ifs未来研究所、創設2周年に思う


ifs未来研がスタートして昨日で2周年。

お祝いの会には、虎屋や伊勢丹、ルミネ、ポーラ、CCCといった、
いつも未来研を応援してくださっている企業の社長の方々や
トークもされた佐藤卓さんやグエナエル・ニコラさん、
WOWの高橋さん、於保さんはじめ
総勢200人近いステキな方々が集まってくださいました
人が多すぎたので、見逃している方もたくさんいそうですが、
これだけの方々が集まるイベントはそうそうないだろうと、
あらためてifs未来研究所 所長、川島蓉子さんの人徳と、
彼女がどれだけ愛されているかを再認識する夜になりました。



業種の壁やライバルの壁を越えて、日本の文化にこれだけ寄与している方々が集められる人は他になかなかいないのではないかと思いますし、逆にifs未来研という場所に興味を感じ、何かやろうと集まってくださっているこういった方々の余裕こそが、私が求めている「ステキな未来」を実現するには大切なんじゃないかとも思いました。



20世紀後半以降、経済合理性を追求することが「富」に大きな差を生みだし始めてしまったために、皆、一様に「合理化」の道をたどり始めてしまいます。
でも、人が生きていく上で味わいたい「ゆたかさ」であったり、フランス語で言うところの「bien-être(英語で言うところのwell-beingに、ちょっとフレンチなステキなスパイスが降りかかった言葉と私は認識)」のようなものは、合理化だけを追求してつくった社会からは生まれてきません。
ifs未来研を応援してくださっている方々には、そうではない
ー「余裕」であったり
ー「洒落っ気」であったり
ー「遊び」であったり
ー「何が売れる」、「何が便利か」を無視しても「何が大事」かを追求する心意気
といったものがある気がしています。



昨夜のイベントでは川島所長が、BRUTUS編集長の西田善太さん、クリエイターの佐藤卓さん、そしてCCCの増田宗昭さんとトークをしてきましたが、
一昨日のプレスイベントでは、CMアートディレクターの佐野研二郎さん、「エル・デコ」ブランドディレクターの木田隆子さん、ユナイテッドアローズ名誉会長の重松理さんのトークがありました。

どれも本当にステキなお話ばかりでしたが、皆、内容や見方の角度は違えど、中心にある思いは同じなのを感じることができました(あまりにステキな話だったのでトークからのメモを記事の末尾で紹介します)



ifs未来研、川島蓉子が3年目のキーワードとして掲げたのは
「その未来に、私はいますか。」
私がいるテクノロジーの世界などでは、皆、よく「これこそが未来」といった形で新商品、新サービスを発表していますが、その多くは私がこれまで言ってきた「左脳肥大症」の発想でつくられた製品、佐藤卓さんの言葉で言う身体に馴染むかを無視した「脳」でつくられた製品で、それを使っている自分が想像できない製品、「ある日、突然現れた未来」だったりします。
ifs未来研では、そうではない「今日の延長線上にある未来」を大事にしています。



そんなifs未来研が、今年の3年目の研究テーマに選んだのが「未来のここち」。
急速に発展してきたデジタル化とネットワーク化は、我々の周りに
「人の実感や体感を超える」ものをたくさんつくってきました。
そうではない「ここち」を味わえる未来とはどんなものなのか?
「地方」と「ファッション」、2つの切り口で研究をしていきます
(私は主に「ファッション」の研究をすることになりました)
上のステキな言葉の多くは、川島さんが選んだ言葉ですが、
私自身も個人の活動の中で、昨年から何度もキーワードとしてあげてきた1つが(ちょっと左脳的ですが)"manageability"でした。
テクノロジーの暴走で、我の周りにも毎日4000通のメールとか、5000人を超える友達リクエストや、20万人のフォロワー、日々数百件の通知など、自分のmanage力をはるかに超える、ある意味、暴力的な規模の情報だったり、人とのやりとりが密集してきました。
デジタルの1と0の間で「ここち」の部分がフィルタリングしてしまっているせいで、悪気はない人達がトラブルの元になってしまったり、といった不幸なめぐりあわせは、このデジタル社会でたくさん起きていると思います。



私自身もこの未来研の活動を通して、
25年間、テクノロジーの領域を取材してきたジャーナリストとして
テクノロジー世界側に向けても、こうした「ここち」の大切さであったり、身体性の大事さを訴えて行ければと改めて思いました。
P.S.それにしても、昨日はあれだけのVIPの方々の前で挨拶するのは正直、久しぶりに緊張しました ー笑



川島蓉子リレートーク(通称、蓉子の部屋)からのメモ:
トークメモ:
■CMアートディレクター佐野研二郎さんのトークからのメモ:

「未来のここち」蔦屋家電が素晴らしい、楽しい。
僕は笑顔に自信がある。笑顔で話しかけるだけで、同じプレゼンでも印象がかなり異なってくる。
川島蓉子: これからはどんどんネットショッピングの時代になってくるが、そうなればなるほど実店舗を持つことがブランドづくりに大事になる、とツタヤの増田社長が言っていた。エルメスも実店舗がなければブランドが廃れるだろうし、アップルも実店舗がなければここまでのブランドが築けなかった。
Ifs未来研のロゴや名刺デザイン手掛けた佐野研さん。名刺を活版印刷にしたのは、未来に手触りを残したかった。そこまで思い馳せる未来研究所であって欲しいと思った。

