非同期書き置き型コミュニケーション
[updated 12/24: 13:57: 相手によってもコミュニケーションの仕方が変わる。その視点が抜けていたので、最後に追加しました]
先日、「ドリオ」の記事を書いたところ、mixiの同じ記事にコメントがついた
「ん〜少なくとも私の周りでは、仕事中にメッセンジャーは厳禁です。」
これを聞いて、頭の中に浮かんだのは大学時代の懐かしい後継。
大学のMacがズラっと並んだラボには入り口に張り紙があり、こう書かれていた:
「Broadcast禁止」
「Broadcast」とは、ドイツのカールスルーエ大学のJoachim Lindenberg氏が1988年に開発したシェアウェア(25ドル)。
最終版はBroadcast 2.1
間違いなく、Macのシェアウェア史に残る1本に数えることができるソフトだ。
プリンタードライバーを選択する「セレクター」というソフトで、このソフトのアイコンを選ぶ。
するとネットワーク上の他のBroadcastユーザーの一覧が表示されるので、名前を入れ、メッセージをいれる。
送信ボタンを押すと、相手のMacで「プルルルル」と音がして、こんな感じで、メッセージが表示される(どなたかより鮮明な画像提供を!)
[画像提供:マミタン:メッセージを残しているのは「明日のジョー」ともちょっとだけ縁がある。力石(ちからいし)君。「欲しい方」が「ほいしかた」になっているのが彼っぽい(解説:マミタン)]
極めて単純なプッシュ型のコミュニケーション。でも社内LANが整備されている環境では、極めて便利で、学校で職場であっという間に広まっていく。
私も愛用期間が長かった。Mac OS Xの時代になってもクラシック環境を使って使うことができ、iChatが発表される前年くらいまでは、WWDCの広大なスペースで友人と連絡を取るのに使っていた。
Macintouchには、PowerPC Macでは、Mac OS X v 10.4.1でも利用できるという報告も届いている。
ただ、中毒性が高く、これを使って授業中や仕事中にもオシャベリをする人が増えてしまうため、私の学校のラボでも禁止されていたし、某Mac雑誌の編集部でも一時、自粛が求められていた。
Broadcastでは、相手にメッセージを返信するのは簡単だが、新たに送るには、一度、セレクターを起動して、相手を選び直さなければならない。
このため、一度、メッセージが送られてくると、なんとなくくだらない内容でも、とりあえず返事をしておいて話のキャッチボールを続けてしまう。これも同ソフトの中毒性を高める一因だったのかもしれない。
もっとも、Broadcastでも、使い方によっては、それほど「悪い」ソフトにはならなかったと思う。
一番、大事なのは話者の気構えで、メッセージを送ったとしても、「相手からすぐに返事が返ってくるとは限らない」ということを承知するだけで、かなり使い方が変わってくる。
「〜〜〜の書類、印刷して提出しておきました。どうしたらいいですか?」のように相手の返信を期待する話し方から、
「〜〜〜の書類、印刷して提出しておいたのでよろしく。」のように返事を期待しない話し方に変わる。
これが「書き置き型コミュニケーション」の出発点。
この書き置き型コミュニケーションを、よりうまいメタファーで広めたのが(株)プライアーの秀作、「YABUMI」だろう。こちらも今ではあまり情報が残っていない。
ascii24の記事「プライア、メッセンジャー&チャットソフト『YABUMI ver.2.1』発表」
上の記事では触れられていないが、ちゃんとMac版もあった。
こちらは相手を選び、メッセージを打ち込むと、相手側パソコンに、木戸に矢がつきささったような音がしてメッセージが表示される。
Braodcastと対して変わらない気もするけれど、矢にくくりつけた手紙という素晴らしいメタファーと、(おそらくBroadcastよりは)相手への初メッセージを送りやすかったからか、「書き置き型コミュニケーション」に使えていた気がする。
それからiChatまでの間には少しブランクがあり、私も利用ユーザーの多さからBroadcastに戻ったりもしたのだが...
iChatは、他のどのチャットソフトよりも会話が楽しめるチャットソフトだと思う。
フキダシ型のインターフェースもさることながら、そのフキダシのセリフとして画像などを挿入できる点も素晴らしい。
ただし、楽し過ぎてついつい会話が弾みすぎるのが玉にきずかな。
(こういうあたり、やはりソフトの見た目の影響は無視できない)。
それと比べると、今日、私がSkypeでやっているコミュニケーションはかなり違う。
Skypeのウィンドウ自体が一昔前のパソコン通信のチャットに近い印象で、そのせいなのか「返事をしなければならない」というプレッシャーもあまり感じない(私だけ?)
