モダンってなに? [更新]
森美術館にMOMAがやってくる。
明日から8月1日まで、ニューヨーク近代美術館コレクションから約290点の絵画、写真、映画、デザイン、および建築作品を紹介する展覧会、「モダンってなに?: アートの継続性と変化、 1880年から現在まで(MOMA@森美術館)」が開催される。
今日はその内覧会。
そうそう、今回の展示でもiPodの音声ガイドがあるようです。これは森美術館では定番化したのかな?
でも、今日はじっくり鑑賞しようと思って借りませんでした。
アートについてちゃんとした論評をする知識はないが、とりあえずの第一印象はというと、「ハピネス」の時と同様になかなか展示方法がおもしろかった。
全体は次の4つのセクションに分かれている
最初の「根源に戻って」は、人のしぐさや肉体、表情をテーマにした作品が多い。モネ、ゴーギャン、ムンク、マティス、ピカソといった巨匠の作品が多いけれど、やっぱり個人的に好きだし、すごいと思ってしまうのはピカソかな。
フランシス・ベーコンの第7番も好きだけれど、印象の強烈さで言えば、キャラ・ウォーカーの「African/American」が強烈だった。やはり根源に強いメッセージ性がある作品の方がインパクトも強いのか?
部屋ごと、壁ごとに展示してある作品の隠しテーマがあるようで(当たり前か...)、答えが書いてあるわけではないけれど、それを読み解くのもなかなか楽しい。
勝手に「ehnicityの部屋」と呼ばせてもらうことにしたウォーカーの作品のある部屋もなかなかよかった。一番、気に入った部屋、というわけではないのだけれど、ああいったethnicityを感じさせる作品は、歴史的背景説明とかと一緒に年代順、地域別でまとめられてしまうことが多く、実はそういう展示は(宗教画もそうだけれど)歴史資料館をみているようで、あまり得意ではない。でも、ああやって雑多に並べられるとかえってその比較がおもしろく、見入ってしまう。
「純粋さを求めて」はより抽象的な表現が進んだ作品、例えばトラファルガー広場を原色で塗りつぶした格子状の線だけで描いたモンドリアンあたりが展示の中心だった。
個人的に「モダンアート」というと、ここいらへんの作品の印象が強い。
リートフェルトのイスにしても、フランク・ロイド・ライトの採光窓にしてもやたらと原色と幾何学的パターンが目立つ。他にはピカソやアレクサンドル・ロトチェンコなんかの作品も印象に残った。
マリアンネ・プラントのティーポットあたりはBODUMのTeapotやWMF リバティー ティーケトルにもそれなりに影響を与えたのだろうか。何しろあれが1920年代だというのだからすごい。
ブロイアー、グレイ、ミースのインテリアの展示もいいし、アルバースという人の白線の正方形という作品もおもしろかったけれど、ミニマリズム好きとしてはイヴ・クラインの「青のモノクローム」とか、ドナルド・ジャッドの作品あたりもかなり好きだ。でも、このコーナーで一番インパクトがあったのはアラン・マッカラムの作品かな。
額縁(中は黒く塗りつぶされている)が40個並んでいると言う作品だけれど、額縁の並べ方、配置は自由なようで、おそらくぎりぎりまで苦労したんじゃないだろうかと勝手に想像を巡らせてしまった。
「日常性の中で」はウォーホールあたり俗にポスターアート、ポップアートlなどと呼ばれているあたりの作品が中心。この辺りから足が疲れてきて、明日も来るさと思ってはやいペースで回り始めてしまった(そうパブリックイベントに申し込んだはいいが、なんと内覧会の次の日=初日だった。混んでいないのだろうか?大丈夫だろうか、ちょっと心配)。印象が強かったのはやっぱりウォーホール(ビデオ作品もおもしろかった)とか、マリソルの「家族」とかかな。
クラウス・オルデンバーグのケーキの陳列ケースは、要するに、食べ物の見本で、こういうのだったら日本の方がよほど精巧ですごいものをつくれるのはわかっているけれど、オルデンバーグはつくりかたもやや大雑把に見えるけれど、ケーキの形だけなく、つくられた当時のカフェだかレストランだかの雰囲気とか空気感まで捉えちゃったインパクトの強さがあった。前に自然写真家の人と日本人の写真の話をした時、日本人の方がピントはあっているけれど、臨場感とか空気感とかは「外人の写真の方がいい」という議論になったけれど、この作品は写真以外でもそうだ、という好例だろうか?
