ユビキタス・アプライアンスの種

午前中、渋谷で取材をした後、少し気分をリフレッシュして、仕事の遅れを一気に取り戻そうと、都内を見下ろせる某会員制シェアスペースに仕事をしにきた。ここにくると、意外な人と遭遇する機会が多い。私が非常にお世話になっているメーカーの取締役と広報部長の方に遭遇したこともある。

今日は、アナログ時計が貼られた個性の強いThinkPadがいきなり目に飛び込んできた。持ち主を見ると、ユビキタスマン、ことヒマナイヌの川井拓也さんだった。
 なんでも同じフロアで新しい通信会社の設立発表会とその展示が行われている、という。

松下電器産業、加賀電子、他からモバイルエンタテイメント、東洋アイティーホールディングスほかが出資するCyber Space Communications(CSC)という会社だった。
ウィルコムのPHS回線を借り受けて、通信機能などをチップに組み込んで提供するという会社だ。

通信機能があらかじめチップに組み込まれている。設定不要でインターネットにつながる。
これが例えばどういうパラダイムを生み出すのか。
参考出品の製品は多数展示されていたが、個人的に印象に残ったのは、タカラが展示していた子供用の通信装置と東洋アイティーホールディングス(株)が展示していた留守番ロボット。

タカラの通信装置は親と子供の間で1対1のメール通信ができる。ほとんど設定不要で使える他、他の人からのメールなどは一切届かず、迷惑メールから子供を守ることができるというメリットもある。
(これを取材しているときに某女性編集者に遭遇したので、この製品についてはWebニュースでも読めるかも...)

東洋アイティーホールディングスの留守番ロボットは、携帯電話から呼び出すと、首に吊るされたカメラで家の様子を撮影して、携帯の画面に写真を表示してくれるというもの。これまでにもよくみかけた製品だが、これまでの製品だと、必要だったインターネット接続やら何やらといった面倒な設定を省けているのが特徴、という。
 ただ、写真を撮影するだけでなく、部屋が暗い場合は、赤外線リモコンで電気をつけてくれる、という気の効きようだ。東洋アイティーホールディングスが直接製品として販売することはなさそうだが、同社はシステムのコンサルティングなども含めOEMを行う模様だ。

このCSCのプラットフォームは、ちょっと私の琴線に触れる部分がある。

私は前から日本のモバイルの発展を鈍らせているのは携帯電話のキャリアだと思っていた。
最近、どこの携帯キャリアでも、当たり前のようにパケット定額制を実施しているが、日本の携帯電話がキャリア主導でつくられているかぎりは、このパケット定額制を生かした製品が出てこない、と常々思ってきた。

 例えばパケット定額、つまり、インターネット接続が大前提で、携帯電話端末を開発するとしたら、例えばインターネット上の路線検索を一発で呼び出すボタンや、シャッターを押すと写真をフラッシュメモリーではなくFlickrのようなインターネットサービスに保存するデジタルカメラのような製品がでてきてもいいはず。
 そうした製品にどれだけのマーケティングチャンスがあるのかとか、バッテリー持続時間の問題も確かにあるだろう。しかし、どれもこれも、美醜の違いこそあれ、携帯電話の形と「なんとかモード」の通信機能を使って、すべてを済ますように設計されている。
 携帯電話はあくまでも携帯電話なのだ。

 それに対して、CSCがつくりだすプラットフォームは、もしかしたら本当のユビキタスなアプライアンスを可能にするのではないかと思った。
(しかし、会社設立発表会に出た訳ではなく、ただ展示をいくつか駆け足で見ただけなので、今後の行く末をじっくり見守りながら判断すべきところかもしれない)。

何はともあれ、ユビキタスマンさん、おもしろい発表会をおしえてくれてありがとうございました!

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投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2005年05月10日 | Permalink