ソニー社長、「iTunesにはやられた」
目当ては「ソニー復活に秘められたシナリオ」という特集でなかなかよくできた特集だった。
これまで私自身、雑誌や(アスキー系、アスペクト系)ムックなどで、ソニーはWalkmanをつくったまではよかったが、デジタル時代になってからは完全に乗り遅れた。著作権保護にばかり配慮して、ユーザーに配慮しなかった、と批判してきた。書きながら心配だったのは、ソニーがそのことを理解していて改善できるのか、ということだった。
この記事を読んで少し、安心すると共に、ちょっと今後の展開への期待が膨らんだ。
冒頭のインタビューの中で、安藤国威社長は、ジョブズが自らの信念を実証したとして、その行動力に賛辞を贈る一方で、「iTunesには『やられた』だが、(ソニーはまだ)『追いつける』」と語っている。
それに続くページでも、野副上席常務という人が、ソニーの失敗をおもしろい比喩で表現している。
ソニーはナップスターが制限速度50キロの道路を120キロでぶっとばすのを横目で見ながら制限速度の50キロで走っていた、というもの。iTunesは制限速度を超えていたが、まわりも皆その速度で走っていたから問題がなかった、としている。
この比喩には同意し難い。あえて同じ比喩を使わせてもらうなら、ソニーは最低速度50Kmの高速道路を、環境に配慮しすぎるあまり自転車で走っていた。一方、アップルはエコ自動車に乗って制限速度を守っていた、というのが私の認識だ。
野副の比喩は巧みに、アップルとかつてのナプスターなどの違法行為をイメージ的に結びつけようとしているが、アップルは違法コピーを奨励するどころか、これにはちゃんと正面から反対している。
ただし、ユーザーを最初から悪者と決めつけて疑ってかかるのではなく信頼する道を選んだ(別の言い方をすれば、悪意のあるユーザーにあわせて、善良なユーザーまで不便を強いられるのを避けた、とも言える)。
つまり、ハッカーとの下手ないたちごっこをするのではなく、悪意のない人が誤ってコピーしてしまうような事故を防ぐ機能はしっかり用意したが、(犯罪者になる「自己責任」と覚悟で)あきらかな悪意を持って違法コピーすることまではあえて防がなかった。
今はそうでなくても、コンテンツの著作権だけに必要以上に配慮する傾向が強まり、これとデジタル技術が強力なタッグを組んで、世の中がどんどん不便になろうとしている。
このままユーザーを信頼しないモデルが当たり前になったら...図書館はなくなり、本屋さんからも立ち読みできる本がなくなり、録画したテレビ番組は自宅のテレビでしか再生できなくなり...
関係ないが同雑誌の携帯音楽プレーヤー、TOP 5のうち
1、2、4位をiPodが占めていた。iPodが5モデル以上あったらどうなっていたのだろう?