ゲルハルト・リヒターのマオ(毛沢東)とエリザベス2世も好きだなぁ。グルスキーのTOYS'Я'USもインパクトがあった。
このコーナーの後だったか前だったかに、メディアアートのコーナーがあって、イスが目当てで一目散に駆け込んでしまった。あまりじっくり作品は見なかったけれど、ローリー・アンダーソンの作品もあったので、チェックしに行かないと!
最後の「変化に向かって」は恒常的なものがない不安な時代の作品を集めたものとかで、イヴ・クラインの有名な人体測定シリーズの作品から同時開催中KUSAMATRIXの草間弥生、円をテーマにした作品をつくりつづけるリチャード・ロングらの作品が並んでいる。ロングについては、ちょうど先週、安藤忠雄さんが講演で直島コンテンポラリーアートミュージアムの話をしていた時にも話がでてきたしちょっと「縁(円)」があるのかも?
最後のフェリックス・ゴンザレス〜トレスの作品もなかなかきれいだ。
現代美術は、なかなか、どう接していいかわからず苦手、という人でも、今回の展示は結構、楽しめるのではないかなぁ。
私も前日、初日に加えて、今後もちょくちょくと足を運ぼうと思う。1度で見ようと思ってもなかなか観られないし、ちびちびとフォーカスするエリアを決めて見に行こうと思う。
そうそう、当然と言えば当然だけれど、Museum ShopにもMOMAのアイテムが
今回の内覧会はMAMCとして招待され参加した(プレス登録すれば写真も撮れたのかもしれないが、記事にする場所がない)。ショップでプログラムを買おうと思ったら、帰りの「引き出物」というのが実は今回のプログラムだった。MAMCにはランクによって年間何冊かプログラムがもらえる券がついているのだけれど、今回の展示に関してはノーカウントで1冊もらえたことになる。内覧会も(人はそこそこ多かったけれど)ゆったり作品がみれたし、ちびちび何度も通っても無料だし、MAMCは結構、お得&お勧めなプログラムだと思う。現在、他にもいくつかの美術館のプログラムに入ることを検討中だけれど、そういったサービスと比べてもサービスの割に値段もかなりリーズナブルだし...
ついでに、今日、もう1つよかったのが内覧会を見終わった後だ。皆、今日は「モダンってなに?」の内覧だけだと思ってそのままかえってしまっていたが、実は展望台とクサマトリクスも招待客向けに開放されていた。
でも、それに皆、気がついていないので、あのいつも人でいっぱいの展望台をほぼ1人で独占できた(他にも白人の人が1人夜景を楽しんでいた)。これはかなり心地よい体験だ。
その後のクサマトリックスでも、『蛍の群舞の中に消滅するあなた。』をほぼ独占状態。
ただ、ここでも安全対策がやや行き過ぎなところがあるのが残念。入るとすぐに入り口のところで出口の方向を誘導灯で照らして注意があり、さらに入るやいなや「出口はこちらです」と誘導灯で照らされるのだ。
この作品はもう十数回は見に行っているけれど、始まったばかりの頃は、入る前に口頭で出口の方向を教えられるだけで、確かに下手をすれば壁(鏡)にぶつかりそうなくらいに真っ暗だった。でも、それだけに感動もひとしおだった。
そこから段階的に進化して現在の誘導灯が導入されるが、やや明るすぎる気がする。それに心無しか、作品で使われている光も光量が増しているのではなかろうか。今日なんかは鏡に己の姿がはっきり映し出されてちょっと興ざめだった。でも、MAMCかなり満喫させてもらっています
明日から8月1日まで、ニューヨーク近代美術館コレクションから約290点の絵画、写真、映画、デザイン、および建築作品を紹介する展覧会、「モダンってなに?: アートの継続性と変化、 1880年から現在まで(MOMA@森美術館)」が開催される。
今日はその内覧会。
そうそう、今回の展示でもiPodの音声ガイドがあるようです。これは森美術館では定番化したのかな?
