TypeTrace、パリからプラハへ

以前、CNet Japanでも紹介させてもらった遠藤拓己さんのアート作品、「TypeTrace」が、土曜日までエッフェル塔のすぐ近くフランス国立シャイヨー劇場(Theatre National de Chaoillot)で展示されています(オープン時間は19時から20時30分までの短い時間なので注意)。

CNet Japan:「オープンソース」×「アート」=?--DIVVY/dualプロジェクトより

遠藤さんが展示の様子をFlickrで公開していました。

[上のスライドショーは、nobilog2の現在のレイアウトにあわせて横幅を短くしています。すみません。クリックして遠藤さんのFlickrをご覧ください]

3月末から4月にかけてはプラハの美術館での展示が、そして2007年11月には再びパリでの展示が決まったそうです。
「TypeTrace」は思考の痕跡を残すテキスト入力/再生ソフト。
普通、パソコンで打ち込んだ文字は、誰が打ち込んでも、どんなに思いを込めても無表情の同じ形。
メニューでフォントの種類やサイズを変えることはできても、それは跡づけの装飾に過ぎず、タイプしていた時の感情を伝えるものではない。
 そういう意味では、手書きの文字の方が、よっぽど背景の物語が伝わってくる。

TypeTraceは、この文を書くときの思考の痕跡を残そうと試みた作品で、タイプにかかる時間に応じて文字がどんどん大きくなっていく。
熟考してからタイプした単語は、そこだけ

こんな感じ

で、文字が大きくなり、ささっと書き終えてしまった部分はそのままの大きさになる。

TypeTraceでもう一つおもしろいのは、タイプしている様子をそのまま記録して、QuickTimeムービーのように再生できること。

文章を書いている途中で、文章を消して打ち直したり、誤変換したりといった様子もすべて「再生」される。

実はちょっとした縁で遠藤さんに「TypeTrace」を使わせてもらったので、これを使って遠藤さんにメールを書いてみたが、その体験であらためてこのソフトのすごさがわかった。

メールを書いている人と、読んでいる人が同じ長さの時間を共有する。
ここで生まれるintimateな感触は、これまでの効率優先のソフトにはなかったものだ。

他の人が書いている文章を再生してみるのもおもしろい。
「あ、次はきっとこんな文章を書くんだろうな...あれ、違う? あ、消している、消している。やっぱり、そうだ。ほらほら。うんうん、わかる」とタイプしている様子をリアルタイムで再生しながら、書き手の感情に移入して、書く人と同じ側を向きながら文章を読むことができる。

このソフト、ぜひとも皆に体験させたい。Typetrace004




投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2007年01月25日 | Permalink