iPhone発売前の高揚感をあおる動画活用メソッド

Apple Store San Francisco
今から約1年前、米国版iPhoneの誕生にあわせて、もう1つ生まれたものがある。
商品発売前に、用意した動画を流すことで、
同じ動画で商品説明、取り扱い説明そして製品プロモーションという3つの効果を同時に引き出すというメソッドだ。

これはどこかのトレンド系連載で書いた記憶がある。

ascii.jpの「マイクロトレンド」かと思ったが載っていないので、MacPeopleでの最後の連載「トレンド・プレビュー」の方だったかもしれない。

米国ではGoogle社を始め、多くのIT企業がEトレーニングの一環として動画製作に力を入れ始めている。
その一方で、対消費者向けにも、新しい製品の使い方を動画で紹介する「Demogirl」やら難しいコンセプトを平易な言葉で紹介する「〜〜 in plain English」シリーズでお馴染みのCommonCraftなどが注目を集めるようになってはいた。
だが、これらはいずれも商品説明か、取り扱い説明動画のいずれかに落ち着いていた。

これに対して衝撃的だったのが、初代iPhoneのビデオガイドだ。

初代iPhoneの発売の時も1〜2週間前までは、わからないことだらけだった。
しかし、ある時、ビデオガイドが掲載され、急にパっと雲の間から光がさしてきたように、状況がわかりはじめた。

アップルはその後も、ほぼ毎日のようにiPhoneのactivation方法を紹介するビデオなど、短めのビデオをこまめに出し続け、その都度、少しずつ細部が明らかになっていった(このやや渇望感を残した状態で、タイミングよく繰り出すやり方がなんともウマい)。

この動画の活用は、
「百聞は一見にしかず」で文章よりも理解が早い、という点でも画期的なのだが、
それ以上に、購買希望者の関心を引きつけ続け、
しかも、買うつもりがなかった人まで欲しくさせてしまうような宣伝効果も高い。

そう、教育ツールであると同時に、最強の販促ツールでもあったのだ。
(パソコンを持っていない人まで欲しくならないかって?心配はいらない。
 この動画はパソコンでしか見られないのだから)。

さて、前の記事でも紹介した通り、アップル社が発売を来週に控え、ついにiPhone 3Gについても「Guided Tour」の動画を公開した。

iPhone初心者向けの「A Guided Tour」(画面上の方)に加え、既に初代iPhoneを知っている人向けの「See What's New」(画面下の方)もあるので、見逃さないで欲しい。

実はこれらの動画ではiPhoneの製品としての概略は教えてくれるが、皆が一番、気にしている販売方法の実態ついてはあまり触れていない。「iPhone 3Gのアクティベーション」といった動画も今のところ掲載されていない。
 このため、多くのユーザーは7/11がどんな日になるのか、まったく想像がつかず不安がっているが、ついにそのヒントとなるものが現れた。
 なんとat&t社が用意した動画だ。
 なんとアップルに習って、at&t社までもが、動画メッセージの配信を始めたのだ。



投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月03日 | Permalink

iPhoneについて誤解してはならない2つのポイント

Quicktime_player001

最近は毎日のように外出し、いろいろな方と話しをする。
過去4日(土日除く)にちょうど10件の用事があったが
(カジュアルまたはカジュアルを装った飲み会は除く)
そのうちの7割はiPhone絡みだ。

内訳は5件がメディア(取材を受ける2+記事打ち合わせ3)。
1件は講演打ち合わせ。1件はiPhoneに関係してビジネスをしたい企業とのミーティング。

そうやって話をしていると、過去にMac関係をずっと追ってきた人と、そうでない人とで、
やはりiPhoneに対する理解にも大きな差異があることを実感する。
メディアに近い人はまだいろいろな記事を読んだりと研究しているからわかっていることが多いが、
キャリアに近い人なんかにとっては、
iPhoneは(準備期間は長かったにも関わらず)突然、降って湧いた話しという印象があるのか、
なかなか製品コンセプトが理解されきれていない。
(初代iPhoneに触る機会がなかったこともあるのだろう)

どのレベルの人達までがそうなのか、わからないが、
そのままの発想でいると、今後、それが元でアップルとの衝突も増えると思うので、
特に多い誤解2つについてだけ、指摘をできればと思う。

誤解1.iPhone 3Gは店舗でアクティベートするのでパソコンは不要
誤解2.iPhoneを買った人は、みんなソフトバンク提供のメールアドレスを使うことになる
【この部分、最初は「S!メール」と書いていましたが、mixi上で指摘をもらったので修正しました。iPhoneではSメールは使えません】

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月02日 | Permalink

テレビの明日は「暗黒時代」?

