未来をデザインするアップル:次はメディア・ハブ?

未来をデザインするアップル:次はメディア・ハブ?

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今年、まだ挨拶をしていなかった方、あけましておめでとうございます。
最近、情報発信はTwitterだけで手一杯になっていました(こちらでご覧いただけます→ Twilog.org/nobi)。
今年は思いも、場所(アドレス)も新たにブログを復活させようと思います(Stay Tuned!)

今年は2000年紀、2つめのdecade、'10年代の最初の年、いろいろ新しい変化が始まる年でもあります。

私もフリー編集者の山路達也さんと組んで、2000年代最初の10年に起きた変化をまとめようと取り組んでいます(できれば皆さんからのフィードバックを反映させた上で本にまとめようと思っているので、どんどん引用して意見をもらえればと思います): Firstdecade.net/blog

特に今年は出版、ラジオ、テレビといったメディアが大きく変わるターニングポイントになりそうです。
今日、私がおもしろいコンテンツ(雑誌やラジオ番組、テレビ番組やiPhoneアプリ)をどこで見つけているかというと、そのほとんどはTwitterになりつつあります。

Twitterで友人の「今、NHK総合でやっているドキュメンタリーがおもしろい」というツブヤキを見れば、テレビをつけて、選曲が何チャンネルになっているか、何が放映されているか確認もしないうちに、リモコンの「1」のボタン(東京でのNHK総合のチャンネル番号)を押しています。

Twitterで土曜日の夕方「今日のAVANTIのゲストは◯◯さん」と言って気になる人の名前が呟かれていたら、すぐにラジオを付けて東京FMを聞くでしょう。
「このニュースおもしろい」とリンクが書かれていれば、そのWebページを見るし、「本がおもしろい」と書かれていれば、その本を買う。

最近、新聞社のホームページのトップページも、好きなブログのトップページも、ほとんど見ず、おもしろい情報はTwitterで発見して、入り口をすっ飛ばして、直接、そのコンテンツの中身にダイレクトに飛んでいます。
これは昨年秋以降、modiphiの小川浩氏が講演などでも言っていたことだが、今ではTwitterから誘導される「人々のコンテンツ消費」力が、旧来のメディアにも広がりつつ、しかも、その数的なパワーも相当なものになってきたことは、Twitterを紹介した「週刊ダイヤモンド」新年号が大売れしていることによっても証明されているのかも知れない。

J-CAST:ツイッター企画バカ売れ 「負けた」雑誌のつぶやきとは

さて、Twitterと言えばiPhoneというくらい、Twitterの成功においても大きな役割を果たし続けているiPhoneだが、そのiPhoneを出すアップル社も、今、大きなメディアの変革を行おうとしている。
アップルは米国時間の27日に、Special Eventを開催し、そこで新しいカテゴリーのデバイスを発表する、と噂されており、その新デバイスが、メディアビジネスにも大きな変化をもたらす可能性があると言われている。

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今の噂では、新しいデバイスは雑誌大程度の板(スレート)のようなデバイスで、iPhoneに似たOSで動作するという。私の元にも昨年、夏頃から8.6インチ大の画面でVGAの液晶を大量購入しているなどの情報が入り始めていた。

これが、どんなデバイスになるか、その形状や、その上で、どんなコンテンツが広がるかは、ここ数ヶ月、私だけでなく、世界中の人々にとっての大きな関心事で、このようなコンセプト動画もYouTubeに多数掲載されている。




(この3つの動画は、こちらの記事がきっかけで知りました:
Apple 2.0: Apple tablet: The video previews )

上の最初の動画は、米TIME社がスレート時代のメディアを考えて提案すべくつくったもの。
2つ目の動画は、iPhone上でも7000種類の教科書を提供しているCourseSmart社が、スレート時代の教科書のあり方を考えて提案した動画だ。

アラン・ケイの有名な言葉に「未来を予測する最良の方法は、それを発明してしまうことだ」があるが、時代に振り回される側になるのではなく、自ら時代を切り開き、その時代の覇者になろうとしているメディア企業は、自らそれなりの投資をして、こういった提言をしている。

さて、そんな渦中に、アップルはどんな未来への提言をしてくるのか?
本当のところは、来週の27日に蓋をあけてみるまではわからない。
しかし、今日になってWallstreet Journal紙でいくつかのスクープを飛ばし続けているYukari Iwatani Kaneが大きなスクープ記事を書いた:

Wall Street Journal: Apple Sees New Money in Old Media

アップルの新しいデバイスは、家族や教室において、何人かの人で共有し、メールやニュース、テレビ番組のクリップを楽しむデバイスで、内蔵されたカメラで、誰が使っているのかを見分けるのだという。
リビングルームやリフレッシュルームに1枚置いておいて、気分転換がてら手にするデバイス、ということだろうか。


