iPhoneの国内発売から半年


大きな地図で見る

日本でのiPhone 3G発売開始から、今日でちょうど半年。
ソフトバンク表参道が3日間だけ、iPhone 3G専門店となったのも、
表参道から渋谷の電力館まで伸びる長い行列ができたのも半年前。

「iPhoneは買わない。でも、買うとしたら、白の16GB」と言っていたdrikinが、徹夜で並ぶことになって、自分の順番までに16GBがすべて売り切れとわかったとき「そうだ、僕が欲しかったのは8GBだった」という名言をTwitterに残したのも、ちょうど6ヶ月前だ。

あれからApp Storeで大成功した日本人が出たり、世界中の人が心を一つにして演奏するアプリケーションが出てきたり、もしかしたら世の中を変えてしまうほどのパワーがあるんじゃないかと思わせるデモが行われたり、初期の任天堂DSを上回る勢いのiPhone 3Gに、大手ゲームメーカーが次々と大型タイトルを繰り出してきたり、といろいろとあり、とても半年間のできごととは思えない。

一部では、日本では売れていないと言われているiPhoneだが、
実は一部の報道よりはかなり多く売れている、ということも聞く。
実際、この半年間、人々に目から鱗が落ちる思いをさせた携帯電話関係のニュースを20個あげろと言えば、確実に20個中の15個まではiPhone関連のニュースになるはずだ(iPhone以外の1個は、Yahoo!とSHARPの連携、もう1個はGoogle Android端末の発売開始、そしてさらにもう1個はNokiaの日本撤退だろう)。


今、私はMacworld Expoの取材を終えて、
今後の講演やコンサルティング向けの勉強としてラスベガスで開催中のCESに来ている。

実はMacworldでは取材をするだけでなく、
日本のiPhone開発社を海外のプレスに紹介するイベントを、山崎富美さんやAndrew Shuttleworth、外村仁さんやdrikinらの協力も得て、とりおこなった。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2009年01月11日 | Permalink

Web 2.0 in your pocket.

昨年、ほぼ1.5週間に1回のペースで行ってきた講演で繰り返し言ってきたのが、
「Web 2.0 in your pocket」時代の到来。

神尾さんのITmediaのインタビューによれば、ドコモもこれまでのiモードを進化させつつもオープン化路線も並行して進めていく、ということだ。iモードのユーザーが2009年中にすぐに移行するとは思わないけれど、iモードからオープンWebへの流れは、もう誰にも止められないと思う。
(そもそも、iモード誕生のときだって、携帯電話の画面に十分な解像度と処理能力があればオープンWebを目指したかったんじゃないかとも思う)。

神尾寿のMobile+Views: 2009年、ドコモは「オープンOS」を支援する──ドコモ 辻村清行副社長


この「Web 2.0 in your pocket」で、
このブログでは他のテーマの中で触れることはあっても、
単独で扱うことはしていなかったので、あえてタイトルに立ててとりあげよう。

でも、まだ、お正月だし長い話しはなしで、最近のキースライドを2つだけ紹介しましょう。

1つ目は、コレ。
私が持つ、これまでのWeb 2.0のイメージ
(写真はCreative Commonsという素晴らしい仕組みを使って、Flickrの見ず知らずの方のものを使わせていただいています)。

Web 2.0: Yesterday

そして、これからのWeb 2.0は、こう....

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2009年01月02日 | Permalink

iPhoneでしばらくの間、ヒーローになる方法!?

