日本が第2のホームグラウンド「永遠のソール・ライター展」
「タイトル『永遠のソール・ライター』の『永遠』に込めた意味は色々あるけれど、その一つはここ日本がソール・ライターのもう一つのホームグラウンド、という意味です」
1月9日から渋谷 東急Bunkamuraザ・ミュージアムで始まった2度目のソール・ライター展(-3/8まで)のオープニングレセプション、ソール・ライター財団マーギット・アープ理事長の言葉だ。
「タイトル『永遠のソール・ライター』の『永遠』に込めた意味は色々あるけれど、その一つはここ日本がソール・ライターのもう一つのホームグラウンド、という意味です」
1月9日から渋谷 東急Bunkamuraザ・ミュージアムで始まった2度目のソール・ライター展(-3/8まで)のオープニングレセプション、ソール・ライター財団マーギット・アープ理事長の言葉だ。
今年は私がテクノロジージャーナリストとして仕事を始めてから30年の節目の年だ。
で、この30年で、どんな実績が?
記憶力が悪い上に頭は次にやりたいことでいっぱいなので、とっさに思い出せない。
デビューは、世界でも初めてかも知れないシェアウェアを紹介する連載。
これを企画、執筆し雑誌の目玉の1つにできていたと思う。
その後、テクノロジー企業の創業者や研究者、ビジョナリー、思想家、デザイナー、経営者など、もはや会えなくなった人も含め錚々(そうそう)たる人たちを取材し、その言葉を文字に変えてきた。
本も1ダースほど書いた。一部は台湾や韓国でも翻訳出版された。一通りの新聞、テレビ局に出演したし、英米仏韓西(+カタルーニャ)の雑誌、Web媒体やテレビ、ラジオにも出演した(人によってはこっちの方が実績だと思うかも知れない)。
そういえば、日本でのiPhone発売開始前夜祭イベントで孫正義さんと一緒にMCをさせてもらったりなんていうこともあった。
でも、いずれも過去は過去だ。
そんな私が、ここ数年はすっかりテクノロジーよりもアートやデザイン、教育方面に傾注していることはTwitterやFacebookを見ている人ならご存知の通りだ(最近「アート/デザイン関係の方だと思っていました」と言う人も増え、喜ばしく思っている)。
これは自分の中では極自然に起きた変化だが、不思議に思っている人も少なくない。
改めて説明を試みると、自分の中でもいろいろと面白い発見があった。
丁寧に書くとどうしても長くなってしまうので文字数の上限を決めて説明してみたい(ちゃんと伝えるには、長大なメッセージよりも角度を変えた短いメッセージを長期間にわたって何度も出し続ける方が効果的というのは、この30年の学びのひとつだ)。
この5年ほどの間に、ひとつ大きな発見があった。自分にとっては、歳をとってから、自分の性的趣向が他の人と違っていたことに気がついたかのような衝撃の発見だった。
それは、自分がそもそも興味を持っていたのは「テクノロジー」ではなく「未来」の方だった、ということだ。
この「未来」という言葉には、「人類の種としての進化」だったり、「豊かな文化」といった視点も含められている。
それだけに、新たなテクノロジーを不毛な楽しみの道具に変える傾向が強い日本のテクノロジー業界とは、ちょっと相性の悪さを感じていた。とはいえ、十数年の間は、そんなテクノロジー業界にどっぷりと浸かり、それまでの縁をないがしろにしていた。その時点ではテクノロジー業界こそが、自分が所属している唯一のコミュニティーになってしまっていたので周りに合わせて我慢し続けてきた。
これは実は、それなりに大きなフラストレーションになっていた。
「テクノロジー」そのものではなく、そこから生まれてくる「新しい広がり」が好きな私にとってはアップル製コンピューターは必然の選択肢だった。
Apple IIの時代も、Macintoshの登場後も、さらにはiPhoneでスマートフォン時代、iPadでタブレット時代がやってきても、世の中の風景までも変えるような大きなトレンドの変化、世の中に対して「意味」を持つ変化は、常にアップル製品の周辺から生まれてきたように今でも思う。
では、アップルの製品が技術的に、そこまで先進的かと言えば必ずしもそうではない。
もっとも分かりやすい初代iPodを例に挙げよう。
2001年の発表当時、初代iPodに際立って新しいテクノロジーが搭載されていたかというと、答えは「No」だと思う。
では、iPodは何が凄かったかと言うと、製品のデザインだ。ねじ穴1つなく、背面は鏡面仕上げという見た目のデザインのそれも凄かった。だが、それ以上にポケットの中にすべての曲(1000曲)を入れて持ち歩けるというコンセプトがしっかりと練られていた。また、それが絵に描いた餅にならないように1000曲をストレスなく転送できる技術を戦略的に採用したり、1000曲の中から聞きたい曲を素早く選べるホイールを搭載したり…
あらゆる利用シーンをしっかりと検証し、議論し、その上で快適になるまでブラシアップした爪痕を随所から感じ取ることができた。
