Androidいよいよ国内発表で、iPhoneは第2ステージへ

forever

明日にもNTTドコモからAndroid端末が発表されることはもはや公然の秘密となっている。
それに先駆けてどうしてもブログを更新したくなった。

中にはAndroidが出たから、もうiPhoneは終わり、といった
やや短絡的な議論を持ち出す人がいそうな気がしたからだ。

もちろん、事実はその逆で、国内版Androidの登場こそがiPhone第2ステージの始まりに他ならない。

もはや、世界的携帯メーカー、Nokiaが撤退したことで、
ますます海外の携帯電話市場との違いが大きくなった日本の携帯電話市場だが、
世界のスマートフォンでスタンダードとなりつつあるWebKitを搭載したiPhone以外の
スマートフォンが、ようやく日本市場に復活したのだ。

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Androidは、iPhone同様に、少し前のパソコン並みの性能と表現力を持ちつつ、
携帯電話ならではのポケットに収まる携帯性の高さや、カメラ、GPS、常時接続機能を備えたスマートフォン。
もっとも、一口にスマートフォントと言っても、iPhoneより前のスマートフォンと、
iPhone以降のスマートフォンでは、できることも、使われ方もぜんぜん違う。
そこでアメリカの多くのメディアや筆者は、iPhone以降のスマートフォンを総称して
「ITphone」などと呼んでいる。

まもなく国内で発売されそうなAndroid機は、そのITphoneの記念すべき2号機なのだ。
ただし、Androidは、まだ発売が始まったばかり、実機を見ないでいうのもなんだが、
日本で本格的に花開くには、もう少し時間がかかると思う。

その一方で、既に東京の電車では、空いている時間でも1車両に2〜3人はみかけるようになった
ITphone1号機「iPhone」は、既に次のステージに進み始めている。
90%

iPhone 3Gの登場前の初代iPhoneから「顧客満足度90%」という
驚異的数字をたたき出していたiPhoneは、日本でも大勢のファンを生み、
生活や仕事のやり方に、もう元には戻れないほどの変化をもたらしてしまった。

Twitter上のコミュニティ@iphonefanには、
そうした幸せなiPhoneユーザーが日々、数百件の書き込みをして情報交換をしている。

そうiPhoneは話題に事欠かない。

Google社自身のGoogle Trendを使って、iPhone、Androidそして既にアメリカで昨年秋から発売されているAndroid端末のG1が、どれだけ話題になっているかを比較してみても、ぜんぜん勝負になっていない(リンク先は、過去12ヶ月、米国だけに限定した結果でこうだ)。
実際、昨年の米国のクリスマス商戦の結果をみても、売れているのは圧倒的にiPhoneの方で、G1の6倍近く売れているという記事もある:

AppleInsider: Apple's iPhone may have outsold Android nearly 6-to-1

この1年のIT系の話題、携帯電話系の話題、アプリケーション系の話題のうち、もっともおもしろかったもののランキングをつくったら、上位はiPhone関連の話題が独占しているんじゃなかろうか...

iPhoneを対岸の火事のように思って、気にしていなかった人は知らないかもしれないが、
今やSEGA、コナミもCAPCOMもTAITOといった日本の主力のゲームハウスも、Electronic Artsといった海外のゲームハウスも、みんな他のゲーム機よりも真剣にiPhoneのビジネスに取り組んでいる。
流通や在庫のコストもかからず、利益率も高く、簡単に世界80カ国近くに進出できるiPhoneのソフトウェアビジネスは、他のゲーム機向けのビジネスよりもよほど勢いがある。
任天堂のDS-i投入もiPhoneへの警戒心が、それなりにあったはずだ。

iPhoneで、おもしろいのは、こうしたこれまでのゲーム機市場のソフト開発者と並列して、これまでパソコン市場でしか製品を出してこなかったソフト開発者が一緒になって戦っていることだ。
例えばiPhone上でEnigmoというソフトをヒットさせたPangea Software社は、古くからのMacユーザーにはお馴染みのMac専業のソフト開発者で、このENIGMOも、元々はMac用にリリースされていたものだ。

そう、iPhoneこそが、'90年代、しきりに言われた「デジタル・コンバージェンス(Digital Convergence)」であり、21世紀のはじめによく言われた「ユビキタス・コンピューティング」の到来とも言えるかもしれない。