[UPDATE:すみません。最初、OLD CAMERAとTOY CAMERAというアプリケーションを混同していました。OLD CAMERAは白黒写真、TOY CAMERAはロモ風写真が撮れるアプリです。
Old Camera
icon]

美味しいネタなので、短いけれど書きます。
iPhoneのApp Storeで、またしても1人、注目すべき日本人開発者がデビューをしました。
Takayuki Fukatsuさんです。

なんと、一挙に5アプリ同時リリースでのデビューなのですが、実はちょっとした事故があって、iTunes側のデータベースがちゃんと更新されなかったのか、iTunesやiPhone上のApp Storeで検索をしても、見つかりません(昨日の時点では、「Random Pose Viewer」のみ、執筆時点では「Random Pose Viewer」と「ToyCamera」のみ)が表示されています。

私は運良く、開発段階から製品をテストさせてもらっていたのですが、
特にお気に入りなのが「LiquidPics」と「ToyCamera」の2つ。

人に見せたときに圧倒的に受けがいいのが「LiquidPics」で、
先日、YouTubeに動画があがって以来、そこかしこで話題になっています。


昨日のリリース後に人に見せたところ、みんな喉から手が出るほど欲しがっていて
App Storeでちゃんと買えないことを心の底から悔しがっていました。
(先週、今週は1時間単位で予定が入っているので、1日あたりものすごく大勢の人とあっています。今日は午後3時まで、先週の火曜日以来、久々の2時間近い休憩時間。その貴重な時間をブログ更新に使ってしまった...汗)

ところで、このLiquidPics、検索ができないために、iPhoneでの直接購入はできませんが、
iTunes経由であれば、製品ページへの直接リンクを辿って購入することができます。

photo.jpg
LiquidPics
icon



これがどういうことかというと、iTunesのデータベースの修復が遅れている間は、
LiquidPicsが、まだあまり人に知られていない、自慢できるアプリケーションという状態を維持できる、ということでもあります(もっとも、トップアプリケーションにランクインしてしまうと、その時点で他の人も買えるようになってしまいますが)。

まあ、細かい理屈は抜きにして、パーティーでもウケること間違いなしのLiquidPics、iPhoneのグラフィック性能がどれだけすごいかを確認する意味でも、入手されてはいかがでしょう?

ちなみに個人的には、Toy Caemraもすごく気に入っていて、以下の写真(「続きを読む」以下)はすべてToy Cameraで撮ったものです。

Toy Camera
icon

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年10月22日 | Permalink

Yahoo! Japan、iPhone戦略の隠し球?

photo.jpg
マスコミの一時的な「iPhone、日本では失敗」報道も沈静化し、
今度は逆に一般的な報道よりは売れているんじゃないかというニュースも出始めている:

Apple Insider: Japanese iPhone 3G sales better than reported

でも、本当に大事なのは、新しいもの好きの人が飛びついた、最初の3ヶ月に何台売れたかではなく、
より厳しい目で製品を評価する、一般顧客がこれからどれくらいiPhoneを買うかだろう。

パソコンの便利さと楽しさを携帯電話という製品の殻に凝縮したiPhoneは、
OSのバージョンが2.1になって、そうした一般の人達の中でも、
ある程度、技術的な素養があって、自分でトラブルを解決できる人達には勧められるレベルに到達した、と思っている。

 それでも動作が不安定になることも多いし、「私は機械音痴」という人には、まだまだ難しいデバイスかもしれない。しかし、1つ確実なのは、この3ヶ月、携帯電話業界周辺でも、パソコン業界周辺でも、もっとも多くの楽しみを享受しているのはiPhoneユーザーだということ。
 ここ数ヶ月の講演活動などで会う人の中には、インターネットで聞きかじったiPhoneの問題点や不安点をあげつらう人も多いが、そうした人のほとんどは、実物のiPhoneをちゃんと触っていない人で、実際に使っている様子をデモして見せると「思っていたよりもぜんぜん凄い」と声をあげる人が多い。
 確かに問題がないとはいわないが、今のiPhoneは、それらの問題点すべてに目をつぶることができるほどの魅力を放ち始めている。
 ソフト開発者のビジネスチャンスとして考えても(世界展開している開発者に限るが)大きなポテンシャルを見せ始めている。

