Goodbye MD, seriously.

最近、最後のDATレコーダー(デジタル・オーディオ・テープ・レコーダー)の発売中止が発表された。
AV WATCH: ソニー、DAT製品の国内出荷を終了
その一方で、そろそろMDにも終わりが見えてきたかもしれない。

共同通信(via Yahoo! News)は「ミニディスクの需要25%減 iPodに市場奪われる」と伝えている。
海外ではまったく人気のないMDプレーヤーは、やはり日本が売り上げの8割強を占めているようだが、iPodやソニーなど国内メーカーも発売を始めたデジタルオーディオプレーヤー(DAP)に取って代わられている、と言う。

でも、今の「携帯型デジタルオーディオプレーヤー」では本当の「Goodbye MD」はできないと、主張するのがトランステクノロジー(長瀬産業株式会社)、今日、都内でかなり力のこもった発表会が開催された。
発表会でトランステクノロジーの平塚氏は、まずMDプレーヤーのパソコン所有率は28%という同社の調査報告を発表した。

iPodなどのDAPは、パソコンから楽曲転送をするのが基本、つまりパソコンを持っていないMDユーザー(全MDユーザーの72%)はそのままでは移行ができないと力説する。

でも、共同通信のニュースによれば「MDからDAPへの移行は進んでいるのでは?」と思う人も多かろう。
だが、平塚氏は、DAPの利用者は男性が中心(86%)で、30-39歳、20-29歳の次に40-49歳とやや高めの年齢層に偏っている、と指摘する。

これに対してMDのユーザー層は20-29歳が一番多く、その次が30-39歳、そして3番目は19歳以下とやや若い年齢層に偏っているというーーつまり、ここにまだGoodbye MDと言い切れない大きなセグメントがあるということだ。
 典型的な例をあげると、高校生や入社仕立てのOLなどはパソコンを持っておらず、MDの利用が中心、ということだろうか。

 いずれにせよ、同社がこれらのマーケティング調査を経て開発したのが「TRANSGEAR HMP-100」。
「Goodbye PC」を唱うパソコン不要のDAPだ。

アナログレコードやCD、MDなどとライン接続して音楽を取り込め、そのまま持ち出せるというハードディスク内蔵DAPだ。

HMP-100
【Transgear HMP-100】12月10日発売。オープン価格(直販価格:2万9400円)。GKインダストリアルデザインはいいけれど、ちょっと文字とか多すぎ?でも、デザイン携帯よりも、見てくれだけのややダサくらいの携帯電話が売れる状況を考えると、これくらいのデザインの方が買いやすい!?


平塚氏は2006年以降、PCレスのDAPが増え始めると語る(の割に出荷台数は10ヶ月で5〜6万台と控えめ)。
実際、PCレスを唱う製品はTransgearが初めてではない、という。
エレコムやパナソニック、ソニー製の家庭用デジタルコンポも紹介した。

しかし、これらの製品は:

  • 曲名などが表示されない
  • イーサネットを通してインターネット接続が必要

のどちらかの問題を抱えているという。

曲名が表示されないと、曲が貯まるにつれ不自由さが増してくることが容易に想像できる。

一方、イーサネットが家庭にあるのはパソコンユーザー。
パソコンを持っていないのにイーサネットだけあるというのは、他の条件に惹かれてインターネット対応マンションに入居してしまった人などごく稀なケースだけだろう。

パソコンがない(=イーサネットもない)環境で、ちゃんと曲名を表示できるようにしたのが、先のTransgearだ。
 これを実現するにあたって米Gracenote社の組み込み型Music IDという技術が使われている。
 現在、auの一部の携帯電話は、曲を聴かせると曲名などを表示してくれる曲認識サービスに対応している。ここで使われているのがMusic IDだ。
 ただし、TransGearではインターネット接続ができない状況でも曲認識をできるようにするため、曲認識に必要な曲のフィンガープリント(指紋)データーをハードディスク上に持っている。

6GBのプレーヤーには約650MB、350万曲分の楽曲のフィンガープリント(指紋)情報が入っており、これから発売される新譜は携帯電話をつないで通信させることで認識できるようになっている。

 このように徹底的にPC無しでの利用にこだわっている(もっとも、実はPCとつなぐこともできるようだ)。

 デモでは曲の認識にそれなりに時間がかかっていた。それだけに使っていない間にまとめて認識させたりできるのかが気になるところだ。
 実機をじっくり試したわけではないので、ちゃんとした評価は下せないが、非パソコン所有のMDユーザーはこの製品をどう受け取るのか気になるところだ。

