大気圏外からの帰還
ミラノから帰ってきた後、すっかりブログの更新が滞ってしまった。
やることがいっぱいあるのも一因だけれど、それに加えて、日常の普通の仕事や暮らし(ネット用語でいうところの「リアル」)にドップリ浸かった後で、パソコンに向き合うと、なんか、そこに大きなギャップを感じてしまって、それまで自分がいたルーチンに戻ることに、すごい疲れを感じてしまったのも一因。
ミラノでは忙しいながらも充実した日々を過ごした。帰国後も忙しい中、早朝ジョギングできれいな朝日を見たり、週末、パナソニックセンターのRiSuPiaを見て、昔の数学者達の深い知恵に感銘を受けたり、子供たちに数学の楽しさ、科学の楽しさを感じ取ってもらうための素晴らしい展示をつくっている人達の仕事に改めて感動したりと、普段の暮らしの中では、気持ちのいいできごとがいっぱいある。
ところが、パソコンの電子メールソフトを起動すると、見ていて情けなくなるような内容のメール(=迷惑メール)の山が。そしてWebのいつも巡回していたサイトを見ると、不毛な言い争いだったりとか、読みたくもないようなひどいニュースだったりとか、なんだかギラギラとした文章とかばかりが目に入ってくる。それらを読んで、トゲトゲした気分になるよりも、楽しい本を読んだり、映画をみたり、やらなきゃならないことに追われたりして、日々を過ごしてしまっていた。
なんだか、そのルーチンの中に、入っていくことが、えらくしんどくて、最小限のメールの返事(最小限未満ですね、返事していない人スミマセン)、そして日本のブログスフィアは、友達のブログと自分を気持ちよくしてくれるブログ、元気にしてくれるブログを見るだけの薄い付き合いで、過ごしてきた。
世の中には、すべての人を満足させてくれるようなものなんてそもそもないのだし、わざわざ自分の嫌いなものを見つけて、その批判にエネルギーを費やすよりも、嫌いなものはとりあえず無視しておいて、好きなものから、いいバイブレーションを受けて、先へ進んだ方がよっぽどいい、と思う(世の中は広いし、自分が共感できる素晴らしいものがいっぱいあるのだ)。
例えば自分の信じる道と正反対の言動を見かけても、それを批判するよりは、自分が信じる方の言動を応援して、後は自然淘汰に任せたっていいんじゃないだろうか(そもそも、世の中に絶対に正しいものなんてないのだし、1つの意見一色で世界を塗り尽くすことなんてできないのだし)。
もっとも、そうは書いても自分がパソコン好きで、インターネット好きである事実は変えられないし、仕事の軸足もIT業界に置いているわけで、いつまでも距離を置いておくわけにもいかない。
気がつけば、nobilog2への、最後の投稿から時間が経ち過ぎていて、トップページが真っ白になっていたし、先日、Googleでnobilogを検索したら、本文の部分に、どこかのアダルト系のトラックバックSPAMの文面が表示されていてギョッとしたこともあり、「そろそろ戻ってこないとダメかな」と感じていたところ。
少し、話はずれるけれど、MacやiPodを含むアップル製品の魅力も、ITドップリでなくて、どこか人間くささを感じさせるところにある気がしている。アップルが言う「デジタルライフスタイル」も、「デジタル技術どっぷりで、徹底的に効率性と便利さを追求」ではなく、「まずはリアルの暮らしと人間味ありき」という視点を感じる。
実際、iLifeのサンプルに出てくる人達だって、何よりもまず子供の誕生会であるとか、キャンプであるとか、旅であるとか、スポーツであるとかを満喫してリアルライフをenjoyしている人達がサンプルに描かれている。Mac OSとか、アップルがつくるソフトには「もっと、こういう機能を加えたら、この部分もしっかり連携できて、さらに便利になるのに」と思わせるような箇所がいくつかあるけれど(今、具体例が思い浮かばず)、そういう機能って、見返してみると「そんなになんでもかんでもパソコンに頼り過ぎるな」とかいうメッセージにも読み取れる。
Macユーザーの方も、すべてパソコンだけで済ませてしまうのではなく、Macの横に置いて使う、ペンやら手帳にもこだわりを見せる人が多い。
そしてアップルの社員の多くも、1日中、パソコンどっぷりではなく、自転車好きだったり、バイク乗りだったり、食通だったり、旅行好きだったりと、多彩な趣味を持っていて、コンピューターユーザーである前に、人間としての魅力にも溢れている人が多い。
ネット上のいろいろな書き込みを見ていると、「ネット」の世界と「リアル」の世界を二者択一のように書いている若い人達もいるが、決してそんなことはない。
私もネットとリアルの間の、どこかバランスのいい場所に、自分の立ち位置を見つけていきたい。