当時、他の会社からも同じ容量5GB、つまり1000曲を入れられる音楽プレーヤーも出ていたが、1000曲も転送するのは一晩がかりだったり、曲を選ぶのが大変過ぎて使い物にならない、とりあえずスペックを満たしただけの製品ばかりだった。
このiPodが、やがてアップル社を大躍進させ、世界規模で人々の風習を変えたことを考えると、未来をつくっていたのは「テクノロジー」の側ではなく、「デザイン」の方なのだと強く思わざるをえない。
もともとアップル社の製品が好きだったのはデザインに惹かれていた部分もあり、ジョニー・アイブはもちろん、深澤直人さんやIDEO社のデザイナー、さらにはIBM社のデザイン部門まで、デザイン関係の取材はかなり早い時期から始めていた。その背景もあり、2005ー2006年頃からは徐々にデザイン関係の仕事を増やしていった。
デザイン思考という言葉が日本にも広がり始める前後だった。
企業向けなどに行っていた講演でも、デザインこそが全社を貫く横串であり、戦略の中核になるはずだと、 三洋電機の事例などを挙げながら講演していたことを今でも思い出す。
それと並行して、実はアートへの興味も強まり始める。
持ち歩けるノートパソコンがあったとは言え2006年までITは座って覗き込む画面の中の世界が中心だった。2007年頃からはスマートフォン登場で、画面そのものがどんどん社会や生活シーンの中に進出し多様な革命を起こした。今度は3D技術が、画面の中の仮想世界のできごとを実体に変え始める。
— Nobuyuki Hayashi林信行さん (@nobi) 1月 1, 2013
上は今朝(2013年1月2日)、別所哲也さんがナビゲーターを務めるJ-WAVE「TOKYO MORNING RADIO」に出演した後、3D造形の魅力を伝えようと、なんとか140文字でこの凄さを伝えようと、スマートフォン前のiモードなどの話をはしょって書いたツイートだが、ここ数年、私が強く思っていることだ。
ただ「3D」というと、どうしても大コケし日本の家電メーカーを弱体化させた「3Dテレビ」の印象が強い(実際に3Dなわけではなく目の錯覚を利用した疑似3Dなのにも関わらず)。
なんか、今、3D技術周辺で起きている、もの凄い革命を総括できる、いい呼び名はないかと思っていたけれど、ブログのタイトルをつける瞬間「実体革命」という言葉が浮かんできた。
しばらく寝かしてみるとどうかわからないが、今はすごくいい言葉に思えているので、少なくともこの記事では、この言葉で通そう。
一言で何をやっている人かわかりにくい私が、これまで23年間、自ら営業することもほとんどなくなんとかやっていけているの要因の1つに「未来のテクノロジーへの嗅覚」があるのではないかと思っている(ちょっと自分的には大胆すぎるかな?と思うけれど、お正月だし、言い切らせて欲しい。ちなみに「儲かるテクノロジーへの嗅覚」はない。「サブカルテクノロジーへの嗅覚」もゼロであることは自信を持って断言できる)。
ちょっと、2013年を迎えるにあたって、その遍歴を辿ってみたい気になった。
正直20世紀中は外れる予想も多かった(アップル発でIBMやNovellといった大手も参加していたOpenDocという技術に心底惚れ込んでいた時期もある)。
だが、2000年頃にGoogle社に注目し、日本ではかなり早期の紹介記事を書いたあたりから風向きが変わった気がする(MACPOWERという雑誌で紹介記事を書いたが、その後、編集部を後ろから見ると、編集者達がみていた画面が、毎日、ヤフー!やAltaVistaという検索サービスのページから、どんどん真っ白なGoogleの画面に切り替わっていくのを見るのが壮観だった)。
その後、2002-3年頃からは、まだ登場したてでWeblog(ウェブログ)と呼ばれることの方が多かった「ブログ」という技術に注目した(Weblogが転じて、We blogとなり、blogという言葉が生まれた)。
MACPOWERの編集会議で「blog」のトレンドを記事で取り上げるべき、と提案したときは、まだ日本語に対応したブログサービスがなく、私自身もMoveble Typeというブログシステムを日本語に対応させる方法をインターネットで検索して改造して使っている1人だった。
編集会議で提案すると、すぐに「欧米では、皆、自己アピールが強いから、ブログのようなものが流行るかも知れないけれど、日本人はそんなに自己アピールをする人がいないからニーズがない」と一刀両断にされたが、実際、私自身も当時はそのとおりだと思っていた。
3月8日(日)のTwitter:
この日はApple Storeで、CIA主催のiPhoneイベントで講演。
iPhoneイベントの参加者らは、
Apple Store Ginzaの前で、こんなゲリラパフォーマンスを披露。
その後、坂本龍一さんのイベントを取材してきました。