今は、新型iPhone発表のまさにそのタイミングだが、私はこのブログ記事だけ書いたら、さっさと寝て、明日の取材に備えるつもりだ。明日は朝8時から30〜60分起きにスケジュールビッチリのノンストップアクション状態で、明後日は朝6:20AMに羽田から福岡へ旅立つ。
今から体力を温存しないと、かなりヤバいので、発表は見ずに寝るつもりだが、今晩は新型Macの発表はない、と見た。
今日、Softbank Summit 2008が行われた。そして孫正義さんの基調講演で、日本でもついにiPhoneを本格的に法人向け市場に向けて売り出すことが発表された。
1時間の講演の後半、孫氏は「今日の来場者で、自分の携帯電話を使って、会社のメールの読み書きをしている人」と聞いた。手をあげたのは2800名の来場者の3〜5%といったところ。
孫さんは「日本の携帯電話はゲームやワンセグとエンターテイメントの機能は世界でも最先端に優れているけれど、オフィスオートメーションのツールとしては遅れている」と指摘。最前列に座っていたアメリカ人に講演中、英語で同意を求めていた。
この最前列のアメリカ人、確認はとれていないが、おそらくアップル社のジェレミー氏。
iPhone 2.0 OSは、FORTUNE 500企業のなんと35%でベータテストが行われたが、そのiPhoneの法人営業部隊の1人である。孫さんの講演後、Softbank Summitの展示コーナーに並べられたたくさんのiPhoneと孫さんの講演にすっかり満足した様子だった。
確かに今日「も」孫さんの講演はなかなかよかった。
iPhoneの話しとなると、非常に饒舌になり、実感がこもっているから説得力もある。
米国のアップルが公開しているiPhoneの法人利用の事例は、ほんのわずかだが、
孫さんは、架空のものばかりだが、20近いiPhoneの導入例のシナリオを紹介。
どれもそれなりに説得力がある物だった。
2800人の来場者の中で、iPhoneがどんなものかを、本当に理解している人は少ない様子で、みんなWebの記事だけ読んで知った気になっている人が多いのか、孫さんが「こんなこともできる」、「あんなこともできる」とデモをする度に、ドヨめいていた。
【注:以下の段落、個人が特定できそうだったので表現をボカしました】
最近、大企業の重鎮の方々と接することが多いが、やはり、こちらもそれなりに凄いと思っている会社は、ライバルの会社の製品であっても、オープンな気持ちで「やはり凄い」とiPhoneを受け入れる。
たまに「え、でも、iPhoneって〜〜では評判わるいでしょう?」とアラさがしをしている人もいるが、実はそういう人ほどiPhoneを実はちゃんと触ったことがない人だというのがよくわかる(iPhoneって「日本語がローマ字入力なんでしょう?」なんていう人もいた。もっとも、「アプリが起動しなくなるバグ、あれは大変だよね」という人は知っている人だろう ー笑)。
愛社精神は大事だけれど、だからといって、話題の製品を「劣っているに決まっている」と決めつけてちゃんと見ることもせずにいる人が、実は多いんじゃないかと、ちょっと不安になった。
佐藤可士和さんもいっているが、今の消費者は、そんな製品でもりあがるほどバカではない。
むしろ、情報過多の中から、瞬時に正当な情報を見つける訓練をされている消費者の方が、自分の会社の製品だけに盲目になっている人達より、ものがよく見えているんじゃないか。
話しがズレたので、元に戻そう。
孫さんは小売業からタクシー業、そして何故か一番熱心に語っていた配送業で、孫さんが言う通りのiPhone用アプリをつくれば、「配送業界全体で、年間3000億円ほど利益を改善できる」といった勢いでまくしたてていた。
聞いている人は、実はナメてかかっていてよく知らなかったiPhoneの「予想外」の可能性に引き込まれて行くのだが、最後に「One more thing」こそ言わなかったものの爆弾発表があった。
Softbank Summit 2008の参加企業すべてに、iPhoneを1社5台まで完全に無料で3ヶ月間貸し出すというのだ。
孫さんのトークに聞き惚れて、夢を描き始めていた2800人の来場者達はドヨめいた。
3ヶ月の間、iPhoneで、電話もインターネットもし放題だ。
おそらく、来月には「支給された5台のiPhoneを、誰が使うのか」で同僚との仲間割れをする会社も多いのではないか!?
最近、コンシューマー向けのiPhoneの販売がやや落ち着き始めた。
それにあわせて、いろいろな媒体から、必ず受けるのが、「孫さんは100万台のiPhoneを売ると言っていたが、どう思うか?」という質問だ。
既に4誌ほどに答えたので、ここで私の考えを述べておこう。
私の記憶の範囲では孫さんは100万台売るとはいったけれど、いついつまでに100万台とは言っていなかったと思う。
私が最近、この手の質問を受けると必ずしているのが、この答えだ(最近では、講演でもこれを取り入れるようになった)。
アップルのスティーブ・ジョブズは2008年末までに世界の携帯電話市場の1%(=1000万台)を取ると宣言していた。当然、日本でのiPhoneの出荷台数は、これよりもずっと小さい数になる(1000万台のうち600万台は、欧米での初代iPhoneの売り上げだ)。
世界の1%とはどういう数字だろう。
私の講演でよくでてくるスライドの1つに、「世界の携帯電話市場における日本メーカーのシェア」、というスライドがある。
日本で、一番、売れているのはシャープ製の端末で、国内では圧倒的なシェアを持つが、実はそのシャープですら、海外では展開していないので、世界市場で見ると、わずか1.5%ほどのシェアしか持たない。
iPhoneの1%は、イメージとしては、そのシャープ製の端末を、世界中にばらまいて薄めたくらいの台数ということになる。
なので、シャープ製の端末なんかと比べると圧倒的に少ない(特に、日本市場での話しとなると、めちゃくちゃ小さくなる)。
でも、それでも多くのソフト開発者に世界レベルの成功を夢見させるには十分な存在だ。
それにシャープという会社が出している携帯電話の端末は、1キャリアあたり数台ずつだが、アップルが売っているのは、ただ1製品2モデルのみ(今は絶版の初代iPhoneをカウントしても、2製品4モデル)。そういうわけで、R&Dコストに対する回収率は圧倒的に高い。
孫さんの100万台というのは、おそらく年内とかそういったショートスパンではなく、1年とか数年とか、そういうスパンでの数字じゃないかと、私は思っている。