OnとOffがない、つながりっぱなしのコミュニケーションなので、「どうも」とか「ではでは」も必要なく、要件だけを書き置きすることができる。
返事を書く場合のタイミングも、自分のペース次第。
もちろん、すべての人とのコミュニケーションがそうではなくて、やはり「今いますか?」とだけ書き置きし、こちらが返事をしない限り、要件を書き始めてくれない人もいる−−−そうすると、こちらと相手の都合が同期できて時にしかコミュニケーションができない。私のSkypeチャットは非同期型で行われることが多い。
ただ、一度、非同期型コミュニケーションに慣れると、これ以上に便利なコミュニケーション手段はないような気がする。
もちろん、リアルタイムにコミュニケーションをする必要がある場合もあるが、その準備もSkypeに「今日の夕方5時くらい、ちょっとチャットできますか?」と書き置きしておけば、都合がよければ、できるし。それまでメッセージを読んでいなければ
「ごめん、5時の約束逃しちゃいました。7時でどうですか?」とできる。
もし、どうしても急ぎでリアルタイムの話をする必要があれば、チャットを離れて相手に電話をすれば済むことだ。
それにしても、パソコンを使った対話の手段の歴史についても、いずれしっかりまとめてみたいな。
昔はパソコン通信にチャットルームがあって、そこでキーボードのかな入力を使って、半角カタカタで文字を打ち込んでいました。やがて、PC-9800が広まって、漢字でないとチャットに参加できなくなった。
たまにモデム開放されているUNIXサーバーにログインして、UNIXの「chat」コマンドとかも試してみました(ちゃんと、Mac OS XのTerminalにもコマンドとしては残っています)。
友達の家にモデムで電話して、パソコン同士を直接つなげて文字を打ち合ったこともあります(もしかして、あれが人生初のP2P体験?モデムが300bpsの頃でした)。
あの時代は、まだパソコンもネットワークも非力だったけれど、使っている人達の発想は豊かな時代だった。
人口無能という名前で、チャットで自動応答するプログラムをつくっている人達もいました(あれこそが「ドリオ」を含むbotのルーツでしょう)。
文字のやり取りしかできないチャットを使って、データ通信を行いゲームをやろうとしている人達もいました。
(「ある晴れた日に公園で」でしたっけ?)
でも、真っ黒の画面にただ文字が流れていくだけのパソコン通信が全盛の時代、私は一足先に未来のパソコン通信を目にすることになります。
最初はMac専用のサービスとしてスタートしたAmerica Online(AOL)でした。
マウスを使って、サービスを選んで、情報を引き出したり、ソフトをダウンロードできる、というのは当時、本当に新鮮でした。
でも、そのAOLで、もう1つ驚いたのがInstant Messengerの機能。
同サービスの接続中、突然、サービスの管理者とかから「やあ、ちゃんとAOLをうまく使えていますか?」みたいな感じでメッセージが送られてくる(昔はAOLも小規模でフレンドリーだった)。
このAOLのInstant messenger機能はインターネット時代の到来と共に、インターネット経由で利用ができるようになるけれど、インターネット上の覇権争いが厳しい時代で、AOLがMicrosoftなどからの互換性を実現しようという話を拒否してしまい、そのあたりからIMのプロトコルはバラバラに...