 ちなみに工業デザインを(株)GKインダストリアルデザインが手掛けるなど、発表会だけでなく、製品開発にもそれなりに力がこもっているようだ。設計と生産を行う香港のPerception Digital社は、今後は長瀬産業を通して、組み込み型Music IDプレーヤーのリファレンス基板の販売やSDK提供も行っていく、という。

 パソコンにつながらないということは、当然、Podcastにも対応していなければ、オーディオブックも楽しめない、音楽専用プレーヤーということになる。

 とはいえ、たしかにMDは持っているけれど、パソコンは持っていない、という層はそれなりに大きそうだ。


 トランステクノロジー社のミッションがそういった層に、パソコン不要のDAPを広げことだとしたら、アップルのミッションは何だろう?

それは、DAPをきっかけにパソコンの売り上げにつなげることだろう。

 そもそもiPod開発のきっかけになった「デジタルライフスタイル戦略」は、「パソコンの時代は終わった」といわれていた2001年に「パソコンの21世紀の使い方」として提案されたものだ。パソコンを使うことの楽しさ、便利さを再認識させるために開発されたもの、といっても過言ではない。

 Apple Store Ginza1階のiPodコーナーではiPodのアクセサリーの1つとしてMac miniが売られている。
 iPod nano+Mac miniをまとめて買うと(さらにこれにCRTなども買うと)、TransGearより高価になるが、それに見合う楽しみが十分訴えられればアップルの勝ちだ。いや、高校生や若手OLとなると、それでも経済的に苦しいかもしれないので、やはり導入価格の圧縮は必要なのかも。

 そこで思いついたんだけれど、Mac miniをテレビ接続可能にする、というのはどうだろう。
 テレビをモニター代わりに使って、無理すればアプリケーションも動くけれど、基本はFront Rowの画面になっている。

 あとでパソコン機能が必要になったら、キーボードとマウス、そしてもうちょっと文字が読みやすい液晶ディスプレイを別途購入すればいい(もっとも、今時だとそもそも自宅のテレビがVGA端子付き液晶テレビ、ということも多そうだが...)。
 どうせなら、iTunes Music Storeでも、リモコンで曲を買えるようにして欲しい。(iTMSの1-Clickならそれも可能だと思う)。

 もっとも、それをやってしまうとパソコンの楽しさ、便利さを知ってもらう、という本来の目的にはつながらないのかな!?

 なんだか話が横道にずれてしまった。

 いずれにせよ2005〜2006年は、「Digital 1.0」とでも言うべき第1世代のデジタル製品(DATやMD)が最期を迎える時期になりそうだ。

 となると、今風にいうとDAP 2.0の時代?

 DAP 1.0で、最期まで頑張るのはおそらくCDだろうけれど、私個人は既にCDからiTMSへ、ほぼ完璧に移行してしまった。iTMSで買えない楽曲があるのは残念だけれど、それはそれで仕方がない、という感じ。
 どうしても聴きたいような超マイナーな楽曲はそもそもCDとしても高価で取り寄せに時間がかかるなど、途中で買う気を失せさせる障壁が多すぎる(本当はそういう曲こそiTMSで買えるようになって欲しいところ)。

Transgeapにはオーディオプレーヤーというよりも、むしろ耳にした曲を内蔵マイクで録音し、それが何の曲だかを調べさせる装置として興味を示している(もっとも、それをやるにはかなりいい条件で録音できないとダメだろうと平塚氏は言っていた)。

これまでオーディオプレーヤーは、iPodの後追い的なものが中心だったけれど、最近になってようやくユニークさを備えた、本当の競合製品(あるいは共存製品)と思えるものが出始めてきた。

 つい先日も某所にてソニー(株)クリエイティブセンターのFineDesignプロジェクトが開発した音楽プレーヤーのプロトタイプ数種類を見てきた(DesignTideで披露されていたもので、いくつかは最新号のAXISでも紹介されている)。携帯型の製品ではないし、そもそも自分で所有できる製品かどうかはわからないけれど、あれはあれでおもしろいので、ぜひとも製品化されることを望んでしまうーーiPodは人と音楽のつきあい方を大きく変えたと思うけれど、このつきあい方はまだまだ大きく変えられる、というか広げられると思う。

progress_bar02
【Progress Bar】手前の部分をスライドさせると、スライドさせた量に応じた量(時間)の音楽がランダム選曲され再生される(バーは曲を再生しながら少しづつ元の状態に戻っていく)。ちょっと大型オルゴール的で楽しい。


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投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2005年11月29日 | Permalink