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CMの裏の空気が楽しい「大空気展」、日曜日まで

大空気展。入り口にはカンヌ国際広告祭フィルム部門金賞が飾られている。


月曜日、福岡は天神で開催されている「大空気展」を観てきた。

江口カン氏率いる福岡を拠点としたクリエイティブ集団「KOO-KI(空気株式会社)」のこれまでの集大成と言える展覧会で、福岡の天神、IMS(イムズ)の8階にある三菱地所アルティアムで日曜日(2014/4/20=明日!)まで開催されている。

まだ、見に行っていない人で、今、福岡にいる人は急いで見に行こう。
この記事なら移動の電車やタクシーの中でスマホでも読める。

KOO-KIが手掛けたCMと言えば、一番有名なのは「LOVE DISTANCE」。
シリアスな青春ものかと思えば、「え!?こういうオチ?」と驚かされるCMで、カンヌ国際広告祭フィルム部門金賞に輝いたことでも有名。




大空気展、展示会場

 「大空気展」では、これ以外にもKOO-KIが、これまでに手掛けてきた200本近いCMやゲームのタイトル画面、福岡Yahoo!ドームの巨大スクリーンに映し出される映像が一番奥のスクリーンで流され続けている(全部見ると4時間を超えるらしい)。
話題になった「おしい!広島県」や「Nike Cosplay」、makitaの「草刈りだ!」などに加え、実は結構、海外のCMも手掛けていることに驚かされた。
ただ、権利などの関係で東京五輪招致の映像が見せられなかったのは残念!

さて、奥の大スクリーンではこうした映像をずっと映し続けているが、その手前左右の壁には話題になったCMの製作過程につくられた絵コンテなどが飾られている。


 クライアントへのプレゼンのメモから、ボツ案、マインドマップのようなものまで内容はさまざまだが、これは言うなればCMの製作過程の裏側にあるソースコード。

テレビCMは時間当たり、もっともクリエイティブにコストをかけた日常であり、下手なドラマや映画よりも印象に残るものも多い。

そうした、これまで当たり前に触れてきた映像の裏にこんな議論の跡があったんだ、こんなやりとりや試行錯誤があったんだ、「これも狙いだったんだ」、こんなところまでこだわっていたんだ、と知ることでその映像に対する愛着や思い入れがまた変わってくる。

見ていて非常に面白かったのが、絵コンテといっても実にさまざまなタイプのものがあること。
KOO-KIには何人もの監督がいるが、人によっていわゆる映画監督などが描くような、決まったフォーマットの紙に絵コンテを描いているケースもあれば、ただの落書きを絵コンテに発展させたようなもの、絵が全然なくってひたすら日本についてのデーターが並べられ、それらのFACTをどんなアニメーション効果でつなぐかが記された経産省向けの動画など。
課題へのさまざまなアプローチの仕方を見比べる楽しさもあって楽しかった。

これだけでもボリュームたっぷり感があるが、この滅多には見れないCMの舞台裏をさらに楽しめるように、KOO-KIではiPad連携を実現。

なんと、壁に貼られた絵コンテに専用アプリが起動したiPadをかざすと、なんと絵コンテの上にメニュー画面が表示され、できあがったCM映像を再生することが出来るのだ。
実はこの展示用アプリも物凄く秀逸だ。今だと決まった画像であれば、(QRコードの印のような)マーカーなどを使わないでも、カメラに写っているモノを瞬時に画像認識してこんな連動もできるんだ、と驚かされる。


LOVE DISTANCEの絵コンテを通して映像をみているところ


NARUTOの映像をつくるために読み込まれた資料

この反応の良さには正直ビックリさせられた(そういう意味では本展では展示技術に興味がある人にもお勧めだ)。

奥の壁には4時間を超える映像展示。
左右の壁にはiPadと連動する絵コンテの拡大コピー、では、中央は?というと、なぜかアーロンチェア(ハーマンミラー社のイス)やら、積み重ねられた漫画、自転車がラックに飾られている。
これってKOO-KIとは関係ないのでは?と思ったら、KOO-KIの愛用品ということらしい(笑)。

日本酒や焼酎のボトルもあって、「え?このラベルKOO-KIだったんですか?」と聞いたら、「いや、オフィスにBARみたいなお酒が置いてあるエリアがあって、そこから持ってきた」だそうです(ゆるいー笑)。

なるほど、この確かに雑多だけれど、なんだか楽しそうな雰囲気は、確かにKOO-KIだ。会期中社員達が毎日、会場に足を運ぶことは出来ないが、それでも、会場の中央にKOO-KIという集団の存在感を漂わせている(後で聞いたところによれば、KOO-KIで社用車として使われている自転車も、この会場に本物を持ってきてしまったため、会期中は社員の人達は社用車が使えずにちょっとだけ困っているらしい)。

実はこの中央の展示も、KOO-KIの作品のソースコードだ。例えば「ナルト」のDVDモーションコミックをつくった際には、原作を読み込んで気になるところに付箋を貼りまくった。その現物も会場に展示されている。

