音の情景を楽しむ

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iPodが、なぜ世界的にあそこまで成功したか。
その理由はいくつもあると思うけれど、
無視できない大きな理由の1つに、
すっごくいいタイミングで「音楽って、実はすごく楽しいものなんだ」
と思い出させてくれたことがあるんじゃないかと思う。

音楽って本来、楽しいもののはずだったのに、

家電売り場では、
ひたすら高音質を追求している製品やら、小ささを売りにしている製品と、
楽しさを忘れてのスペック追求が続いていた。

一方のコンシューマーは、NapsterやらGnutellaなんかの登場で、
インターネット経由で、とにかく無料でやたらと手に入れまくることばかりをみんなが楽しんでしまい
じっくりと音楽を聴いて楽しむことが忘れられてしまった。
(実は私はNapsterなどは、ほとんど使ったことがなかったのだが、パソコン音痴の妹でも、
 当時、iTunesは知らなくてもNapsterは知っていたくらいなのだから、一般にもかなり
 広く浸透していたのは実感している)。

そしてこうした動きで、著作権団体やらレーベルやらが、やたらとDRMを声高に唱い始めて、
性悪説で、とにかく厳しくとりしまることが、やたらとニュースで取り上げられた
(私も記事を書いていた側の人間だ)。

そんな風に、音楽が「楽しさ」とか「心地よさ」といった、本来あるべきコンテクストから
切り離された形でばかり話題になっていたときに、
iPodは機械音痴にも簡単な使いやすいインターフェースで、
再びいつでもどこでも音楽を楽しめることの素晴らしさを再認識させてくれた。

あれから7年の時間が経ち、iPodはケータイ電話と融合するようになった。
iPhoneは、ここ数年騒がれていたWeb 2.0というものの便利さのすべてを、
いつでも思い立ったときすぐに、ポケットから取り出して簡単に利用できるようにした点が
なんといっても画期的だろう。

しかし、その便利さが注目されすぎるあまり、
再び音楽の楽しさが忘れられているような気がしないでもない。
and up

今日、久々に表参道にあるand upを訪問した。
(webページはflashベースなので、iPhoneでは、まだ見れません ;-)  )
私が米国版Wiredデビューした記事で紹介したあのお店である。

Wired News: Aural Heaven: iPod and analog
日本語訳記事:東京発、『iPod』のアンティークな楽しみ方

その後、坂本龍一さんをはじめとする一流ミュージシャンにも認められ、世界中のメディアに取り上げられることとなり、iPod用真空管アンプブームの火付け役にもなった。

 and upの提案は、iPodの音楽を、FMトランスミッターを使って飛ばし、真空管ラジオのスピーカーを通して楽しむというもの。
 店長、石井さん曰く「やたらと高音質を追求した最近のオーディオ機器は、ピンと張りつめたような緊張感があってなんだか疲れる部分がある。 それに比べて、真空管ラジオのスピーカーから聴こえてくる音楽は、ステレオですらないのだけれど、何かこう優しくて、心からリラックスできていいのだ」という。
 実際、and upで最初にこの体験をしたときの衝撃は、今も忘れられない。
 まさにaural heavenで、なんだか冷房もない扇風機と真空管ラジオの時代の、素朴ではあるけれど、人々がもっと1日の時間や生活を楽しむゆとりがあった、そんな時代の情景が目の前に浮かんできて、音楽を楽しんでいるにも関わらず、「聴け!」と迫られている感じがしない、というか、何か他のことをしながらでも音楽が楽しめそうというか、本当にその場の情景と音楽とが一体になったかのような心地よさを感じることができた。
 古い真空管から(古いんだけれど新しい)「新空間」が生み出されているような印象すら覚えた。
 (オヤジぽいダジャレで申し訳ない)

 真空管ラジオは、たしかに音楽にちょっとした化学変化をもたらしてくれるようだ。

 さて、そのand upを、今日、久しぶりに訪問してみたところ、おもしろいイベントについて教えてもらった。
 SHISEIDO GALLERYで、なんと6月24日から開催している「夢の響宴」という企画展だ(8月6日まで)。

SHISEIDO GALLERY: 夢の響宴



 日仏交流150周年事業の1つらしく、フランス大使館も協力している。

 年代物のフランスの料理店のメニューをモチーフに、graf media gmと7人のアーティストが、
「おもてなし」をテーマにしたインスタレーションを行っているのだという。
 なんと、これだけでもかなり興味をそそられるが、音楽家で舞台音楽を手がけている阿部海太郎さんが、今回のインスタレーション用につくった音楽を流す道具としてand upの真空管ラジオを使っているのだという。
 真空管ラジオがつくりだす(古いのに)新しい空間って、いったいどんなものなのか、ぜひ体験してみたい。
 というわけで、仕事は詰まっているけれど、どこかで1日、休みをつくり、資生堂ギャラリーに言ってみようと思う。


さて、ここからand upや「夢の響宴」が描く世界観とはぜんぜん違う世界観にワープするので、
ギア・チェンジして欲しい。


音楽 × 舞台音楽家 × 空間演出 といえば、
もう1つ、気になっているのが、こちらのイベント。

Le petit ballet des Rolly



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会場がスイスなので、残念ながら私は行きたくても行けないけれど、
あのオノ・セイゲンさんが、あのモントルージャズフェスティバルのために、あのソニーのRollyを使ってバレーの舞台演出をしかけたというのだから、なんともおもしろそうだ。

念のためイベント日時と場所を書くと(上のページのEnglishページとFrançaisにだけ情報がある):
Petit Palais at Montreux Palace
18th July 2008
3PM (T.B.A. - 4 programs per hour)



Rollyは、私も持っているが、1台で踊らせるのも楽しいが、
やはりRollyオーナー同士で持ち寄って、数台で踊らせるのが圧倒的に楽しい!

私はこれまで最高3台、一緒に踊らせたことがあるが、
もっとRollyをたくさん並べてみて、シンクロダンスをさせられないかと思っていたところ、
その夢が果たされるようだ。しかも、セイゲンさんの演出で!

これって東京ではやってくれないんだろうか?
せめて映像だけでも見てみたいなぁ...

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月16日 | Permalink