ちなみに、もし、Instant Messenger/チャットソフトの開発者の間に、壁がなければ、そしてまっさらな状態からスタートして1からソフトをつくってもらえるなら、こんなソフトが理想ではないかと思います。
iChatから欲しい機能:
・画面の見た目:
あの吹き出しウィンドウにまさる外観はない。あれだけで本当に話が楽しくなる。
でも、仕事の話し用には、もうちょっと事務的な表示も必要ーー実はiChatにはそのための機能もあり、私は既に仕事の話しはこの表示で受けています
このモードだと何がいいかというと、会話の内容をそのままコピーして、確認用の電子メールや、イントラブログにペースとできることです(どれが誰のセリフかちゃんとわかります)
会話の中に画像やPDF、動画などを簡単にペーストできる機能
・音声チャット中に出るレベルメーター(誰が話しているのかわかりやすい)
・4人までのビデオチャット
・Spotlight検索に対応していること
Skypeから欲しい機能
・ほとんどのルーターやファイヤーウォールを超え確実につながる機能
・相手がオフラインの時でも、とりあえず書き置きをしておけば、相手がネット接続したタイミングで自動的に届く
・複数人でのチャットでは自動的にログを同期してくれる(それもP2P式で)
・P2Pによるファイル高速転送
・招待した人だけ
・ビデオチャット/音声チャット間のスムースな切り替え
・1つのウィンドウで複数のチャットをタブ切り替え表示(iChatではLeopardで実現)
・チャットのチャンネルにタイトルをつけてブックマークできる
・スマートフォンがある
・「ドリオ」がある
・複数人で行う音声会議に、電話の相手を混ぜることができる
Google Talkが優れている点
・Gmailに統合され、検索ができること
・オープンな標準プロトコル:Jabber
Windows Live Messengerが優れているところ:
・ユーザーベースが大きい
・一部のMS系サービスのアラート機能として連動
・ホワイトボード機能や、動画ではないパラパラ漫画的ビデオチャット(Windows版ソフトのみ)
・BREW携帯電話(au系)用のクライアントがある
Yahoo! Messengeのいいところ:
・充実したemoticon
・Windows Live Messengerとの相互メッセージング
これらの機能を併せ持ったソフトが出たら最強なんだけれどなぁ...
P.S.記事を書いてからこんなページを発見:
IM-NET: Instant Messenger History
この年表にある'97年のAOL Instant Messenger(AIM)サービス開始は、AOLの専用ソフトを使わないでも話せるインターネット版のIMのこと。私が上で行っているのはパソコン通信サービスないだけで完結しているIMです(当時のAOLはメール機能やチャット機能とは別にこれを用意していました)。
ところで、冒頭で「仕事中厳禁」だった人のmixi日記で、再びこの話題があがっていました。
それを読んで1つ大事な視点が抜けていることに気がつきました。
彼は同じスペースを共有している職場でのメッセージングについて話していた。
それに対して、私は最近、自宅で作業をしているので、話し相手は全員その場にいない人達。
在宅勤務の人とか、そういう人達には役立つけれど、同じ職場の目と鼻の先にいるにも関わらず、メッセンジャーを使って話し合う、という部分にもしかしたらメッセンジャーの非生産的な使い方を助長する部分があるのかも。
とはいえ、同じ職場でも例えば話し合いの内容のログをとって、後から参照できるようにしたり、検索したり、といった使い方はあるような気がするけれど。
これと関係あるようでもあり、ないようでもある話なんですが、先日、bossa mac(MacPeopleの雑誌内雑誌)でスカンジナビアモダンの方にお話を聞きました。ここは北欧のオフィス家具を日本で広めようとしているおもしろい会社。
彼らによると北欧では、最近、サイレントルームというのが広まり始めているらしい。皆がパソコンの電子メールとかでコミュニケーションするようになって、オフィスがシーンとするようになった。その分、電話とかもかけづらくなった。でも、だからといって私用の電話を掛けに会社の外にまででてもらったのではかえって生産性が低くなる。だから社内でもちょっとだけプライバシーを保って私用電話をかけられるサイレントルームを用意するようになったというのだ。
どういうコミュニケーションがいいのか?