 ちなみに、この1〜2週間でApp Storeで売られているアプリケーションの品質が、一気にレベルアップした。最初の頃は、「とりあえず、iPhoneで動くようにしました」というものが多かったが、今では大手のゲームハウスとかがメジャータイトルを次々とiPhone用につくり直し始めている。そういう意味では、開発者にとって参入障壁が高くなった、という側面もあるのかもしれない。

 いきなり、最初から脱線してしまったが、ここで表題にもあるYahoo! Japanの話し。

 Yahoo! Japanは、ソフトバンクモバイルの関連会社ということもあり、iPhoneにも真剣だ。

 何よりも凄いのは、ソフトバンクのiPhone発売確定から数週間で、iPhoneに最適化したポータルサイトをつくってしまったこと。これが「ヤフー!」っぽい外観も含めて、実によくできている。
 ソフトバンクモバイルのショップでiPhoneを買った一部のユーザーのホーム画面には、そのアイコンが登録されているが、登録されていない人は、ぜひiPhoneのSafariに以下のアドレスを入力して、ホーム画面に登録するべきだろう:

http://ipn.yahoo.co.jp/

photo.jpg

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年09月30日 | Permalink

まだまだ話題のiPhone、ついに法人市場へ進出

今は、新型iPhone発表のまさにそのタイミングだが、私はこのブログ記事だけ書いたら、さっさと寝て、明日の取材に備えるつもりだ。明日は朝8時から30〜60分起きにスケジュールビッチリのノンストップアクション状態で、明後日は朝6:20AMに羽田から福岡へ旅立つ。
今から体力を温存しないと、かなりヤバいので、発表は見ずに寝るつもりだが、今晩は新型Macの発表はない、と見た。

Softbank Summit 2008 Keynote

今日、Softbank Summit 2008が行われた。そして孫正義さんの基調講演で、日本でもついにiPhoneを本格的に法人向け市場に向けて売り出すことが発表された。
1時間の講演の後半、孫氏は「今日の来場者で、自分の携帯電話を使って、会社のメールの読み書きをしている人」と聞いた。手をあげたのは2800名の来場者の3〜5%といったところ。

 孫さんは「日本の携帯電話はゲームやワンセグとエンターテイメントの機能は世界でも最先端に優れているけれど、オフィスオートメーションのツールとしては遅れている」と指摘。最前列に座っていたアメリカ人に講演中、英語で同意を求めていた。
 この最前列のアメリカ人、確認はとれていないが、おそらくアップル社のジェレミー氏。
 iPhone 2.0 OSは、FORTUNE 500企業のなんと35%でベータテストが行われたが、そのiPhoneの法人営業部隊の1人である。孫さんの講演後、Softbank Summitの展示コーナーに並べられたたくさんのiPhoneと孫さんの講演にすっかり満足した様子だった。

 確かに今日「も」孫さんの講演はなかなかよかった。
 iPhoneの話しとなると、非常に饒舌になり、実感がこもっているから説得力もある。

 米国のアップルが公開しているiPhoneの法人利用の事例は、ほんのわずかだが、
 孫さんは、架空のものばかりだが、20近いiPhoneの導入例のシナリオを紹介。
 どれもそれなりに説得力がある物だった。

 2800人の来場者の中で、iPhoneがどんなものかを、本当に理解している人は少ない様子で、みんなWebの記事だけ読んで知った気になっている人が多いのか、孫さんが「こんなこともできる」、「あんなこともできる」とデモをする度に、ドヨめいていた。