■「エル・デコ」木田隆子さんトークからのメモ:
先日、広島の尾道にある自転車に乗ったままチェックインできる「ONOMICHI U2」(谷尻誠さん設計)をPaul Smithさんと一緒に訪問
(「ONOMICHI U2」には柿木原政広さんも関わっている)

木田:今はグローバルな時代で世界中どこでも色んな情報が得られるので地方のエッジが立っているものが発見されやすい。例えば尾道の素晴らしい施設がインドのムンバイの建築家と天晴れな繋がりが生まれる時代。/川島:地方には宝物がいっぱいあるのに地元の人達はそのことに気づいていない。

木田: 今、世界が日本的なsimplicityを尊敬し始めている。鎖国の間、300年間磨きに磨いてきたものなので、そんじょそこらのものではない。ただ、日本はそれを伝えるのがうまくない。海外の人を巻き込む、というやり方もあると思う。

木田: 日本には世界から消えてしまった手仕事の技術がたくさん残ってる。/川島: 文化大革命で過去の文化なくした中国の人達は日本のそういうところに自国の文化の洗練のさせ方を探しにきている、とシャネルのリシャール コラス社長が言っていた。

■ユナイテッドアローズ名誉会長の重松理さん:
「ここち」という言葉を聞いて思い浮かべるのは「ここちよさ」だけ。店をやる人間として、客のすべての問題を解決できて初めて「ここちよさ」提供できる。
重松: BEAMSの設立に携わった時に考えたのはナショナルスタンダードをつくること。一朝一夕にはてきないが、今、目の前にいるお客さまの最高の満足を一人一人満たしてストレスフリーにすることだけ考えて20年やってきた。
UAの重松 名誉会長:お客さまの満足を求めることが、売り上げなど店の成功にもつながるという理念でずっとやってきた。でも、世の中には売り上げで評価を受ける。
川島:その話はずっと昔から変わってないですよね。
重松:25年前、一番最初に取材をしてくれたのが川島蓉子さんだった。
重松UA名誉会長: 京都は寺社仏閣が多いだけでなく、そうしたものなどの補修に関わってる人も多いし、一般の人も美に対しては厳しい目を持っている。

日本の住まうは素晴らしい

■BRUTUS編集長 西田善太さんのトーク:
デジタルのルート検索は本当に便利なのか?検索は人を賢くしてるのか?いらないものや「わかったような気」を増やしているだけでは!?

西田: '90年代のインターネットは面白く夢があったので好きだった。でも、今は少し違う。子供が「インターネットは面白い。ここまで物事をネガティヴに見る人がいるのか、と毎回驚かされる」と言っていた。しかし、それは夢ではない。

西田: 昔、本を買ったり後、楽しみで帰り道から読んでしまっていたのであの感じ。買ってきた本を開く前に手を洗いに行っていたあの感じ。デジタルな世代にとって、あれに近い原体験は、なんなんだろう。

■グラフィックデザイナー佐藤卓さん
「ここち」は豊かになって初めて机上にあがるテーマ

佐藤卓: 今は「脳化社会」、「脳」だけでつくった街は身体をわすれてしまっていて、「ここち」がない。
川島: 企画書などではなぜ身体との乖離が起きるのか?/佐藤: 身体的な感覚の側から企画を見ると、もっと大勢の人の共通する感覚、客観的な視点にたどりつけると思う

川島: 一般の人はデザイナーは、他の人がやっていない奇抜なことをやるのが仕事だと思い込んでいる/佐藤:もちろん、そういうやり方もあると思うが、本当はデザインを意識させない、デザインをやっていないかのようにやると「ここち」につながる。

佐藤卓: 川島蓉子さんの言うようにデザイン、というのはあまり理解されていない。だから、デザインを子供達にもわかってもらえるようなテレビ番組をつくったりもしている/川島:デザイナーにまではならなくても、デザインを理解する人が増えてくれると嬉しい

■CCCの増田宗昭代表
増田: 心地よさは人によってレベルが違う。それを平準化したい
増田: #蔦屋家電 でぜひ皆さん買って!皆、見にくるばかりで全然売れてない。入場料とればよかった(笑)。冷蔵庫仕入れるのも初めてだしまだ最初の一歩、百点満点の10点。二号店やって欲しい言われるが、まだ二子玉だってちゃんとできてない。それちゃんとやってからや
増田: 生活提案業のツタヤだけれど、ツタヤそのものがかっこいいわけではないのでかっこいいミスチルもあるという感じで生活提案していく。スマホは世の中変えたと思う。そこから見える生活提案したくて #蔦屋家電 つくった
増田:やりたいことはもちろん、色々ある。病院とかもやりたい。でも、それは蔦屋家電がちゃんとできてから。
増田宗昭: 事業会社は皆、前年度との比較してしまって、売り上げ伸ばすこととか、そういうことばかり考えてしまう。だから、本当にやりたかったのは生活提案じゃないかと、言い始めた。ゴルフのスウィングだって自分のダメなところはわからないが、人のだとわかる。

増田: 数字はただの結果。あげろとっても無理。価値があがって初めてそこについてくるもの。大事なのは数字のあげ方の中身。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2015年05月30日 | Permalink