答えはないと思う。
われわれはWeb 2.0の永遠のベータじゃないけれど、コミュニケーション手段そのものが大きな進化の過程で、あっちを試したり、こっちを試したりしている過程にあるのだと思う。
先日、「ドリオ」の記事を書いたところ、mixiの同じ記事にコメントがついた
「ん〜少なくとも私の周りでは、仕事中にメッセンジャーは厳禁です。」
これを聞いて、頭の中に浮かんだのは大学時代の懐かしい後継。
大学のMacがズラっと並んだラボには入り口に張り紙があり、こう書かれていた:
「Broadcast禁止」
「Broadcast」とは、ドイツのカールスルーエ大学のJoachim Lindenberg氏が1988年に開発したシェアウェア(25ドル)。
最終版はBroadcast 2.1
間違いなく、Macのシェアウェア史に残る1本に数えることができるソフトだ。
プリンタードライバーを選択する「セレクター」というソフトで、このソフトのアイコンを選ぶ。
するとネットワーク上の他のBroadcastユーザーの一覧が表示されるので、名前を入れ、メッセージをいれる。
送信ボタンを押すと、相手のMacで「プルルルル」と音がして、こんな感じで、メッセージが表示される(どなたかより鮮明な画像提供を!)
[画像提供:マミタン:メッセージを残しているのは「明日のジョー」ともちょっとだけ縁がある。力石(ちからいし)君。「欲しい方」が「ほいしかた」になっているのが彼っぽい(解説:マミタン)]
極めて単純なプッシュ型のコミュニケーション。でも社内LANが整備されている環境では、極めて便利で、学校で職場であっという間に広まっていく。
私も愛用期間が長かった。Mac OS Xの時代になってもクラシック環境を使って使うことができ、iChatが発表される前年くらいまでは、WWDCの広大なスペースで友人と連絡を取るのに使っていた。
Macintouchには、PowerPC Macでは、Mac OS X v 10.4.1でも利用できるという報告も届いている。
ただ、中毒性が高く、これを使って授業中や仕事中にもオシャベリをする人が増えてしまうため、私の学校のラボでも禁止されていたし、某Mac雑誌の編集部でも一時、自粛が求められていた。
Broadcastでは、相手にメッセージを返信するのは簡単だが、新たに送るには、一度、セレクターを起動して、相手を選び直さなければならない。
このため、一度、メッセージが送られてくると、なんとなくくだらない内容でも、とりあえず返事をしておいて話のキャッチボールを続けてしまう。これも同ソフトの中毒性を高める一因だったのかもしれない。
もっとも、Broadcastでも、使い方によっては、それほど「悪い」ソフトにはならなかったと思う。
一番、大事なのは話者の気構えで、メッセージを送ったとしても、「相手からすぐに返事が返ってくるとは限らない」ということを承知するだけで、かなり使い方が変わってくる。
「〜〜〜の書類、印刷して提出しておきました。どうしたらいいですか?」のように相手の返信を期待する話し方から、
「〜〜〜の書類、印刷して提出しておいたのでよろしく。」のように返事を期待しない話し方に変わる。
これが「書き置き型コミュニケーション」の出発点。
この書き置き型コミュニケーションを、よりうまいメタファーで広めたのが(株)プライアーの秀作、「YABUMI」だろう。こちらも今ではあまり情報が残っていない。
ascii24の記事「プライア、メッセンジャー&チャットソフト『YABUMI ver.2.1』発表」
上の記事では触れられていないが、ちゃんとMac版もあった。
こちらは相手を選び、メッセージを打ち込むと、相手側パソコンに、木戸に矢がつきささったような音がしてメッセージが表示される。
Braodcastと対して変わらない気もするけれど、矢にくくりつけた手紙という素晴らしいメタファーと、(おそらくBroadcastよりは)相手への初メッセージを送りやすかったからか、「書き置き型コミュニケーション」に使えていた気がする。
それからiChatまでの間には少しブランクがあり、私も利用ユーザーの多さからBroadcastに戻ったりもしたのだが...
iChatは、他のどのチャットソフトよりも会話が楽しめるチャットソフトだと思う。
フキダシ型のインターフェースもさることながら、そのフキダシのセリフとして画像などを挿入できる点も素晴らしい。
ただし、楽し過ぎてついつい会話が弾みすぎるのが玉にきずかな。
(こういうあたり、やはりソフトの見た目の影響は無視できない)。
それと比べると、今日、私がSkypeでやっているコミュニケーションはかなり違う。
Skypeのウィンドウ自体が一昔前のパソコン通信のチャットに近い印象で、そのせいなのか「返事をしなければならない」というプレッシャーもあまり感じない(私だけ?)
