、ウォークマンケータイやG’zOneなど新機種7種を発表
- ITmedia: 写真で解説するウォークマンケータイ「W42S」
- ケータイWATCH:30時間の音楽再生が可能なウォークマンケータイ「W42S」
ソフトバンクモバイル(旧ボーダーフォン)とアップル社はiPod携帯電話を開発中と噂されているが(ソフトバンクは噂を否定)、こちらは既に製品を発売中だ。auは最近、特に音楽サービスに力を入れており、それまで携帯電話でしか曲を聴けなかった「着うたフル」のサービスから、携帯電話とWindowsパソコンのどちらでも曲が聴ける、よりオープンなサービス、「LISMO」を始めていて評判がいい。
サービス、ソフトの順で充実を図ってきたauの音楽サービスに対し、W42Sがハードの面からサポートを行なう、といった感じだろうか。
一方、これとはまったく離れたところで、mixiがiTunesのプレイリストを公開/共有できる「mixiミュージック」というサービスを始めた、というニュースも入ってきた。
- CNet Japan: 音楽でつながる「mixiミュージック」、iTunesとの連携も
- ITmedia: mixiに音楽再生リスト共有機能 iTunesと連携
- ブロードバンドWATCH: mixi、音楽でつながる新サービス「mixiミュージック」。iTMSとの連動も
mixiは、このサービスの提供で「新しい発見や、思わぬ共通点でさらに交流が深まることもあるでしょう」と語っている。
これまで音楽系コミュニティーサイトといえば、英Last.fmや、レコミュニ、PLAYLOGをはじめいくつかあったが、Last.fm以外はどれもパっとしない状況だった。そこにSNS最大手のmixiが、突如、こうしたサービスに乗り出したのは興味深いところだ。
iTunesといえば、実は先週も同様の動きを見せている。
- ITmedia: FM局のサイトにiTunes Music Storeを完全統合
ロサンジェルスとニューヨークのラジオ局のWebページが、iTunes Music Storeとの連携を強めた、というニュースだ。
iTunes/iPod陣営は、まずiTunesというソフトから始まり、つづいてiPodというハード、そして今やサービスの拡充に力を入れている、といった感じだろうか[*1]。
(1)ラジオで局を聴く→(2)気に入った曲を調べる→(3)そのままオンラインで購入
というのは、非常にシームレスかつ自然な流れだが、これは何も先のラジオ局が発明したものではない。
auが発売しているEZ FM対応の携帯電話では、とうの昔からできていたことだ。
interFMの番組出演時に、auの携帯電話を見ていると楽しい。
DJが状況を見て、適当な曲を選び放送する。
すると担当の女性が、今、流した曲が何かを確認し、パソコン端末にその曲名を打ち込む。
その直後、au携帯電話のEZ FMで『曲名表示」のボタンを押すと、今、まさに入力したばかりの曲名がちゃんと表示されるのだ。
最近、お気に入り携帯電話のW41CAがあまりに軽いので、iPodすら持たず、この携帯電話でFM放送を聴いていることが増えてきた。気に入った曲があると、「曲名表示」で曲名を調べる。
EZ FMには「曲名履歴」という機能があるが、これはいわば気になった曲の一覧、欲しい曲のwishリストというわけだ。
ここで適当な曲を選んで、ボタンを押すとEZ Musicというサイトにつながって、曲を「着うたフル/LISMO」の曲として購入したり、CD購入したりできる。
ただ、「携帯電話で音楽」にはちょっとしたトラウマがある。どうせ、ほんの数曲しか買っていないが、
機種変更をしたときに、古い携帯電話に置き去りになったままの曲があるのだ。
これらの曲の再生にはネットワークに接続して認証を受けつ必要があるのか、古い携帯電話で再生しようと思っても再生できない。
またメディアなどを通して、新しい携帯電話に移そうと思っても、それもできない。
iTunes/iPodと違って融通の利かないところだ。
ちなみに、ラジオから新曲購入の流れはEZ FMが生み出したものかというと、それも怪しい。
実は最近、愛用しているソニーのNetJukeにも同様の機能がある(ただし、今のところ曲名表示ができるのは東京FMだけ)。
anymusicのサービスには、anymusicならではの魅力がある。
例えば話題の新曲を連続試聴する機能がある(モダシンさんのソフトを使えばiTunesでも!?)。
anymusicには、「まるでリビングルームにCDショップがやってきた」かのようなお店を覗く楽しさがある。
iTunes Music Storeは、よくできたデーター集という体裁が強いが、anymusicはもう少し日本のCDショップ的雰囲気のつくりこみが行なわれているような気がして、そこいらへんが楽しい雰囲気をうまくつくりだしている(iTunes Music Store-USは同Japanとちょっと違って、独自セレクションなどが充実している=お店の雰囲気が少しだけある)。
世の中の目は、どうしてもiTunes/iPodばかりを見ているけれど、
気がつくと、auやソニーといった非iTunes/iPod陣営も、真っ向勝負を辞め、独自の強さを活かした、おもしろいサービスを生み出し始めている。
今、それらを使う側のコンシューマーにとって、一番の不幸は、これらのサービスが、個々の陣営に分断されていることだ。
音楽業界の本当の活性化や、ユーザーの利便性を考えれば、一番、理想的なのは、これらのサービスが相互に連携することである。
EZ FMで聴いて気に入った曲は、iTunes Music Storeやanymusicでも購入したいし、iTunes Music Storeで購入した曲はiPodだけでなく、リビングに置いたNetJukeでも聴きたい(実はAirMac Expressを使ってやっているけれど)。そしてanymusicでしか売っていない曲でも、iPodやiTunesや携帯電話で聴きたいところだ。
これまでデジタル音楽販売の業界は、熾烈なシェア争いばかりを繰り返してきた。
同業界の門戸を斬り開いた英雄として扱われることが多いアップルだが、同社も他社とのパートナーを断り市場を独占しようとしたことにおいては同罪かもしれない(これまでにいくつもの会社が、アップルにiTunes/iPod技術のライセンスを申し込んで断られている)。
アップル好きの人間としては、そこに「下手に他社の案に妥協して、厳しい制約の下での音楽流通、高い価格での音楽流通に流されたくない」、という考えがあったのだろうと信じたいところだが、それを証明する証拠は何もない。
ただ、最近になって音楽配信ビジネスのデータ交換標準化団体、DDEXが結成するなどの動きもあるので、これから少しづつでもよくなっていくものとして期待したい。
なお、筆者は楽曲の販売価格については、iTunes/iPodのやり方に全面賛成で、それ以外のサービスのやり方に反対だ。
詳しくはこちらの記事を読んで欲しい:
nobilog2: iTMSは今後も99セント
[*1] ベストセラー書、「Web2.0 BOOK」で、iTunes Music Storeが、さまざまなサービスのマッシュアップだというおもしろい見解が述べられていることは前にも話したが、これからはそのiTunes Music Store自体がマッシュアップの部材として使われるというトレンドが広がりつつあるのかもしれない(なお、iTMSマッシュアップ説については、筆者もかかわっているムック「Web2.0への道」でも読むことができる)。
BGM: Ilya Gringolts - J.S. Bach: Partitas Nos. 1 & 3 - Partita for Violin Solo No. 1 in B Minor, BWV 1002: 3a. Sarabande