【注:以下の段落、個人が特定できそうだったので表現をボカしました】
 最近、大企業の重鎮の方々と接することが多いが、やはり、こちらもそれなりに凄いと思っている会社は、ライバルの会社の製品であっても、オープンな気持ちで「やはり凄い」とiPhoneを受け入れる。
 たまに「え、でも、iPhoneって〜〜では評判わるいでしょう?」とアラさがしをしている人もいるが、実はそういう人ほどiPhoneを実はちゃんと触ったことがない人だというのがよくわかる(iPhoneって「日本語がローマ字入力なんでしょう?」なんていう人もいた。もっとも、「アプリが起動しなくなるバグ、あれは大変だよね」という人は知っている人だろう ー笑)。
 愛社精神は大事だけれど、だからといって、話題の製品を「劣っているに決まっている」と決めつけてちゃんと見ることもせずにいる人が、実は多いんじゃないかと、ちょっと不安になった。
 佐藤可士和さんもいっているが、今の消費者は、そんな製品でもりあがるほどバカではない。
 むしろ、情報過多の中から、瞬時に正当な情報を見つける訓練をされている消費者の方が、自分の会社の製品だけに盲目になっている人達より、ものがよく見えているんじゃないか。

 話しがズレたので、元に戻そう。

Softbank Summit 2008 Keynote

 孫さんは小売業からタクシー業、そして何故か一番熱心に語っていた配送業で、孫さんが言う通りのiPhone用アプリをつくれば、「配送業界全体で、年間3000億円ほど利益を改善できる」といった勢いでまくしたてていた。

 聞いている人は、実はナメてかかっていてよく知らなかったiPhoneの「予想外」の可能性に引き込まれて行くのだが、最後に「One more thing」こそ言わなかったものの爆弾発表があった。

IMG_4825

 Softbank Summit 2008の参加企業すべてに、iPhoneを1社5台まで完全に無料で3ヶ月間貸し出すというのだ。
 孫さんのトークに聞き惚れて、夢を描き始めていた2800人の来場者達はドヨめいた。
 3ヶ月の間、iPhoneで、電話もインターネットもし放題だ。
 おそらく、来月には「支給された5台のiPhoneを、誰が使うのか」で同僚との仲間割れをする会社も多いのではないか!?

 最近、コンシューマー向けのiPhoneの販売がやや落ち着き始めた。
 それにあわせて、いろいろな媒体から、必ず受けるのが、「孫さんは100万台のiPhoneを売ると言っていたが、どう思うか?」という質問だ。
 既に4誌ほどに答えたので、ここで私の考えを述べておこう。
 私の記憶の範囲では孫さんは100万台売るとはいったけれど、いついつまでに100万台とは言っていなかったと思う。


 私が最近、この手の質問を受けると必ずしているのが、この答えだ(最近では、講演でもこれを取り入れるようになった)。

SHARP.075-003

 アップルのスティーブ・ジョブズは2008年末までに世界の携帯電話市場の1%(=1000万台)を取ると宣言していた。当然、日本でのiPhoneの出荷台数は、これよりもずっと小さい数になる(1000万台のうち600万台は、欧米での初代iPhoneの売り上げだ)。

 世界の1%とはどういう数字だろう。

 私の講演でよくでてくるスライドの1つに、「世界の携帯電話市場における日本メーカーのシェア」、というスライドがある。
 日本で、一番、売れているのはシャープ製の端末で、国内では圧倒的なシェアを持つが、実はそのシャープですら、海外では展開していないので、世界市場で見ると、わずか1.5%ほどのシェアしか持たない。
 iPhoneの1%は、イメージとしては、そのシャープ製の端末を、世界中にばらまいて薄めたくらいの台数ということになる。
 なので、シャープ製の端末なんかと比べると圧倒的に少ない(特に、日本市場での話しとなると、めちゃくちゃ小さくなる)。

 でも、それでも多くのソフト開発者に世界レベルの成功を夢見させるには十分な存在だ。
 それにシャープという会社が出している携帯電話の端末は、1キャリアあたり数台ずつだが、アップルが売っているのは、ただ1製品2モデルのみ(今は絶版の初代iPhoneをカウントしても、2製品4モデル)。そういうわけで、R&Dコストに対する回収率は圧倒的に高い。

 孫さんの100万台というのは、おそらく年内とかそういったショートスパンではなく、1年とか数年とか、そういうスパンでの数字じゃないかと、私は思っている。

投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2008年09月10日 | Permalink