OnとOffがない、つながりっぱなしのコミュニケーションなので、「どうも」とか「ではでは」も必要なく、要件だけを書き置きすることができる。
返事を書く場合のタイミングも、自分のペース次第。
もちろん、すべての人とのコミュニケーションがそうではなくて、やはり「今いますか?」とだけ書き置きし、こちらが返事をしない限り、要件を書き始めてくれない人もいる−−−そうすると、こちらと相手の都合が同期できて時にしかコミュニケーションができない。私のSkypeチャットは非同期型で行われることが多い。
ただ、一度、非同期型コミュニケーションに慣れると、これ以上に便利なコミュニケーション手段はないような気がする。
もちろん、リアルタイムにコミュニケーションをする必要がある場合もあるが、その準備もSkypeに「今日の夕方5時くらい、ちょっとチャットできますか?」と書き置きしておけば、都合がよければ、できるし。それまでメッセージを読んでいなければ
「ごめん、5時の約束逃しちゃいました。7時でどうですか?」とできる。
もし、どうしても急ぎでリアルタイムの話をする必要があれば、チャットを離れて相手に電話をすれば済むことだ。
それにしても、パソコンを使った対話の手段の歴史についても、いずれしっかりまとめてみたいな。
昔はパソコン通信にチャットルームがあって、そこでキーボードのかな入力を使って、半角カタカタで文字を打ち込んでいました。やがて、PC-9800が広まって、漢字でないとチャットに参加できなくなった。
たまにモデム開放されているUNIXサーバーにログインして、UNIXの「chat」コマンドとかも試してみました(ちゃんと、Mac OS XのTerminalにもコマンドとしては残っています)。
友達の家にモデムで電話して、パソコン同士を直接つなげて文字を打ち合ったこともあります(もしかして、あれが人生初のP2P体験?モデムが300bpsの頃でした)。
あの時代は、まだパソコンもネットワークも非力だったけれど、使っている人達の発想は豊かな時代だった。
人口無能という名前で、チャットで自動応答するプログラムをつくっている人達もいました(あれこそが「ドリオ」を含むbotのルーツでしょう)。
文字のやり取りしかできないチャットを使って、データ通信を行いゲームをやろうとしている人達もいました。
(「ある晴れた日に公園で」でしたっけ?)
でも、真っ黒の画面にただ文字が流れていくだけのパソコン通信が全盛の時代、私は一足先に未来のパソコン通信を目にすることになります。
最初はMac専用のサービスとしてスタートしたAmerica Online(AOL)でした。
マウスを使って、サービスを選んで、情報を引き出したり、ソフトをダウンロードできる、というのは当時、本当に新鮮でした。
でも、そのAOLで、もう1つ驚いたのがInstant Messengerの機能。
同サービスの接続中、突然、サービスの管理者とかから「やあ、ちゃんとAOLをうまく使えていますか?」みたいな感じでメッセージが送られてくる(昔はAOLも小規模でフレンドリーだった)。
このAOLのInstant messenger機能はインターネット時代の到来と共に、インターネット経由で利用ができるようになるけれど、インターネット上の覇権争いが厳しい時代で、AOLがMicrosoftなどからの互換性を実現しようという話を拒否してしまい、そのあたりからIMのプロトコルはバラバラに...