AppStore

現在、iPhoneのアプリケーション開発は「21世紀のゴールドラッシュ」と言われ、
「どうせアプリケーションを開発するなら、もっともビジネスチャンスの大きいiPhoneで!」ということで、世界中の多くの開発者が全力を尽くしてiPhone開発に取り組んでいる。
日本からも数週間で数千万円を売り上げたスタープログラマーが登場した。
遊びでつくったiPhoneアプリが売れ過ぎて本業をやめてしまった人もいる。
わずか2日間で58000本、4万ドル(400万円)の利益をあげた人もいる。

くだらないものもあるが、これはもしかしたら世の中のしくみを変えてしまうんじゃないかと思わせるすごいアプリケーションも、しばしば見かける(し、まもなく発表されそうな、そうしたアプリケーションのこともいくつか耳にしている)。

パソコンからiPhoneに移植したことで、劇的に便利になったものも多い。
例えばイタリアにいながらiPhoneで動くSkypeでアメリカに無料電話をかけられたのにはちょっと感動した。iPhoneとTwitterの連携も相性がよく、iPhoneでTwitterを使ったことで、困った時に助けられたことが何回あったことか...

今日も、テレビの収録で、どうしても使いたかった初代iPodを、初対面の@kazugooに貸していただいた。これは半分、Twitterの凄さだが、Twitterがここまで実用的かつ楽しくなったのはTwitterをiPhoneで使う人が増えたことが多いからだろう。

全社員に1000台のiPhoneを配ったベリングポイント社(現プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント社)につづいて、先週は青山学院大学で500台が配られ、海外ではケルン大学で配られるなど、企業や学校への導入も進んでいる。

アメリカで真っ先にiPhoneを導入した「Abilene Christian University」を始め、
多くの大学が、この世界80カ国で、大きな話題となり製品名だけ言えば、説明不要で通じる
新しいグローバル・プラットフォームを使って、新世代のカリキュラムづくりに取り組んでいる。



(他にもYouTubeの「iPhone in Education」というプレイリストにたくさんの実例があがっている)。

もちろん、そんなに凄い端末でも、世界中の半数以上がiPhoneを使うということなどはありえない。
そんなことがあったら気持ちが悪い(そこまでメジャーになった時、真っ先にiPhoneに見切りをつけて、他の携帯に走るのは、真っ先にiPhoneに走った「Think Different.」な人達かもしれない)。

iPhoneが、成功するためには、iPhoneだけで、向かうところライバルなしの状態でいるよりも、
むしろ、切磋琢磨できるライバルがいた方が健全だと言える。
そうしたiPhoneのライバルとして、もっとも有望なのがAndroidで、
これから2社目、3社目のAndroid端末が発表され、Android端末間でも、切磋琢磨が始まれば、
これは本当におもしろいことになるはずだ。

実際、Androidは、日本の携帯電話市場がどんどんグローバル市場から乖離して行く、
いわゆるガラパゴス化などと呼ばれている問題に対しても、今のところ、もっとも有望な解決策なんじゃないだろうか。
(日本にこれに代わるグローバルスタンダードのOSをつくって、広めてくれる会社があるなら話しは別だが)。

日本の携帯電話は、それはそれで世界でも希有な進化を遂げ、素晴らしい文化をつくりあげてきたとは思っている。私もiPhoneを愛用する一方で、未だにINFOBAR2も完全には手放せずにいる。

しかし、第三世代携帯電話の加入数だけで1億を突破してしまった今の日本市場では、
これまでの日本流をつづけていても、メーカーも、コンテンツプロバイダーも生き残れないし、
ITphoneへの移行は、このまま、何かよほど大きな変化がなければ、
2年後か3年後にはやってくる必然のはずだ。

そういう意味では、国内メーカーに、日本メーカーが再びグローバル市場に挑戦するきっかけを与え、
日本のソフト開発者に、iPhone同様に世界の舞台で勝負するきっかけを与えるAndroid発売開始は、
iPhoneユーザーにとっても祝福するべきできごとなのかもしれない。

というわけで、「Welcome Android, seriously.」(これが言いたかったー笑)