でも、何気なくラックに飾られた賞や作品集のDVDの1つ1つにも奥深いストーリーがある。
「実はこの賞がきっかけで永里(現副社長)とKOO-KIが急接近した」、食べ物の写真で埋め尽くされた作品集のDVD、実は1軒1軒かなり厳選した食通をうならせる博多うまいものリストになっていて、中にお店の一覧が入っている(のでDVDを捨てるわけにはいかない)などなど…
近くにKOO-KIの社員がいるとそれが聞けて面白い(最終日の20日には、後述するMr.shapeのワークショップがあるのでKOO-KIの社員が会場にいるはずだ)。

三菱地所アルティアムの展示室は、それほど広いとは言えないかもしれない。しかし、その壁いっぱいに張り巡らされた作品と、その1つ1つの裏側に漂うストーリーに思いを馳せると、この展覧会はヤフー!ドームを超える奥行きと広さがありそうだ。


「大空気展」地下の展示会場ではドラマ「めんたいぴりり」のセットの前で登場人物とバーチャル記念撮影ができる

ちなみに福岡の外では、CM製作などで知られるKOO-KIだが、最近、福岡の人達の間では別の形で知られているらしい。

明太子メーカーの株式会社ふくや創業者、川原俊夫さんをモデルにしたドラマ「めんたいぴりり」(テレビ西日本)が大ヒットし、まもなく続編の製作も始まるようだ。

二部構成のドラマで第一部は夫婦の青春時代と戦争の時代を描いた、ちょっとシリアスな青春ドラマ。一方で、第二部はガラっと雰囲気変わったホームコメディー。
同じドラマなのに一部と二部でまったく別の方向性という遊んじゃっている具合もかなりKOO-KI的!?
この面白さが評判となり、人気はじわじわと全国に広まり、実は東京でも放映されていたようだ。

ちなみにドラマの主人公の川原さん、なんとも面白い人で、せっかく明太子という大発明をしたにも関わらず、商標登録も製造法特許も取得せず、つくりかたを他社にどんどん教えてしまった。ある意味、オープンソース戦略だ。そして、このオープンソース戦略が功を奏して、今、辛子明太子は博多の一大名物となっているのだという。

「大空気展」では、このドラマのシナリオや絵コンテ、そしてiPadをかざして見ると飛び出てくるドラマのシーンの一部が楽しめるのに加えて、IMSの地下に同ドラマのセットが置かれていて、バーチャル記念撮影もできる。
セットの前に、足のマークがあるので、そこに立つと目の前のスクリーンにドラマの登場人物がCGで出てきて肩を並べてくれる。それをスマートフォンで取れば、自分がドラマの世界に入った様子を記念撮影できる、という仕掛けで、なんとも心にくい。

ちなみに、このセットが置かれているIMSの地下は、展覧会直前、ちょっと面白いことに使われた。

なんと、CMの公開撮影に使われたのだ。
TwitterやFacebookを検索すると、大勢が目撃したその時の様子の写真や動画があがっている。


TwitterやFacebookに投稿された公開撮影の様子/画像クリックするとまとめに飛びます

 2014年、福岡天神の大型商業施設、IMS(イムズ)とSolaria(ソラリア)は同時に25周年を迎えた。両社ではそれを記念してコラボキャンペーンを展開。そして、そのキャンペーンCMの製作が地元のクリエイティブ集団、KOO-KI(空気)に任された。

この時、KOO-KIが提案したのがイムズの地下にある広場を使ってストップモーションCMの公開撮影をするというアイディアだった。
撮影は3月3日開店時間から閉店時間までの約10時間だが、その時のMaking ofが、そのままソーシャルで話題になり、完成したCMを楽しみに待つ人が増える。
地域性を最大限にしかしたうまい話題作りだが、その記録の一部もIMS地下の「大空気展」サテライト会場、つまり、まさに撮影が行なわれた現場で楽しむことが出来る。

KOO-KIのやることや考えを一挙に公開し、丸裸にしたこの展覧会もいよいよ明日!4月20日の日曜日まで。

まだ行っていない人で、今、福岡にいる人はぜひ足を運んで欲しい。
(そして福岡県外の空気ファンは、ぜひ、同展巡回をリクエストしてみて欲しい)。

ちなみに最終日の20日は、最近のKOO-KIのもう1つの大ヒット作、iPhone/iPad用児童向けアプリの「Mr.shape」のワークショップが行なわれる。
「Mr.shape」はアップル社が選んだ年間ベストアプリの1つに選ばれたり、グッドデザイン賞に選ばれた実績を持ち。
最近では関連キャラクター商品の販売や海外展開も始まっている。

無料でダウンロードできるのでお子さんのいる方はぜひ、試してみて欲しい。


Mr.shape関連グッズの数々。ハンカチはかなり面白いので要注目!

Mr.shapeについては近いうちに別の記事でもっと詳しく紹介しようと思う


投稿者名 Nobuyuki Hayashi 林信行 投稿日時 2014年04月19日 | Permalink