でも、今日はじっくり鑑賞しようと思って借りませんでした。
アートについてちゃんとした論評をする知識はないが、とりあえずの第一印象はというと、「ハピネス」の時と同様になかなか展示方法がおもしろかった。
全体は次の4つのセクションに分かれている
- 根源に戻って
- 純粋さを求めて
- 日常性の中で
- 変化に向かって
最初の「根源に戻って」は、人のしぐさや肉体、表情をテーマにした作品が多い。モネ、ゴーギャン、ムンク、マティス、ピカソといった巨匠の作品が多いけれど、やっぱり個人的に好きだし、すごいと思ってしまうのはピカソかな。
フランシス・ベーコンの第7番も好きだけれど、印象の強烈さで言えば、キャラ・ウォーカーの「African/American」が強烈だった。やはり根源に強いメッセージ性がある作品の方がインパクトも強いのか?
部屋ごと、壁ごとに展示してある作品の隠しテーマがあるようで(当たり前か...)、答えが書いてあるわけではないけれど、それを読み解くのもなかなか楽しい。
勝手に「ehnicityの部屋」と呼ばせてもらうことにしたウォーカーの作品のある部屋もなかなかよかった。一番、気に入った部屋、というわけではないのだけれど、ああいったethnicityを感じさせる作品は、歴史的背景説明とかと一緒に年代順、地域別でまとめられてしまうことが多く、実はそういう展示は(宗教画もそうだけれど)歴史資料館をみているようで、あまり得意ではない。でも、ああやって雑多に並べられるとかえってその比較がおもしろく、見入ってしまう。
「純粋さを求めて」はより抽象的な表現が進んだ作品、例えばトラファルガー広場を原色で塗りつぶした格子状の線だけで描いたモンドリアンあたりが展示の中心だった。
個人的に「モダンアート」というと、ここいらへんの作品の印象が強い。
リートフェルトのイスにしても、フランク・ロイド・ライトの採光窓にしてもやたらと原色と幾何学的パターンが目立つ。他にはピカソやアレクサンドル・ロトチェンコなんかの作品も印象に残った。
マリアンネ・プラントのティーポットあたりはBODUMのTeapotやWMF リバティー ティーケトルにもそれなりに影響を与えたのだろうか。何しろあれが1920年代だというのだからすごい。
ブロイアー、グレイ、ミースのインテリアの展示もいいし、アルバースという人の白線の正方形という作品もおもしろかったけれど、ミニマリズム好きとしてはイヴ・クラインの「青のモノクローム」とか、ドナルド・ジャッドの作品あたりもかなり好きだ。でも、このコーナーで一番インパクトがあったのはアラン・マッカラムの作品かな。
額縁(中は黒く塗りつぶされている)が40個並んでいると言う作品だけれど、額縁の並べ方、配置は自由なようで、おそらくぎりぎりまで苦労したんじゃないだろうかと勝手に想像を巡らせてしまった。
「日常性の中で」はウォーホールあたり俗にポスターアート、ポップアートlなどと呼ばれているあたりの作品が中心。この辺りから足が疲れてきて、明日も来るさと思ってはやいペースで回り始めてしまった(そうパブリックイベントに申し込んだはいいが、なんと内覧会の次の日=初日だった。混んでいないのだろうか?大丈夫だろうか、ちょっと心配)。印象が強かったのはやっぱりウォーホール(ビデオ作品もおもしろかった)とか、マリソルの「家族」とかかな。
クラウス・オルデンバーグのケーキの陳列ケースは、要するに、食べ物の見本で、こういうのだったら日本の方がよほど精巧ですごいものをつくれるのはわかっているけれど、オルデンバーグはつくりかたもやや大雑把に見えるけれど、ケーキの形だけなく、つくられた当時のカフェだかレストランだかの雰囲気とか空気感まで捉えちゃったインパクトの強さがあった。前に自然写真家の人と日本人の写真の話をした時、日本人の方がピントはあっているけれど、臨場感とか空気感とかは「外人の写真の方がいい」という議論になったけれど、この作品は写真以外でもそうだ、という好例だろうか?
