仕事もなく常に飢えて困っている人がいたら、魚をあげるよりも、魚の釣り方/取り方を教えてあげた方がいい、というのは誰の教えだったことか?
いろいろ手を尽くしたけれど八方ふさがりになって、
もうどうにもならなくなった時、どうしたらいいのか。
潔くあきらめるのもひとつの手だ。
でも、それが自分にとって本当に重要なことなら、
一度、立ち止まって、問題の本質を見いだし、最初のふんばりが大変だけれど、
そこから勝負するというのが、長期的にみても、もっとも良い解決方法だろうと思う。
それができる人は少ないが、アップルはそれができる企業だった。
このことを書きたかったのは、本当は1ヶ月ほど前、
スティーブ・ジョブズがDRMフリー音楽配信に関するオープンレターを書いたときだったが、このニュースについては今更、ここで触れるまでもないだろう:
CNet Japan:
「レコード会社はDRMの放棄を」--アップルのジョブズCEOが公開書簡
ITmedia:
「4大レーベルはDRMを捨てよ」、Appleのジョブズ氏が提言
Google検索:
「DRMフリー ジョブズ」
今月はじめ、札幌の取材中に、この記事を読んだ時も、同じ思いを抱いた:
林檎の歌:
アップルが「文化庁は著作権行政から手を引け」と主張
(もっとも、この主張に関しては、アップルによるものではなく、「なりすまし」という見方が強まってきている:
「アップル」名乗るパブコメが提起した2つの問題【コラム】
)
アップル/アイチューンズ株式会社の側からいろいろ手を尽くしても、どうしてもうまく日本の音楽業界を変えられそうになければ、その根源までつきつめて勝負すればいい。
残念ながら正論が必ずしも勝つ世の中ではないかも知れないけれど、
アップルほど影響力の大きな力が正論を振りかざして勝負をすれば、十分に大きな勝算がある、と私は思う。
沈みかけた船から逃げ出して、「私は最初からアップルの側でした」という人が出てくる頃には勝負ありだ。
これでアップルには世界の音楽業界を変えただけでなく、旧態依然とした日本の音楽業界を変えたという形で新たに箔がつく。
今、アイチューンズ株式会社や、DRMフリーに乗り出したEMIを含む親アイチューンズの音楽レーベルにいる人たちはモチベーションがあがっているのではないだろうか。
普段の音楽の仕事に加えて、「日本の音楽の歴史を変える上で一役買えた」という大きな満足感を感じている人もいるかもしれない。
アップルは常に本質に迫る希有な会社のひとつだ。