Spider Pro

以前に予告していたテレビについての話しを...

その前に、まずちょっとSpiderについて。

前に書いたSpider Zeroの記事は、それなりに注目を集めたけれど、
読んだ人からよく受ける質問がある。
「それってソニーのType Xが先じゃないの?」というもの。

確かにただ録りだめするだけ、という製品はこれまでにもあったのだけれど、
SPIDERが、それらの機械と決定的に違うのは、番組1つ1つ、CMの1つ1つに、番組名はもちろん、出ている人や使われたBGMといったものまで、あらゆる情報がネット経由で提供される。
このため「この人が出ているテレビ番組」、「このアイテムの出てくるテレビ番組」と内容から見たい番組を探せること。

 これまでの全録が、ただ数十本のラベルの張られていないビデオテープに個々のチャンネルを録りだめしているだけの存在だとしたら、Spiderは、録画した番組1つ1つに、細かな検索しやすいタグを加えて、自分専用の動画共有サイトにアップしているような感覚。だから、見たい時に、見たい番組を、見たいだけ見られる。

 私の場合、時間ができてテレビの前に座るときというのは、おもしろい番組が1つもやっていない時間帯であることが多かった。それだけにSPIDERを使い始めてからは、リアルタイムの放送は、たまにニュースやテニスなどスポーツ系の番組をみるくらいで、滅多に見ず、いきなりSPIDER経由でテレビを視聴することが多い。

 SPIDERが、ただの全録の先にある進化であることは麻倉さんが非常にうまく語ってくれている。夏野さんの「SPIDERだと、テレビを見られるときに、1週間で次々に番組が流れていっている中から、一番いい番組だけをつまみ食いできる感覚が楽しいんです。」という言葉もSPIDERの魅力をうまく表していると思う。
PTPのサイトに掲載された4つのインタビューは、SPIDERの宣伝だけ、なんていったケチなことを言わず、いずれも、これからテレビ・放送文化をどう考えたらいいかまで踏み込んだ内容となっているので、ぜひ一読してもらえれば幸いだ。

SPIDERとは何か?

このインタビューで、いろいろな方の話しを聞いているうちに、私も、これからのテレビについて、ひとこと言いたい気持ちになってきた。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月01日 | Permalink

仮想プレッシャー

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(本文に関係なくつかわせていただいたこちらのバラはデジタルメディア評論家の麻倉怜士さんの家のものです!)

1100人の前でプレゼン」をするkawadeさんの足下にも及ばないが(笑)、
最近、実は1ヶ月に書く原稿の数よりも、講演の数の方が多い。

前はあがり症で、大勢を前にすると、なんとか役に立つ話しをしないとエンジンがかかり、
数打てば当たる式で、スピーチの中にたくさん情報を盛り込めば、
「どこかで時間を無駄にした」感が緩和できるんじゃないかと、
やたらと情報を盛り込もうと、早口になることが多かった。

しかし、昨年、「iPhoneショック 」の執筆準備で、いろいろ取材をしたり、メーカーの方と話しをするうちに、これはただごとではない。
日本のメーカーの「マインド」をなんとか、変えていかなければならない、という使命感が先に立つようになり、
情報量よりも、メッセージ性を重視した方向にシフトしたところ、
だんだん講演の評判もよくなってきた。
(自分の声を聞くと自己嫌悪に陥る方なので、テレビ/ラジオ/講演の録音/録画物は、ちゃんと見ていないことが多いが)

InterFMさんに1年間出させてもらったことや、
最近、いろいろな開発者の方にあって相談を受けることが多いといった具合に話す仕事の量が多く、
これまで「執筆」脳>>>「対話」脳だったのが、「対話」脳を使うことが増えてきたのもいいのだろう。


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年07月01日 | Permalink

タイムマシン誕生、期間限定で...