ゲルハルト・リヒターのマオ(毛沢東)とエリザベス2世も好きだなぁ。グルスキーのTOYS'Я'USもインパクトがあった。
このコーナーの後だったか前だったかに、メディアアートのコーナーがあって、イスが目当てで一目散に駆け込んでしまった。あまりじっくり作品は見なかったけれど、ローリー・アンダーソンの作品もあったので、チェックしに行かないと!
最後の「変化に向かって」は恒常的なものがない不安な時代の作品を集めたものとかで、イヴ・クラインの有名な人体測定シリーズの作品から同時開催中KUSAMATRIXの草間弥生、円をテーマにした作品をつくりつづけるリチャード・ロングらの作品が並んでいる。ロングについては、ちょうど先週、安藤忠雄さんが講演で直島コンテンポラリーアートミュージアムの話をしていた時にも話がでてきたしちょっと「縁(円)」があるのかも?
最後のフェリックス・ゴンザレス〜トレスの作品もなかなかきれいだ。
現代美術は、なかなか、どう接していいかわからず苦手、という人でも、今回の展示は結構、楽しめるのではないかなぁ。
私も前日、初日に加えて、今後もちょくちょくと足を運ぼうと思う。1度で見ようと思ってもなかなか観られないし、ちびちびとフォーカスするエリアを決めて見に行こうと思う。
そうそう、当然と言えば当然だけれど、Museum ShopにもMOMAのアイテムが
今回の内覧会はMAMCとして招待され参加した(プレス登録すれば写真も撮れたのかもしれないが、記事にする場所がない)。ショップでプログラムを買おうと思ったら、帰りの「引き出物」というのが実は今回のプログラムだった。MAMCにはランクによって年間何冊かプログラムがもらえる券がついているのだけれど、今回の展示に関してはノーカウントで1冊もらえたことになる。内覧会も(人はそこそこ多かったけれど)ゆったり作品がみれたし、ちびちび何度も通っても無料だし、MAMCは結構、お得&お勧めなプログラムだと思う。現在、他にもいくつかの美術館のプログラムに入ることを検討中だけれど、そういったサービスと比べてもサービスの割に値段もかなりリーズナブルだし...
ついでに、今日、もう1つよかったのが内覧会を見終わった後だ。皆、今日は「モダンってなに?」の内覧だけだと思ってそのままかえってしまっていたが、実は展望台とクサマトリクスも招待客向けに開放されていた。
でも、それに皆、気がついていないので、あのいつも人でいっぱいの展望台をほぼ1人で独占できた(他にも白人の人が1人夜景を楽しんでいた)。これはかなり心地よい体験だ。
その後のクサマトリックスでも、『蛍の群舞の中に消滅するあなた。』をほぼ独占状態。
ただ、ここでも安全対策がやや行き過ぎなところがあるのが残念。入るとすぐに入り口のところで出口の方向を誘導灯で照らして注意があり、さらに入るやいなや「出口はこちらです」と誘導灯で照らされるのだ。
この作品はもう十数回は見に行っているけれど、始まったばかりの頃は、入る前に口頭で出口の方向を教えられるだけで、確かに下手をすれば壁(鏡)にぶつかりそうなくらいに真っ暗だった。でも、それだけに感動もひとしおだった。
そこから段階的に進化して現在の誘導灯が導入されるが、やや明るすぎる気がする。それに心無しか、作品で使われている光も光量が増しているのではなかろうか。今日なんかは鏡に己の姿がはっきり映し出されてちょっと興ざめだった。でも、MAMCかなり満喫させてもらっています