これが本当なら、新しいスレートとiPhoneとは、使い方のスタイルにも大きな違いが生まれそうだ。
つまり、
iPhone: いつでも、どこでも 自分だけのコンテンツ(ホーム画面)
新スレート: 気分転換時に、いつも置かれた定位置で 半自動ユーザー切り替えで自分のコンテンツ

アップルのこのビジョンが、本当かどうかも、27日まではわからないが、仮に本当だとして、多くのメディア企業がコンテンツを提供するようになれば、それはそれでおもしろいことになってきそうだ(ただし、日本のメディア企業は、どうせしばらく静観しているんだろうなと思うと、残念でならない。いち早く時代を切り開く側に回って、スレート時代の「週刊ダイヤモンド」最新号になるメディア企業は個人的に応援していきたい)。

 ちなみに、上ではあえて記事とも番組とも書かず、「コンテンツ」という言葉を使ってきたが、
それはTwitterが、メディアの種類の違いを打ち壊し、異なるメディア間でのザッピングを現実に変えたように、実はiPhoneの上でも、既にメディア融合が始まっているからだ。

 日本では今、ようやく一部の先進的な書籍や雑誌、漫画、そしてラジオ局がiPhone上で楽しめるようになったばかりだが、米国では既に放映24時間経ったテレビ番組もiPhoneで直接購入して楽しめるし、テレビ局がつくったiPhoneアプリもたくさんある。全米のラジオ放送を好きな場所で聞けるアプリも多数あるし、教科書も、雑誌も、書籍もすべてiPhoneで楽しめるようになりつつある(話題のKindle用の電子ブックも「Kindle for iPhone」で読むことができる)。
iPhoneで、こうしたコンテンツに触れていると、「メディアの種類による壁」なんていうものは、原始時代の発想に、「放送と通信の違い」なんて恐竜時代の発想に思えてくる。
今は情報過多の時代。世の中は、あまりに多い情報が氾濫し、人々は、その中で、どうやって自分にとってrelevancyの高い情報を得るかで四苦八苦している。

 関連記事: iPhoneショック2「第5章 iPhoneで始まるソーシャルメディア × リアル革命 --- Twitterで見えた新しい世界

 そんな時代に、わざわざ、自分が持っているコンテンツを金庫にしまったまま墓場まで持ち込もうと言うのは、コンテンツをビジネスにしている人間としては馬鹿げた発想だ。
それよりも、つくりこんだ1つのコンテンツで、いかに話題をつくりつづけ、寿命を長くし、世界に少しでも広げていくかを考えていく方が健全に思えてならない。

 地上アナログ放送の終わりが近づき、出口のない出版不況が出版社をいよいよ崖際に追いつめた2010年。メディア企業は、いよいよ、これから先、10年、20年、30年先の未来を真剣に考えなければならない状況に追いつめられているのだ。

 ちなみに、上で、メディア企業が目の前50cmの視点で、新時代を提案しているのに対し、アップルが半径5メートル前後の視点で、これからの時代の情景を描いているのがおもしろい(もちろん、アップルは50cmの視点も、国単位での視点も、世界80カ国展開の視点も同時に深めていると思うが)。

 日本のメディア企業の救世主達は、どんな距離感を描いて未来を描くのかが気になるところだが、1つ願いたいのは、これからの時代、グローバル展開の視点を持たずにビジョンを描いても、それは日本だけで数年だけつづいた「特異現象」で終わってしまい、その特異現象への寄り道のために、大きなお金が失われることになりかねない、ということだ。
もし、今、既に提案されている大きなビジョンを上回るグローバルビジョンを描けない場合は、早い段階で、新時代を切り開く応援団に回るのも1つの手ではないか。


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P.S. アップルが発表する前に、1つだけ私もはずれること覚悟で大胆予想:

アップル社のスレートの形だけれど、机の上に置いてもコンテンツを読めるようにするなら、傾斜が必要。しかし、稼働部は製品を壊れやすくし、寿命を短くする原因でもあり、アップルはこれを好まない。となると、横から見た感じは、Apple Wireless Keyboardのような、シンプルな円と板を組み合わせた形になるんじゃないかとお正月に思い立ちました ;-)
Apple WirelessKeyboard
(image courtesy of Apple, Inc.)

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2010年を始めるにあたってお勧めしたい本:

・日本発のユニークな発想でエネルギー循環社会を提案している書籍:

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投稿者名 メンテナンス用 投稿日時 2010年01月22日 | Permalink