ちなみに、もし、Instant Messenger/チャットソフトの開発者の間に、壁がなければ、そしてまっさらな状態からスタートして1からソフトをつくってもらえるなら、こんなソフトが理想ではないかと思います。
iChatから欲しい機能:
・画面の見た目:
あの吹き出しウィンドウにまさる外観はない。あれだけで本当に話が楽しくなる。
でも、仕事の話し用には、もうちょっと事務的な表示も必要ーー実はiChatにはそのための機能もあり、私は既に仕事の話しはこの表示で受けています
このモードだと何がいいかというと、会話の内容をそのままコピーして、確認用の電子メールや、イントラブログにペースとできることです(どれが誰のセリフかちゃんとわかります)
会話の中に画像やPDF、動画などを簡単にペーストできる機能
・音声チャット中に出るレベルメーター(誰が話しているのかわかりやすい)
・4人までのビデオチャット
・Spotlight検索に対応していること
Skypeから欲しい機能
・ほとんどのルーターやファイヤーウォールを超え確実につながる機能
・相手がオフラインの時でも、とりあえず書き置きをしておけば、相手がネット接続したタイミングで自動的に届く
・複数人でのチャットでは自動的にログを同期してくれる(それもP2P式で)
・P2Pによるファイル高速転送
・招待した人だけ
・ビデオチャット/音声チャット間のスムースな切り替え
・1つのウィンドウで複数のチャットをタブ切り替え表示(iChatではLeopardで実現)
・チャットのチャンネルにタイトルをつけてブックマークできる
・スマートフォンがある
・「ドリオ」がある
・複数人で行う音声会議に、電話の相手を混ぜることができる
Google Talkが優れている点
・Gmailに統合され、検索ができること
・オープンな標準プロトコル:Jabber
Windows Live Messengerが優れているところ:
・ユーザーベースが大きい
・一部のMS系サービスのアラート機能として連動
・ホワイトボード機能や、動画ではないパラパラ漫画的ビデオチャット(Windows版ソフトのみ)
・BREW携帯電話(au系)用のクライアントがある
Yahoo! Messengeのいいところ:
・充実したemoticon
・Windows Live Messengerとの相互メッセージング
これらの機能を併せ持ったソフトが出たら最強なんだけれどなぁ...
P.S.記事を書いてからこんなページを発見:
IM-NET: Instant Messenger History
この年表にある'97年のAOL Instant Messenger(AIM)サービス開始は、AOLの専用ソフトを使わないでも話せるインターネット版のIMのこと。私が上で行っているのはパソコン通信サービスないだけで完結しているIMです(当時のAOLはメール機能やチャット機能とは別にこれを用意していました)。
ところで、冒頭で「仕事中厳禁」だった人のmixi日記で、再びこの話題があがっていました。
それを読んで1つ大事な視点が抜けていることに気がつきました。
彼は同じスペースを共有している職場でのメッセージングについて話していた。
それに対して、私は最近、自宅で作業をしているので、話し相手は全員その場にいない人達。
在宅勤務の人とか、そういう人達には役立つけれど、同じ職場の目と鼻の先にいるにも関わらず、メッセンジャーを使って話し合う、という部分にもしかしたらメッセンジャーの非生産的な使い方を助長する部分があるのかも。
とはいえ、同じ職場でも例えば話し合いの内容のログをとって、後から参照できるようにしたり、検索したり、といった使い方はあるような気がするけれど。
これと関係あるようでもあり、ないようでもある話なんですが、先日、bossa mac(MacPeopleの雑誌内雑誌)でスカンジナビアモダンの方にお話を聞きました。ここは北欧のオフィス家具を日本で広めようとしているおもしろい会社。
彼らによると北欧では、最近、サイレントルームというのが広まり始めているらしい。皆がパソコンの電子メールとかでコミュニケーションするようになって、オフィスがシーンとするようになった。その分、電話とかもかけづらくなった。でも、だからといって私用の電話を掛けに会社の外にまででてもらったのではかえって生産性が低くなる。だから社内でもちょっとだけプライバシーを保って私用電話をかけられるサイレントルームを用意するようになったというのだ。
どういうコミュニケーションがいいのか?
答えはないと思う。
われわれはWeb 2.0の永遠のベータじゃないけれど、コミュニケーション手段そのものが大きな進化の過程で、あっちを試したり、こっちを試したりしている過程にあるのだと思う。