Safari001

ついにみんなの欲しかったタイムマシンが誕生する。
テレビの前で1週間の時間旅行が楽しめる、あの製品、「SPIDER」のことだ。

「SPIDER」はすべてのチャンネルのテレビ番組を1週間分録りだめしてくれる夢のマシンだ。
これまでは市場調査ツールとして法人向けのみに発売されていたが、
開発元PTP社は、今日から一般コンシューマー向けの「SPIDER Zero」の限定発売を開始する。

会社で同僚に「昨日の夜9時のあの番組みた?」って聞かれたときに、
シレっと「みてないけど、今晩みてみる」と答えられてしまうマシン。

ブログの「昨日観たこの番組がおもしろかった」という記事を見てから
親指1本の操作で、その番組を呼び出せてしまうマシン。

そして、これまで『つまらない』と思っていた地上波を
「案外、いい番組やっているじゃん!」と見直させてくれるマシンでもある。


私はSPIDERを手にするまで、今の地上波で興味をそそられる番組がなく、
しばらくの間、BSデジタル放送しかみていなかった。
でも、実は地上波でも、構えてみようとすると、みずらい隙間の時間に、
案外いい番組がいっぱいやっているのだ。

例えばSPIDERで、よくみる番組の1つにテレビ朝日の「都のかほり」がある。
5分だけ、京都や奈良といった古都の風情に触れ気分をリシュレッシュしてくれる、BS放送的ないい番組だ。
ただし、放送時間は月〜金の午後8時54分からという、家に帰っていないか、帰っていてもちょうど食事が終わってメールをチェックしていそうな時間に放映されている。
でも、SPIDERを使えば、土曜日の午後に1週間分の「都のかほり」をまとめてみることができるのだ。
ちなみに、この番組、どうやって遭遇したかというと、SPIDERでは、あらかじめ気になるキーワードを登録しておけるので、そこに「京都」といれておいたところ、この番組が引っかかって、初めてその存在を知った。
これに加えて、リモコンで番組表を見ていて「発見」した番組もいっぱいある。

一度、PTPの方には伝えず、こっそりと米国のO'Reilly MediaのMacDevCenterから受けたインタビューで、名前を出さずに触れたところ、やはり「革命的製品」と、凄い反響がよせられた。


その後、昨年末、ascii.jpで「日本未発売のレアモノ続出! 林信行お勧めの、忘年会で大ウケした「ガジェット5」」(このタイトルは編集者がつけている)という記事を書き、最後のトリとしてSPIDERを紹介したところ、話題が沸騰し、問い合わせ殺到した。

それからしばらくPTPと音信不通になっていたところ、このSPIDERがCNet Japan主催のTech Venture 2008に応募していることを知り、ちょっと困った。
実は私はTech Venture 2008の審査員をやっていたからだ。私には1次審査をパスした会社から10社に投票する権利があった。別に細かいことを気にせずPTPに投票すれば良かったのかもしれないが、それでPTPが受賞したらSpiderユーザーが恩義を感じて投票したんじゃないかと、勘ぐられそうだ。
なのでCNet Japanの方々にメールを書いて、1票は棄権、9票をPTP以外の会社に投票させてもらった。
そんなことはないだろうと思いながらも、「もし、PTPが1票足らずで、受賞できなかったら嫌だなぁ」と思いながら審査結果を見に行ったが(結果は審査員も発表の瞬間まで知らされなかった)、PTPは見事に第1回Tech Venture 2008を受賞してくれた(まあ、当然と言えば当然か...)。最初は発表会場の隅に隠れていたが、ようやく胸をなでおろしてPTP社長の有吉さんに挨拶しにいったのを覚えている。


photo.jpg
(実は気が動転していて、デジカメを忘れたのでiPhoneで撮影)

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年06月20日 | Permalink