明日は日本のメディアの方々にも、ぜひAndroid発売のニュースを大きく祝ってもらいたい。
しかし、その一方で、さらに先のステージに進みつつあるiPhoneにも、
改めて注目をして欲しい。
これまで大手のメディアは「絵文字が使えない」や「ワンセグが見れない」といったことだけ伝えて、それっきりになっていた。
その後、iPhoneを取り巻く環境は大きく変わっている。
その実態を伝えないことには、メディアもガラパゴス化に加担していると言わざるを得ない。


【告知】
このブログを読んでいる人の中に、六本木ヒルズ内「六本木ライブラリー」の会員の人がいたら、今週の金曜日「TED TOKYO」本編が終わった後、第1回「iPhone/Androidトレンド研究 」というコミュニティーの第1回ミーティングを行う予定だ(うっかりしていて、日付が重なってしまったので、TEDのパーティーは早退する予定)。
六本木ライブラリー会員で興味がある人や、会員の友達がいる方は、ぜひ参加してもらえればと思う。
詳しくは5/1に配信された「【六本木ライブラリー】「メンバーズ・コミュニティ」のご案内(5月の定例会)」というメールの案内にそって申し込んで欲しい。

【業務連絡】
・しばらく更新をサボっていたらトップページが真っ白になっていて焦りました。スミマセン!
・来月はWWDCの取材、その前に書籍の仕事が正念場で、ほとんど推敲せずに書いています。乱筆、乱文&事実確認不十分はコメント欄でフォローさせてください...

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2009年05月18日 | Permalink

  • Re: Androidいよいよ国内発表で、iPhoneは第2ステージへ


    大変興味深くエントリー記事を拝見させて頂きましたーっ!!

    >iPhoneが、成功するためには、iPhoneだけで、向かうところライバルなしの状態でいるよりも、
    >むしろ、切磋琢磨できるライバルがいた方が健全だと言える。
    >そうしたiPhoneのライバルとして、もっとも有望なのがAndroidで、
    >これから2社目、3社目のAndroid端末が発表され、Android端末間でも、切磋琢磨が始まれば、
    >これは本当におもしろいことになるはずだ。
    まさにその通りで、Android端末, iPhone, 及び前2者に対抗すべく
    スケールアップされた既存プラットフォーム端末の
    携帯電話という既成概念を超えた『モバイル端末戦国時代』を是非とも期待したいw
    (いずれ、秀才なAndroid専業開発者の登場も目に浮かびますしw)

    余談ですが、ブログパーツ「popIn Rainbow」の秀逸なユーザビリティには脱帽しました!!
    これはもう周囲に宣伝しまくりんぐで!!!(もちろんpopIn拡張も!!)
    (実は、popInについては'08.7中頃から知っていたのですが、まだ拡張の利用は...ゴニョゴニョ)

    ただ現状での唯一の改善点としては、YouTubeオブジェクトタグの表示領域と重なった場合に
    popIn Rainbowの表示が隠れてしまう事象ですね。
    (※「グローバル・プラットフォーム」でページ内検索。)

    投稿者名 dent-de-lion

  • Re: Androidいよいよ国内発表で、iPhoneは第2ステージへ


    本当は米国ではPalm Preが大きなiPhone対抗ではもっとも有望と見られているんですよね。
    でも、それはあくまでも製品の使いやすさの話し。

    世の中を変えうる社会現象としての力を持つのは、やはり圧倒的にiPhoneです。
    今や海外では数多くの大学が、iPhoneのソフト開発やiPhoneビジネスの講義を用意しています。
    先週もある学校のboardの方が来日していたので、早朝ミーティングであってきました(日本の学生の方を受け入れたり、日本の大学と組みたい、といっていました。いずれ、このブログか、どこかのメディアに詳細を書きます)。

    Stanford大学も、その1つで、iPhoneの開発講座の授業をして、Podcastで流したところ
    なんと100万ダウンロードを達成したそうです:
    Apple Insider: Free Stanford iPhone dev podcasts downloaded 1 million times

    投稿者名 nobi

  • Re: Androidいよいよ国内発表で、iPhoneは第2ステージへ


    アレ?
    アンドロイドって今日発表でしたっけ?
    ニュース的にはH1N1に霞んでるような気もしますが。

    .......ということろでASCII.jp見てきましたが、あのデザイン大丈夫なんでしょうか。
    iPhoneというと青学が配布してるとかいう話を小耳に挟みました。
    そして携帯電話業界的には、東芝の国内での生産中止ってほうが、GDP過去最大下落率とともにショックが大きかったりします。

    投稿者名 まる